人と人とのつながりは言葉で定義できない
最近、見た映画がとてもよかったので、書き留めておきたいと思います。
2人の主人公、山添くんと藤沢さん。最初は「苦手だな」と感じていた間柄が、どんどん変化していくのが、映画のいちばんのキーポイント。というか、それ以上のことは何も起きない。ドラマチックなことは起きないし、病気が治るわけでもない。山添くんと藤沢さんの変化と、それを取り巻く会社の人たちの日常を描いています。
大げさな音楽も、激しいカメラワークもない、本当に静かな日常。でも映画が終わったあとは、多幸感に包まれて劇場を後にできます。
で、この映画を人に進めるとしたら、山添くんと藤沢さんをなんていう言葉で説明したらいいだろう?と悩むわけです。映画の番宣を見ていると「特別な関係」と言っているんだけど、あまりしっくりこない。
確かに特別なんだけど、お互いに特別だと依存していないんですね。たまたま、人生のある期間、横に座っただけの「同僚」。でも、普通の人がイメージする「同僚」とはちょっと違うわけです。
山添くんと栗田科学の社長さんや、前職の上司も「上司」という説明だけではつかないような、本当に暖かい関係なんですよね。
こんなことを思いめぐらせていると、そもそも人の関係って、言葉で簡単に説明できることの方が難しいな、なんてことに気づきます。
私も、長らく注文住宅の設計という仕事をしてきましたが、お客様と設計士というのは、本当に不思議な関係だと思います。
長い人生のうちの数か月間、ものすごく密にお付き合いをします。生活の細かなことから、経済状況まで、仲の良い友達でも知りえないところまで、割と踏み込んでお話することも少なくありません。
「お客様」ではあるんだけど、たまたま通りがかった人に家を買ってもらったわけではないので、なんだかしっくりこないな~なんて思うのです。
こうやって、「言葉では説明できない関係」に包まれて、私たちの生活は成り立っているんだな。
願わくば、映画の中の「栗田科学」みたいな会社が増えて、生きづらさを抱えながらも、折り合いをつけて前を向ける人が増えるといいですね。
SNSや日々の生活の中で、人の悪意に触れすぎて心が疲弊している人。ぜひ、この映画の世界に触れてみてほしいなと思います。
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