夜のチューリップ

おセンチな夜に浮かぶこと

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おセンチな夜に浮かぶこと

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23:45 下北沢

金曜の夜、君はだいたいセンター街かゴールデン街にいる。 誰と何をしているのか、私に言論の自由はない。 金曜の夜、私はいつも下北沢にいる。 家で一人、気持ち良く酔った君がたどり着くのを待っている。 混沌とした街の空気も君にまとわりつけば、心地良い。 べたついたあの匂いが恋しい。 あとは寝るだけになった君はいつも優しい。 慌ただしさを置いてきたその存在は柔らかくて愛おしい。 だから私は毎週待っている。 他の誰より君に会いたい。 だけど君は毎週は来ない。 気が向いたと

    • 変わりゆく渋谷と、変わってしまったあの人と、変われないわたしと。

      地図に案内された道は、細くひとけがなく何度も曲がる道だった。 しかも、行き止まりに3回もあたって、 その度に他の経路を検索し直した。 画面に浮かぶ徒歩10分なんて嘘で、20分はかかった。 ほんの少し前まであった道がなくなっているのが渋谷だ。 Googleをもってしても、最新で最適の道を案内することはできない。 どこか何かへ向かって大急ぎの街だ。 そのせいでこちらは毎回遠回りを強いられ、待ち合わせに何度も遅れている。 でも、ひとつだけ良いこともある。 それは、まだ優

      • さようなら、魔法使い

        「桜見るのすごい久しぶり!」 「まぁだいたいみんな1年ぶりでしょうね。笑」 「あ、そっか。そうですね。笑」 いつもいつも、いたずらに笑う。 でもそれももう、終わりだと思う。 あなたはわたしと1つしか歳が変わらないのに、ずっと大人に見える。 あなた以外の男の先輩は年下に見えることだってあるのに。 気を使わせずに気を使うのが天才的に上手いあなたの隣は、気を使わせてしまうのが天才的に上手い私にとって、天才的に居心地の良い場所だった。 今日もランチ代を出してくれる代わりに

        • チューリップって夜に開かないけど

          はじめまして。夜のチューリップです。 おセンチな夜に浮かぶことを書きます。 幸せなようで切ないようなお話を、 歌うようにひとりごとのように。 現実のようで空想のようなお話を、 思い出のように夢のように。 誰かの眠れない夜に届くといいな。 誰かの目覚めたくない朝に届くといいな。 そんな気持ちで綴ります。 どうぞよろしくお願いします。

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