見出し画像

株では勝てる俺もカワイイ女子高生には勝てない。感想

はじめまして、犬っころといいます。

今回はMF文庫から4月24日に発売された『株では勝てる俺もカワイイ女子高生には勝てない』通称#株カワ の感想を記載します。
https://twitter.com/MF_bunkoJ/status/1387727372816846850?s=19


もし、まだ読んでいない方はあらすじだけ読んで下さい(笑)
本編も知りたい方はぜひ最後まで読んでもらえると幸いです。

あらすじ

金さえあれば何だって買える。愛だって、青春だってーー。
若くしてデイトレーダーとして成功した奥田理人、二十五歳。タワーマンションで暮らし金銭には不自由のない生活をしているが、かつては極度の人間不信のせいで孤立した高校生活を送っていた。
そんな彼の前に現れたのは「灯香の目標はね・・タイムマシンを作ることなの」無邪気にそう語る家出少女、常磐木灯香だった。それはあまりに無謀な夢だったが灯香のひたむきな気持ちを知り、彼女をしばらく家に泊めて夢への出資をすることにした理人。
「あ、おはよう、理人さん」「何してるんだ?」
「何って、朝ご飯を作っているんだよ」人の心が理解できない男と、ひたすらに夢を追う女子高生の不器用だけど温かい同居生活を描いた作品



株カワ感想~少しネタバレ

結論からいうとめっちゃひきこまれた作品でした!!!
読む前はSFラブコメ系?なのかなと思っていましたが読んでいくと奥が深くなぜ理人が灯香を面倒みることになったのか。
そもそもなぜタイムマシンを作りたいと灯香が願っているのかが読むにつれてはっきりしていきなるほどなと最後には納得してしまった作品でした。

かつラブコメ要素はあるのかなと読んでいくと最初は
ぎこちない二人でしたが後から登場する多由と寿々音が二人をフォローしながらくっついていく様は読んでいてハラハラしました。

簡単にまとめると以下の点

①読みやすく台詞のところどころが面白い
②それぞれのキャラクターの行動原理や立ち回りが読んで理解できる点
③お金で買えるものと買えないものがわかる
④灯香のギャップ
※えーるさんの絵が上手い
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

①読みやすい
この点に関しては読む上で自分は一番気にしている点です。長い説明や複雑な言い回しなどあると自分は読むのが億劫になってしまうので。。その点でいうと常に人物同士の会話や誰にでもわかりやすい表現もつかわれており文章が頭に入りやすかったです。

例えば第一話で理人が多由との食事に遅れてくる場面

多由「それじゃあここでクイズです。第一問。今何時ですか。」
理人「夜9時だが」
多由「第二問。待ち合わせ時間は何時ですか?」
理人「夕方5時だったな」
多由「第三問、、、九引く五は?」
理人「バカにしてんのか? 四だろ」
多由「だからぁ、、バカにしてんのはどっちかそろそろ気づけよぉぉ」

。。。マジで多由尊い。
そもそも待ち合わせの5時から9時まで待っててくれる人間がいるかどうか。。
いないやろ(泣)

例えば第一話で多由と理人の電話の場面

多由「理人?えっと、その、、さっきはごめんね。あたしちょっと、言いすぎたかも、、。もし、傷ついていたら、、」
理人「なぁ多由。俺、あれから色々あって、、考えたことがあるんだ。俺、人間モドキって言われたの結構刺さってたみたいでさ。俺、人間モドキから人間になりたいと思った」
多由「、、そう」
理人「そのためには、、気持ちに正直になることだよな。時には、実利より感情を上に置いたっていいんだよな」
理人「俺は今夜、一人の女の子の綺麗な思いを信じることができなくて、ついには逃がしちまった。だからーこれから、そいつを迎えに行こうと考えてる」
多由「え!これから、、?ま、まいったな、もう化粧落としちゃったよ、、い、一時間くらい待ってくれれば、、、」
理人「じゃあまたな」
多由「え?ちょ、ちょっと」
ブチ、、、

お互い微妙にすれ違ってしまうところも夫婦漫才並みのやりとりは読みながら思わず笑ってしまいました。多由と理人の会話にはこんな文章が盛り込まれてます。

②それぞれのキャラクターの行動原理や立ち回りが読んで理解できる点


主に本書のメインで登場するキャラは上記の4人
奥田理人
→25歳で総資産約何百億を有しているデイトレーダー。幼少期時代に両親との間に起きた『出来事』により人間不信になる。

鈴城寿々音
→灯香と同じ学校に通う同級生。本人の性格によって学校で孤立になっていたところ灯香に救われ慕うようになる。

憂沢多由
→理人の高校時代の同級生。多由も理人同様、家庭環境により外見や内面が変わってしまいその過程によって理人と『歪』な関係となる。

常磐木灯香
→寿々音と同じ学校に通う女子高生。タイムマシンを作りたいという理由の根本は両親と関係しておりピュアでまっすぐだがあぶない一面をもつメインヒロイン。

と登場人物を簡単に説明しました。
読んでいて分かりやすかったのはそれぞれのキャラクターの立ち回りや行動原理が複雑でなく、わかりやすかった点です。


なぜ、理人は人間不信になってしまったのか?

なぜ、寿々音は灯香を慕っているのか?

なぜ、多由は今も理人と関係性があるのか?

なぜ、灯香はタイムマシンを作りたいのか?

それぞれの『なぜ』がきちんと描かれていて読んだあとも痼がないものになっており共感すら覚えてしまったからです。
※なぜの部分が知りたい方は後述に記載しています。
知りたくない方は本書を買って是非読んでみて下さい。
自分は本書を読んで多由が好きになりました(笑)

③お金で買えるものと買えないもの
これは現代でもありますが基本すべておいてお金は必須でありお金があればなんでも買えると思います。

最初、理人はお金で買えないものはないと豪語しており口癖は「お前の時給はいくらだ?」など全て時給
換算で考えていました。
そりゃあこんな発言していると人間の心がわからなくなりますよね。
だから多由から「人間モドキ」と言われてしまい落ち込む場面はありました。
ある意味この場面があったからこそ灯香と出会うきっかけになるのですが。。

しかし、灯香と出会い、接する中でお金も大事ではあるがそれよりも「心」も大事なんだとわかってくるようになり人間らしさを手にいれていきます。
最後には灯香を探すため多由に頼んで街頭やSNSに広告を出してしまうぶっとび行動も起こします。
この部分はさすがお金持ちと思ってしまうがこの行動で理人は「人間モドキ」でなく人間としての感情でうごいているんだなと感じられる描写だと思いました。



理人がお金で買ったぶっとび物
★100万円相当の指輪
→待ち合わせに遅れた多由に渡すために買ったもの
★ヘリコプター:いくらか不明
→灯香をこわもてから救い出すため要請
★叔父に払った示談金1000万
→灯香を叔父の呪縛から解放するために行ったもの
★部屋のリフォーム 防犯強化約20億
→不審者対策で部屋の中や外に防犯カメラを設置。のちにこの不審者は寿々音だったことが判明(笑)
★ゲームセンターでゲームをクリアするために10万ほどコインに両替。
★タイムマシン開発者募集の広告費約200億
→灯香を探すために多由に頼んで街頭やSNSで発信

お金かけすぎだろ‼️
さすがお金持ちと言いたいけどぶっとんでますよね。。


④灯香のギャップ
ここで挙げる灯香のギャップは性格だけでなく人間性も含めています。

最初に登場する灯香はタイムマシンを作りたいんだよと理人にせがむピュアな女子高生で料理ができなかったり怖い人形を作ったりと可愛らしい一面を出していましたが叔父の登場により明るい一面から一転暗い一面をみせ灯香という人間性の脆さがでてきます。

そしてタイムマシンを作りたいという本当の理由もネガティブなもので今を変えたいと必死に願う一面もでてきます。
しかし、理人達と接する中でそんな弱い部分も肯定していき最後はポジティブなものにかわっておりこの点も灯香の人間性的に成長が伺えるギャップだと思います。


※えーるさんのイラストが上手い。
https://twitter.com/ale_nqki?s=09
本書が気になった要因のひとつは表紙のイラストや登場人物たちの絵が上手くて惹かれた点でした。
カワイイキャラクターだなぁー読んでみよう。。と(泣)
浅はかな理由ですがえーるさんのイラストが上手くて惹かれた点も本書としては素晴らしい点です。


以上が株カワの感想になります。
読んだ上で人間の感情ってなんて複雑でもどかしいんだなと思ってしまい自分も日常に思い返すと似たようなことをしているんじゃないかと考えさせられる作品です。
是非興味のある方は読んでみて下さい!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー













深掘り感想とネタバレ

ここからはもっと深掘りしたネタバレの話の感想を書いていきます。
いやな方はブラウザバックして下さいm(_ _)m

なぜ、理人は人間不信になってしまったのか。

幼少期時代に親に捨てられたのが原因です。
そこから一人で生きていくために死に物狂いでお金を稼ぎデイトレーダーになるために感情を殺す必要があった。
それが悪い方向に向いてしまい、高校時代、多由が落ち込んでいた際、素直に接することができずお金で関係を結んでしまった。
この出来事も理人が人間不信になってしまった要因にも繋がっています。
この場面でお互い接し方を変えていれば違う未来があったんだろうなとも思いますがなんとも悲しい高校時代ですね。


なぜ、寿々音は灯香を慕っているのか。

同じ、高校の生徒ではありましたが特に接点はありませんでした。
寿々音はクラスでは融通がきかず石頭女と言われ毛嫌いされていました。
そして、見た目の髪型のせいで「メデューサ」と言われ孤立していました。

そこに灯香がタイムマシンの実験の手伝いをお願いしたいと声をかけてきたことが始まり。
それまで一人だった寿々音はこの出来事をきっかけに灯香を慕うようになります。

寿々音「それはなんてことのない実験だったけど、、わたしにはすぐに学校生活の全てになりました。こんなわたしでも世の中に必要とされることがあるんだなって。なんていうか、、、灯香先輩は人間としてとてもプリミティブなんです。そばにいるだけで明るくなるっていうか。、、、だから、、、好きで。」

この場面で寿々音の印象は自分にとってがらっと変わりました。
それまでは理人から灯香を守るいい友達という印象でしたがこの発言で寿々音自身の弱いところを魅せた上で本当に灯香のことが好きなんだなと感じた場面です。
おそらく友達以上の好意もあったと思います。
そして、最後、理人が灯香を探しているのをみて、




寿々音は「今の灯香先輩の顔をみて、わかっちゃいました。だって、今の灯香先輩、すごくいい顔をしてるので。結局、あの人には敵わないんだなって。残念ですけど。」

大切な人だからこそ最後には身を引き灯香を後押ししてくれていました。
この場面は読んでいて切なくなりました。
寿々音も良い娘です(泣)


なぜ、多由は今も理人と関係があるのか。

そもそも多由と理人の出会いは高校時代まで遡ります。
お互いはみだしもので休み時間や授業中によく屋上で一緒になりました。
その頃から理人は曲がった性格をしており、人と話す際、有料制でお金を取っていました。
そりゃあ友達はできないよ。。。
しかし、多由はそんな理人に対しても物怖じせず、お金を払って会話をすることに。

すごい。。。中々お金を払ってまで会話する人は珍しいがこの頃の多由も自分と同じ境遇の人と一緒にいたかったのかなと思います。

しかし、関係が変わったのはあるどしゃぶりの日。
理人が何気なく屋上にいくと傘も差さず立ち尽くしている多由を発見する。

理人「、、、どうしたんだ、多由」
多由「、、、親父に殴られた」
多由「ねぇ、理人」
理人「なんだよ」
多由「、、、世界からはみ出したら戻れないっていうならさ。もう死んじゃった方がマシなのかな」
理人「そんなこと、、ないだろ。何言ってんだよ。多由、お前、、様子がおかしいぞ。」
多由「だったら、、、お金払うから、慰めてよ」

自暴自棄になっている多由にきちんと接することができればここで間違いは起こらなかった。
しかし、理人は正しい愛し方を知らなかった。振りきれた感情の余白を違うもので埋めてしまった。だから理人は多由に間違ったやり方で返してしまった。。。

理人「、、、キスは一回百円。その先は千円だ」
ここで『歪』な関係ができてしまった。
この行為が原因で理人は高校を中退してしまう。

多由はこの出来事を後悔していることもあり今も理人を気にかけ関係を続けている。
今は『歪』な関係はなくなってはいるらしい。

学生時代の淡い青春ではありますがこの場面も読んでいて切なくなった部分です。
さらに自分は多由が好きになりました(笑)


なぜ、灯香はタイムマシンを作りたいのか。

原因としては両親を亡くしてしまい今の境遇を憂い両親がいた過去に戻りたいためにタイムマシンを作るというネガティブな夢でした。

なぜ亡くなってしまったかは記述はありませんでしたがそれは次巻が出たら語られるのかもですが。。

当初は今の現実から逃げたい為でした。
しかし、理人と接していくにつれて今の生活が楽しくなってしまいタイムマシンを作るモチベーションが低下してしまいます。
寿々音に相談した際、寿々音から「聞きたいんですけど、もし、タイムマシンが完成して、灯香先輩が過去に帰れることになったら、今の生活を捨てて帰りますか?」
この発言に灯香は即答できず、答えを出すことができませんでした。
それは灯香が今の生活を楽しんでおり過去に帰る必要が無くなった証拠にもなります。
しかし、この時はなぜ帰りたくないのか理由がわからない状態でした。
そこで寿々音は灯香にある助言をします。

寿々音「灯香先輩が奥田さんにタイムマシン作りをやめるって言ってみるんです。」「灯香先輩が、雇用関係じゃなくて一人の人間として奥田さんの前に立った時、、、向こうがどういう風にリアクションするか、聞いてみるってことです。もし、何かあったら骨は拾いますから」

この寿々音の発言は理人に言ったあと、どうなるのかある程度予想されることを示唆してますね。。
悪女感半端ない。。

しかし、灯香はピュアなので信じて理人に言ってしまいます。
まぁ予想通り理人は「、、、もしお前が本気でこの家を出ていくっていうなら、、俺はお前の意思を尊重する」
理人にとっては最大限、灯香を尊重した発言ではあったと思いますがここで灯香がほしかった言葉ではないんですよね。。
その言葉をきいて灯香は家をでて行ってしまいます。

その後、多由が理人を励ましてまた背中を押された状態で立ち上がりぶっとんだ広告募集をして灯香を探します。
『急募 タイムマシン開発者 ※経験者優遇 あなたが最初に未来から来た場所に集合でお願いします。』

理人と灯香にしかわからないメッセージですよね。
この広告を灯香はみて理人の元に向かっていきます。
この場面も背中を押す寿々音が切なく描かれており本当に寿々音は灯香のことが好きなんだなと思います。

最後は灯香と理人は出会うことができ、灯香は再びタイムマシンを作る意欲が戻ります。
しかしその目的は今の世界が嫌だからという理由でなく、今の暮らしが幸せでそれを両親に伝えたいという前向きなものに変わっていき灯香自身の成長に繋がった場面でもあると思います。

総括
最後の終わり方的に次巻があるかは微妙なものとなっていますがぜひ次も続いてほしい作品だと思います。

人間不信だった理人と過去に帰りたかった灯香はお互いが混じることで人間不信と過去を払拭してくれる間柄になったかと思います。

ここまで読んで頂いた方がいましたらありがとうございます。
感想等ありましたらコメント頂けると幸いですm(_ _)m

Twitterもやってますので違う作品の感想もツイートしていますのでフォローしてくれたら泣いて喜びます(泣)
https://twitter.com/silverwolf0606?s=09

『蛇足』
感想書くのって難しい。。

















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?