「新しい資本主義」とは何か
先日、私はTwitterで、このようなことを呟いた訳だが、岸田首相のいう「新しい資本主義」も「所得倍増」も実現不可能なインチキに過ぎない。
ただこの20年、世界中で日本だけが所得が減り続けている以上、「所得倍増」も、それを実現する為の「新しい資本主義」も必要不可欠なのだ。
では、その新しい資本主義とは一体どんなものなのだろうか。
こう問われると今や多くの人は「SDGs(持続可能な開発による資本主義)」を思い描くだろうし、岸田のいう新しい資本主義も詰まる所はこのSDGsのパクリ。
ただ、SDGsの中身をよく見れば誰でも判るのだが、貧困や格差の是正は言っているものの、株式の配当を減らすとか、株主の権限を縮小するとか、キャピタルゲイン課税とか金融機関の株式投資の制限などには一言も触れていない。
つまりは今の格差や貧困の増大を生んでいる株主資本主義、金融資本主義、そして富裕層とグローバル大企業のやりたい放題を是認する新自由主義には一切手をつけるつもりがないのだ。
結局、SDGsは今の強欲な資本主義が反省したふりをしているだけで、資本主義の持続可能性を環境問題の話にすり替え、その環境ビジネスで更に儲けようとしているインチキに過ぎないのだ。
そう、SDGsは「新しい資本主義」でもなんでもないのだ。
一方、Twitterでも紹介した、バルファキスが説く、国民ひとり一人を株主にして、投資に関わるような金融機関を廃止するのは今の誤った株主資本主義、金融資本主義を脱する素晴らしい方法ではあるが、これは「集産主義」と呼ばれる形態だし、正確には「新しい資本主義」ではなく「社会主義」の一形態。
では、同じことを社会主義ではなく今の資本主義のままですること、「新しい資本主義」は本当に不可能なのだろうか。
それが実は不可能ではないし、実際にかってそれを実現した国もあったのだ。それがこの国、日本なのだ。
上のツイートでも少し触れたが、日本がその「新しい資本主義」を実現していたのが、所得倍増をなし遂げた高度経済成長からバブル崩壊までの時代。
株式市場は勿論、あったものの、株式は系列や企業同士の持ち合いだったり、筆頭株主が社員の持ち株会だったりして、今のような“物言う株主”の出番もなし。当然、どんなに企業が利益を上げても株主への配当は雀の涙ほど…… 企業の利益の多くは社員への分配や設備投資、研究開発に回されていた訳で、こういったことが終身雇用や年功序列賃金といった安定した雇用、目先の利益を追わない長期的視点による経営といった「日本的経営」を可能にしていたのだ。
この「日本的経営」を別の言葉で言い換えれば、「企業は従業員のもの」という考えであり、「従業員主権」。今風に言えば、下の図のような「ステークホルダー(利害関係者)主権」という企業統治の考え方。
これが、バブル崩壊前後からのそれこそ日米構造協議や竹中小泉構造改革によってコーポレート・ガバナンスが声高に叫ばれ、「企業は株主のもの」という、今の「株主主権」の考えに変わっていった訳で、日本は米国の都合で米国から「株主資本主義」を押し付けられることによって「日本的経営」や「従業員主権」を失ったということなのだ。
その結果がどうなったかは、世界でこの20年以上も給与が下がり続け、経済成長からも取り残され今の日本の惨状で明らかな筈。
この「株主資本主義」については下のリンク先の批判を読んで頂くのが一番だが、この「株主資本主義」という金融資本主義によって資本主義はそれこそ持続可能性を失い、今のような貧困と格差を再生産するだけの代物になったと言ってもいい筈。
Q6. 株主資本主義とはどういう概念ですか。
A. アメリカで主流となっている「会社は株主のものであり、
株主の利益を最大化するために経営されるべきである。」と考える資本主義です。
株主の利益を最大化するために会社にかかわる人々に犠牲を強い、
企業の長期的な発展を妨げるシステムです。社会に有用な企業を崩壊に導く可能性を持っています。
この株主資本主義、金融資本主義、そして富裕層とグローバル大企業のやりたい放題を是認する新自由主義を脱して、もう一度、「企業は従業員のもの」という「日本式経営」の時代に戻ることこそが、「新しい資本主義」を実現することなのだが。
※photo by 首相官邸HP
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