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融資(住宅ローン等)のあっせんと金融サービス仲介業

1 金銭の貸付けの「媒介」を業として行うことは、貸金業法2条1項の「貸金業」に該当するため、貸金業登録を受ける必要がある(貸金業法3条)。仮に無登録で貸金業を営んだ場合には、貸金業法11条に違反し、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることがあり得る(同法47条)。
  なお、「媒介」とは、「契約の成立に向けて尽力する行為」であると広く解されていることから、単なる「事務代行」業務以外は、媒介に該当する可能性がある。
  また、貸金業法は、条文上、融資を行う側、融資を受ける側のどちらのために行うかによる区別をしていないため、「資金の融通を受けたい者と資金の融資を行いたい者との間に立って金銭消費貸借契約の成立に尽力する行為は、資金の融通を受けたい者又は資金の融通を行いたい者のどちらのために行われているかを問わず、金銭の貸借の媒介に該当する。」(平成27年12月1日「金融庁における一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」第3項より)と解されている。

2 したがって、例えば、以下の各行為については、金銭の貸付けの媒介に該当し、貸金業登録が必要となる場合がある。
① ファイナンシャルプランナー(FP)が、顧客のために、住宅ローン等を行う金融機関又は貸金業者を紹介して条件交渉等を行うこと、
② 融資コンサルタントが、融資を受けたい事業者のために、銀行融資等の契約締結の勧誘や契約締結に向けた条件交渉等を行うこと
③ 不動産の仲介を行う宅建業者が、不動産の購入を希望する顧客のために、住宅ローン又は購入資金の融資を行う金融機関等を紹介して条件交渉等を行ったりすること
 
 ※ なお、貸付主体が銀行であり、かつ銀行のために当該貸付に係る契約の締結又は媒介を行う場合には、銀行代理業の許可を得る必要がある点に留意が必要である。

3 ただし、(ⅰ)商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布、(ⅱ)契約申込書及びその添付書類等の受領・回収、(ⅲ)住宅ローン等の説明会における一般的な住宅ローン商品の仕組み・活用法等についての説明については、これらの各行為が事務処理の一部のみを行うに過ぎない場合は、金銭の貸借の媒介に至らない行為といえる場合もあるとされている(平成27年12月1日「金融庁における一般的な法令解釈に係る書面照会手続(回答書)」より)。単なる事務代行と評価できる場合には、「媒介」には該当しないからである。

4 もっとも、金銭の貸借の媒介に該当する行為、金銭の貸借の媒介に該当しない事務代行の境界線は一義的に明確とは言い難いことから、実質的には「媒介」に該当するにもかかわらず、「事務代行」業務であると恣意的に整理され、無登録で金銭の貸借の媒介が行われている事例も数多く存在するものと思われる。 

5 しかし、金融サービス仲介業が創設されることになり、現時点では、登録に必要な要件が細部まで明らかになっていないものの、貸金業登録よりも登録を受けやすいものとなる場合には、積極的に金融サービス仲介業の登録を受けることが考えられる(ただし、法11条5項の「貸金業貸付媒介業務」は、「貸金業者以外の者が『貸金業者』と顧客との間における金銭の貸付け又は手形の割引を内容とする契約・・・の締結の媒介・・・を行う業務」(二重括弧は筆者)と規定しているから、もっぱら「貸金業者」の貸付け等の媒介を想定しており、金融機関と顧客との間の貸付け等の媒介業務を行うことは想定されていない。)。
        これにより、ファイナンシャルプランナー、融資コンサルタント、宅建業者などは、金融サービス仲介業の登録を受けることにより、適法に媒介行為を行うことができる上に、貸金業者から手数料を得て媒介行為を行うというビジネスモデルが発展していくことも想定されるところである。

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