9.最新技術を応用した卵ビジネス
卵の生産&販売 『株式会社プロテ・エッグ』 代表:イチノミヤ・トモキ氏 / 聞き手:けさらんぱさらん研究所 所長 にへどん
にへどん:
本日は世界の卵産業に大きな革新をもたらした、卵ビジネスのパイオニアとよばれる 『株式会社プロテ・エッグ』 の代表、イチノミヤ・トモキさんにお話を伺いたいと思います。
イチノミヤさん、よろしくお願いします。
イチノミヤ:
よろしくお願いします。
今、“卵ビジネスに革新をもたらした” と紹介していただきましたが、まさに我々は これまでの卵ビジネスの問題点に大革新を起こすためにこの事業を始めたのですよ。
ところで、にへどんさんは “卵ビジネスの問題点” ってどのようなものだか、お解りになりますか。
にへどん:
いやー、私は “卵かけご飯” は大好きなんですけど、卵ビジネスについてはまったく知識がありませんので・・。
イチノミヤ:
普通の方はそうですよね。
では、簡単に説明したいと思いますが、なによりの問題は、 “サルモネラ菌対策” なんです。特に日本人は、にへどんさんのように “卵かけご飯” などのように生卵を好んでたべますから、この問題はとても大きいのですよ。
にへどん:
確かにいつの時代でも “卵かけご飯” は我々庶民の大好物ベスト10に入る料理ですものね。
卵にサルモネラ菌が感染していると、やっぱり困ってしまいますよ。
イチノミヤ:
ところがですね、卵というものは、たとえどんな卵といえでも、必ずサルモネラ菌に感染していると言っていいのですよ。
にへどん:
え、そうなんですか。それだと日本中の、いや世界中の人がサルモネラ菌にやられてしまうじゃないですか?
イチノミヤ:
それはご安心ください。サルモネラ菌は熱に弱いので、75度で1分加熱すれば死滅すると言われていますので、通常の卵料理ではあまり問題にはなりません。
ただ、半熟状態のオムレツを好まれる方や、我々日本人のように生で食べる習慣があったりする場合には、これはとても深刻な問題となります。
にへどん:
卵を生で食べる我々日本人は、どのようなことに気を付けるべきなんでしょうか。
イチノミヤ:
先ほど “サルモネラ菌は熱に弱い” と言いましたが、同様に “サルモネラ菌は低温状態では繁殖できない” のです。
具体的には “産卵後すぐに10度以下の状態で保存すれば、サルモネラ菌は食中毒を起こすレベルには増殖できない” と言われています。
にへどん:
なるほど。なので、卵は普通 チルドケースの中で販売されているのですね。
あれ、でもスーパーによっては常温状態の棚で販売されている場合がありますね。あれって問題があるってことですか。
イチノミヤ:
実は問題が大ありなのです。
例えば、“卵を36度の温度で1日おいておくと、食中毒が起きるレベルまで感染する” と言われています。
にへどん:
うわー、それじゃあ、店の軒先で大売り出ししている卵なんか、かなり厳しいじゃないですか。
これからは必ずチルドケースで販売されている卵を買うようにしますよ。
イチノミヤ:
ただ、それだけでは不十分なのですよ。
たとえ販売店で10度以下の状態で販売されていたとしても、鶏卵場から問屋やお店までの流通の段階ではどんな温度管理なんでしょう?
また、お店に届けられてからも、店内のチルドケースに入れるまでの間、どのような状態で管理されているのでしょう?
そういったことを考えてみたことありますか?
にへどん:
いやー、まったくの盲点でした。でも、そんなことを考えたら、卵かけご飯はもちろん、フワトロの半熟オムレツなんかも食べられなくなってしまいますよ。
イチノミヤ:
そんな “卵ビジネスの問題点” を解決したのが、我々 『プロテ・エッグ』 なのです。
我々は、卵の生産から流通、販売まで、すべて自社で行っています。鶏卵場で産み落とされた卵はすぐに10度以下のチルドルームにて保管され、その後、リアルタイムで直営店舗のチルドケースに運ばれるのです。
サルモネラ菌の繁殖はまったく心配いりません。
にへどん:
それは安心ですね。でも、流通の段階はどうなんですか?
当然、チルド機能のついたトラックなどで運ぶんでしょうけど、鶏卵場からトラックに積み込む段階とか、トラックから店舗に積み降ろす段階で、夏場なんかは結構、温度の高い環境に置かれることになりますよね。
イチノミヤ:
それこそ心配ご無用です。卵の流通方法にそ、我々の最大の強みがあるのです。
実は私は以前、大学の研究員をしておりまして、そこで 『電送移動の理論』 というのを研究していたのです。
卵の流通にはこの理論を応用してつくられた 『電送装置』 を使っていますので、鶏卵場のチルドルームから、販売店のチルドケースまで、まったく外界に出ることなく、瞬間移動させているのです。
にへどん:
『電送装置』 ってまさか、以前、キョウナン大学でニワ教授が開発された 『科学観測衛星』 に取り付けられていたヤツじゃないですか?
てことは、イチノミヤさんって、あの時、ニワ教授の助手をしていたイチノミヤ研究員なんですか?
イチノミヤ:
さすが にへどんさん、その手の分野はお詳しいですね。
まさに、その通りです。当時、日本の学界から全く無視されていた、私の 『電送移動の理論』 を、ニワ教授だけが認めてくださり、実機の開発を成功させていただいたのです。
そして今、その 『電送装置』 を卵の流通に利用したというわけです。
にへどん:
そうだったのですね。
でも、確か、ニワ教授は地球侵略を企てる宇宙人で、お二人が作った 『科学観測衛星』 というのも、地球の防衛に関する情報を盗み出すためのものだったんじゃなかったでしたっけ。
それに、ニワ教授の正体に気が付いたイチノミヤさんは、決死の覚悟でニワ教授に化けた宇宙人の作戦を阻止しようとして、ニワ教授もろとも 『二人を同時に電送することができない電送装置』 に入り、時空の彼方に消え去ったと伝えられていたような気がしましたけど・・・。
イチノミヤ:
そこまでご存じならば、仕方がありませんね。実は、あの “二人同時の電送” によって、ニワ教授と私の肉体が一度融合された後に分離されたのです。
その結果、ニワ教授は 80%がニワ教授で、20%が私という形で再合成され、私は80%が元のままですが、20%だけニワ教授、つまり宇宙人という形で再合成されてしまったのです。
ニワ教授がどこに再電送されたかは解りませんが、私の方はキョウナン大学のニワ教授の部屋に逆電送されました。
にへどん:
そうだったのですね。
世間では貴方のことは 『地球侵略を防ぐために命を犠牲にして宇宙人を倒した英雄』 として認識していますよ。
しかし地球に逆電送されたときに、よく誰にも気が付かれませんでしたね。
イチノミヤ:
実は私が地球に、つまりニワ教授の部屋に逆電送された時、ニワ教授の部屋の前を通りかかった方がいたのですよ。
まちがいなく、私が逆電送された時の大きな音を聞いたと思うのですが、『春風によって花瓶が倒れた音』 だとでも思ったのでしょう。
そのまま通り過ぎてくれたおかげで、私はこうして第二の人生を歩んでいるというわけです。
にへどん:
でも、そのおかげで食中毒を心配せずに “卵かけご飯” が食べられる世の中になったのですから、私としては大満足ですねぇ。
イチノミヤ:
そう言っていただけると、私も嬉しいです。
逆電送の際に、私には20%の宇宙人の肉体と精神とが融合されましたので、宇宙人の技術力なども同時に身に着いたのです。
それでニワ教授の助け無しで 『電送装置』 を再開発することができました。
私は第二の人生を、日本の “卵かけご飯文化” のために費やしていくつもりです。
にへどん:
いやー、それはご立派なお考えです。
本日は素晴らしいお話をどうもありがとうございました。
【ご参考までに】
・ニワ博士とイチノミヤは、ウルトラセブン第29話「ひとりぼっちの地球人」の登場人物。実はニワ博士は「プロテ星人」が変装した偽者だった。
・プロテ星人は「目玉が目玉焼きみたいな顔」をした宇宙人で、転送装置をイチノミヤとともに作り、地球侵略に使おうとしていた。
・作中では、イチノミヤはプロテ星人の地球侵略をそしするために、ニワ博士の姿をしたプロテ星人を捉えたまま転送装置に入り、宇宙の果てへと転送されてしまった。
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