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彼と彼女のテネシーワルツ(男女で歌詞が変わる)

英語のテネシーワルツは、歌手が男性の場合と女性の場合とで、歌詞が変化するとことご存知であろうか?

テネシーワルツは翻訳作業を助けてくれた

二十歳の時から翻訳の世界に入り、英文を書き続けて50年を越えた。
翻訳の際にバックグラウンドミュージックとして、ずいぶんとお世話になったのがカントリーウエスタンである。中でもテネシーワルツには格別の思いをもっている。
テネシーワルツは、私の翻訳作業を大いに助けてくれた。

神道を行じ産土を貴ぶ私をみて、友人たちは、「君は3ヶ月と外国生活は持たないだろう。産土欠乏症に陥るに違いない」と言って笑う。
彼らは、私が翻訳作業をする際にも、雅楽・越天楽でもかけて聞いているに違いないと思っているかもしれない。

しかし、越天楽では、英文の筆は進まない。
英語を書くのであれば、やはり英語の歌が、英語のリズムが適するのだ。

そういうわけで、カントリーウエスタンには、本当にお世話になった。
中でもテネシーワルツに格別の思いをもっている。というのは、夕闇迫る頃、そろそろ一日の翻訳作業を終えようかという時に、決まってかけるのが、数曲のテネシーワルツであったからだ。

数曲のテネシーワルツと言った。
私の独断と偏見で申し上げるならば、その中で、東西両横綱と目されるのが、パティ・ペイジ(Patti Page)とアン・マレー(Ann Murray)によるテネシーワルツである。

文化系の横綱、パティ・ペイジのテネシーワルツ

テネシーワルツが世の人々にもてはやされたのは、第一に、パティ・ペイジの甘い歌声によってであるといってよい。
パティの歌声は甘い。

東と西の両横綱を、文化系と体育会系と表現すれば、パティのテネシーワルツは、文句なく文化系の第一位であろう。

日本では、江利チエミのテネシーワルツが名高い。
私もCDを手に入れて聞いたみたのだが、残念ながら、パティ・ペイジやアン・マレーの歌唱力の前には霞んでしまう。

パティ・ペイジのテネシーワルツが、女性のたおやかさ、柔らかさ、優美なる甘さで人々の心をとろかせて、ミリオンセラーとなったのは不思議でない。女性はこうありたい。
このパティのテネシーワルツを、私は、西の横綱としたい。
下の動画で堪能して戴きたい。

【パティ・ペイジ、文化系のテネシーワルツ】

体育会系の横綱、アン・マレーのテネシーワルツ

パティ・ペイジのテネシーワルツに親しんできた私が、初めてアン・マレーのテネシーワルツを聞いた時、ショックともいえる爽快感を味わった。

良い意味で、まことに女々しいパティの歌声とガラリと変わって、アン・マレーのテネシーワルツは、ほとんど男性的とも聞きまごうほどの軽やかなリズムと伸びやかな歌声ではないか。これはすごい!

アン・マレーのテネシーワルツは、体育会系なのだ。
実際、アン・マレーは体育教師をしていたとか。

相撲の世界では、東西のうち、東を正位とする。つまり、西の横綱よりも東の横綱の方が格上なのである。

パティ・ペイジのテネシーワルツは、確かに横綱といってよい。ただし西の横綱である。その上位に、私は、アン・マレーのテネシーワルツを置きたいと思う。

男性が好む女性のタイプは十人十色といってよい。私は、春風の如き女性のたおやかさ、柔らかさ、優美なる甘さを貴ぶものであるが、更にその上に、秋風にも似た武家の女性の凛とした佇まいを一層貴ぶものである。

アン・マレーのテネシーワルツこそ、凛として女サムライの気品があり、しかも伸びやかで優雅である。私はこれを、東の横綱として第一位に置きたい。
女性はこうありたい。(あっ、さっきも同じ事を言ってしまった)

【アン・マレー、体育会系のテネシーワルツ】


男声オリジナル、ピー・ウイー・キングのテネシーワルツ

ところで、テネシーワルツの作詞作曲は共に男性の手になるものであり、歌い始めたのも男性歌手であることを知る人は少ない。

テネシー・ワルツは「1946年、ピー・ウィー・キングが作曲した曲に、レッド・スチュワートが詞をつけ、1948年に初めて録音された」と伝えられる。(Wikipedia)

私が愛聴する『ゴールデンカントリーヒット550』(CBSソニー)には、アン・マレーと共に、ピー・ウイー・キングのテネシーワルツが収められている。これが、また、男声特有の爽やかさがあって、すこぶるよい。

テネシーワルツの歌詞は、友人に恋人を紹介したら、友人と恋人がワルツに合わせてダンスしている間に、その友人に恋人を取られたという内容。

ピー・ウイー・キングのテネシーワルツは、まことに軽やかに、「アイツ、俺の彼女を盗りやがったんだ。あはは。」という感じで歌っている。
オトコらしいオトコは、失恋も爽やかだ。

【ピー・ウイー・キングのテネシーワルツ】

彼と彼女のテネシーワルツ

ところで、女性二人のテネシーワルツと、男性のテネシーワルツを聴いて戴いて、お気づきになったであろうか。

彼(男性)が歌う場合と、彼女(女性)が歌う場合で、歌詞が異なるのだ。

"Tennessee Waltz"(オリジナル歌詞・男性用)
I was dancing with my darling
to the Tennessee Waltz
When an old friend I happened to see
I introduced  him  to my loved one
And while they were dancing
My friend stole my sweetheart from me.
「テネシーワルツ」(オリジナル歌詞・男性用)
私は愛しい人とダンスをしていた
テネシーワルツにあわせて
たまたま古い友人と出会って
私は  彼  を愛する人に紹介した
彼らが一緒に踊っている間に
友人は私の恋人を私から奪い去った

ピー・ウイー・キングの歌うテネシーワルツでは、男友達  "him"  に恋人を紹介して、彼に恋人を盗られたとなっている。(太字の部分)

ところが、女性歌手がテネシーワルツを歌う場合には、女友達  "her"  に恋人を紹介して、彼女に恋人を盗られたとなる。上の歌詞の太字 "him" が  "her" と変化するのである。

つまり、英語世界では、歌う歌手の性別によって、赤字の部分の彼と彼女がきっちりと入れ替わる。
テネシーワルツのみならず、「ラストダンスは私に」においても、同じことが起こるのである。

こういうことは、日本では起こらない。
日本では、男が女に成り代わり、女が男に成り代わる。
日本では、ひげ面のおじさん「ぴんからトリオ」が女性に成り代わって「わーたしーがー捧げたー」と歌うのである。
また、美空ひばりが男に成り代わって「柔道一代」を歌うのである。

では、タレントのはるな愛ちゃん(賢治くん)が英語でテネシーワルツを歌う際には、彼女(あるいは彼)は、"I introduced  him  to my loved one" と歌うのか、"I introduced  her  to my loved one" と歌うのか、どちらであろうか、聞いてみたいものだ。あはは。


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