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2.宇宙植物で賢く稼ぐ

にへどん(けさらんぱさらん研究所)によるインタビュー「YRコーポレーション代表:イシグロ・タツオ氏」

にへどん:
 本日は宇宙植物ビジネスという、斬新かつ不気味な事業を行っている、『株式会社YRコーポレーション』 代表のイシグロ・タツオさんからお話を伺います。
 イシグロさん、よろしくお願いします。 

イシグロ:
 よろしくお願いします。
 このインタビューのために昨日、『箱根の別荘に行ってオゾンをいっぱい吸ってきました(※1)』 から、元気一杯です。なんでも聞いてください。

にへどん:
 おっと、いきなりイシグロさんの決めセリフ 『オゾンをいっぱい吸って』 がでましたね、これは期待が持てそうです。 イシグロさんはもともと地球の防衛を担う組織にいて、ずっと宇宙ステーション勤務だったのですよね。今回の 『宇宙植物ビジネス』 もこの前職の体験が活かされているんですか。

イシグロ:
 そうなんです。もうだいぶ昔になりますけど、久しぶりの休暇で地球に戻ってくるときに、地球侵略を狙っているある宇宙人に拉致されてしまいまして、私は隕石の中に閉じ込められ地球に落とされてしまったのですよ。
 妻のミツコが私の家の庭にその隕石が落ちているのを発見したんですが、その宇宙人は、隕石に閉じ込められた私の脳波を感知して、私そっくりに化けて何食わぬ顔で地球で活動を始めたというわけです。
 皆さんのご記憶にも残っているかもしれませんが、俗にいう 『緑の恐怖 事件』 ですね。

にへどん:
 覚えていますよ。イシグロさんに変身した宇宙人が夜な夜な通行人を襲った事件ですよね。
 襲われた人は宇宙人と同じ植物人間になってしまいました。 確か、最初の被害者の方は 『センキチさん(※2)』 という方でしたっけ。

イシグロ:
 細かいことまでよく覚えていらっしゃる。
 あのときは、私の家のお手伝いのシズさんが、私の脳波を宇宙人に送っていた 『発信機付き電子頭脳』 を発見してくれたため、私のニセモノは正体を現し、地球防衛軍的な組織に退治されて事なきを得たのですけどね。

にへどん:
 そのときの宇宙人を活用したのが、今回お話をいただく 『宇宙植物ビジネス』 なんですね。

イシグロ:
 はい。実はあのとき、妻のミツコが、退治された宇宙人の細胞を、なんていますが、その、ちょっとくすねておりましてねぇ。それを私が休暇中に箱根の別荘で研究したんですよ。それが今日の私のビジネスの第一歩だというわけです。
 すべてミツコが宇宙人の細胞をくすねてきてくれたおかげですよ。

にへどん:
 『シッカリ者』 の奥様ですね。
 その後すぐに、イシグロさんは地球防衛軍的な組織をお辞めになって、現在の 『YRコーポレーション』 を立ち上げられたのですよね。

イシグロ:
 妻がくすねてきた細胞をはじめて顕微鏡で見たとき「これはイケる」と確信したんです。
 この宇宙人、というより、知性を持った宇宙植物と呼んだほうが良いかもしれないですね、これを培養して観葉植物として販売すれば絶対に成功すると思ったのです。

にへどん:
 でもキケンだとは思いませんでしたか? オフィスに置いてある観葉植物がいきなり社員を襲いだすとか。

イシグロ:
 それはまったく心配いりません。
 その宇宙植物を植える鉢やプランターに 『チルソナイト(※3)』 という物質を仕込み、中に例の 『発信機付き電子頭脳』 を入れておくんです。そしてそこから「人は襲うな」などの指令が出るようプログラムしておくのですよ。
 あ、この 『チルソナイト』 や 『発信機付き電子頭脳』 もミツコがくすねてきたんです。まったくたいした妻ですよ。

にへどん:
 奥様はお綺麗でなおかつ育ちの良さそうな雰囲気を持たれていますから、地球防衛軍的な組織の方々も油断したんでしょうね。
 それにしても、キケンは全く無いということですので、安心してこの観葉植物、あ、商品名は 『ワイアール』 でしたね、このワイアールを家に置くことができますね。

イシグロ:
 はい、ご安心ください。
 もし万が一、ワイアールが人を襲い、その人が植物化されたとしても、元の宇宙植物を退治すれば、その人に戻りますから心配無用です。
 これは先の『緑の恐怖 事件』でも確認されていますしね(※4)。

にへどん:
 更に最近では『発信機付き電子頭脳』のプログラムを「害虫を退治しろ」というように設定しておくことで、害虫駆除にも活用されているようですね。

イシグロ:
 その通りです。そういった活用を行うことで、単なる観葉植物から実用植物へと進化していったのです。
 もともとこの宇宙植物は真っ二つに切ってビームを当てて燃やさない限り、ほとんど枯れることはありませんからねぇ(※5)。
 トンネルの中のわずかな光でさえ、巨大化したという観測データまでありますから(※6)、日光の当たりずらいオフィスでも十分に成長できるんです。
 それにくわえて害虫などからも養分を取り成長しますからねぇ、もう無敵の植物ですよ。

にへどん:
 奥様は商品開発に関してもアドバイザーとして活躍されているそうですね。

イシグロ:
 ええ。観葉植物の枝葉の形とか、それを植えるプランターのデザインをどうするかとか、プログラムに「空気清浄」とか「花粉除去」とかを組み込むとか、ミツコの感性が活かされていますよ。
 最近だと、家庭用のミニサイズのものがたくさん売れていますが、これもミツコのアイデアなんです。

にへどん:
 まさに内助の功で順風満帆な 『YRコーポレーション』 ですね。
 最後にこのインタビューをご覧の方々へ “新規ビジネスを始める” ことについての何かアドバイスはありますか?

イシグロ:
 そうですね。やはり企業や組織に属しているときに得られるものは、知識でも人脈でも 『宇宙植物の細胞』 でも 『発信機付き電子頭脳』 でも 『チルソナイト』 でも、とにかくなんでも自分のものにしてしまうということですかね。
 それとなんといっても、手癖が悪く、外ヅラの良い妻との円満な生活が一番大切です。わっはっは。

にへどん:
 いやー、のろけられてしまいましたね。
 シグロさん、今日はどうもありがとうございました。
 このインタビューをご覧の皆さまは、なかなか宇宙素材と係わる機会はないかと思いますが、宇宙からの物体がいつ貴方の家の庭に落ちてくるかもしれませんので、明日、朝、目が冷めたらまず庭をご覧になってみてください。(※7)

※1:ウルトラセブン第2話「緑の恐怖」の中でのイシグロ隊員の有名な台詞。
※2:大村千吉(俳優)/特撮史上最高の狂気狂乱の表現者。
※3:正式名称「チルソナイト808」/ワイアール星でのみ産出される金属/ウルトラQにおいても「チルソナイト」という名称の鉱石が登場したことがあるので、おそらく「円谷プロ創作の物質名」であろう。
※4:「緑の恐怖」では、ワイアール星人が倒されると、植物化された人々は皆、元に戻りました。
※5:「緑の恐怖」の中で、ワイアール星人はアイスラッガーで両断されエメリウム光線で焼き殺された。
※6:ワイアール星人は「小田急線のトンネル」の中で巨大化した。
※7:「緑の恐怖」のエンディングナレーション。

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