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【FXとプロスペクト理論】損小利大のトレードをするために必要なこと。

FXは為替相場に対して上がるか下げるかにお金を賭けるものですが、人はお金が絡むと心理と感情の動きが大きくなります。

FXをやっている人ならわかると思いますが、エントリーして逆に相場が動いて損失が大きくなるとイライラしたり嫌な気分になり、思い通りに相場が動いて利益が増えるとニコニコするのが人間。
FXで負けると自分にはセンスがないと思い、逆にFXで勝つと自分にはセンスがあると思ったりする。

これはFXに「お金」が絡んでいるからこその心理で、極端なことを言うと、人は判断にお金が絡むとバカになるのです。
心理学者であるダニエル・カーネマンは、こうした利益と損失による心理的な傾向に「プロスペクト理論」と名前をつけました。

今回のコラムでは、プロスペクト理論とは何か、FXとプロスペクト理論の関係について解説していきます。

プロスペクト理論とは

まずはじめに、プロスペクト理論について解説していきます。
少し長ですが、FXにおいても大事なことなので読んでみてください。

プロスペクト理論は、たとえばファイナンスおける意思決定などにおいて、人が既知の確率を伴う選択肢の間でどのように意思決定をするかを記述する理論である。

行動経済学における最も代表的な理論の一つとして知られており、最適解を求めることよりも、現実の選択がどのように行われているかをモデル化することを目指すもの。
つまり、個人が損失と利得をどのように評価するのかを、実験などで観察された経験的事実から出発して記述する理論である。

プロスペクト理論では二種類の認知バイアスを取り入れており、一つは「確率にたいする人の反応が線形でない」、もう一つは、「人は富そのものでなく、富の変化量から効用を得る」というものである。

プロスペクト理論の元となった実験は、カーネマンが「一つだけの質問による心理学」と呼ぶ手法による。
たとえば、以下の二つの質問について考えてみよう。

●質問1:あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
・選択肢A:100万円が無条件で手に入る。
・選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。


●質問2:あなたは200万円の負債を抱えているものとする。
そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
・選択肢A:無条件で負債が100万円減額され、負債総額が100万円となる。
・選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら負債総額は変わらない。

質問1は、どちらの選択肢も手に入る金額の期待値は100万円と同額であるにもかかわらず、一般的には堅実性の高い「選択肢A」を選ぶ人の方が圧倒的に多いとされている。
質問2も、両者の期待値は-100万円と同額であり、安易に考えれば、質問1で「選択肢A」を選んだ人は質問2でも堅実的な「選択肢A」を選ぶだろうと推測される。
しかし、質問1で「選択肢A」を選んだほぼすべての人が、質問2ではギャンブル性の高い「選択肢B」を選ぶことが実証されている。

この一連の結果が意味することは、人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、すでに損失がある場合は安全性を回避し、ギャンブル的な行動をする傾向があるということである。

質問1の場合は、「50%の確率で何も手に入らない」というリスクを回避し、「100%の確率で確実に100万円を手に入れよう」としていると考えられる。
また、質問2の場合は、「100%の確率で確実に100万円が減額」という安全性を回避し、「50%の確率で支払いを免除されよう」としていると考えられる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E7%90%86%E8%AB%96

以上が、プロスペクト理論についての説明です。

FXとプロスペクト理論

プロスペクト理論は、人間には利益を逃す可能性があるとリスクを回避し、損失を抱えている場合はギャンブル的な行動をする傾向があることを示しているもの。
これはFXのトレードで心当たりがある人も多いと思います。

・含み益が大きくなると、利益を逃したくないとさっさと利確してしまう。
・含み損が大きくなると、より多くの利益を求めてギャンブル的になる。

FXはプロスペクト理論を絵に書いたように忠実に再現しています。
とくにFX初心者の人ほど、プロスペクト理論に当てはまるトレードをしていることが多いです。

プロスペクト理論を学ぶことは、FXにおいて優位性のあるトレードをするためにも必要なこと。
FXで負けてる人はプロスペクト理論どおりのトレードをし、損大利小のトレードをしています。
ですが、それではFXで勝つことはできません。

FXで安定して勝ち続けるには、プロスペクト理論と逆のトレードをしなければならないのです。

FXの敗因はRRの悪いトレード

FXでは1回のトレードごとにお金が増えたり減ったりしますが、お金が増えたときの喜びと、お金を失ったときの痛みは同じではありません。

上の図のように、お金を失ったときの痛みは、お金が増えたときの喜びより2倍近くも強くなります。
プロスペクト理論は、こうした人間の心理傾向を実験によって裏づけした理論で、人間には損失を回避する傾向があることを証明しました。
そしてFXではこうした心理傾向は、致命的な失敗につながってしまいます。

たとえば、損失が嫌でいつまでも損切りができないのに、少しでも利益が出れば今の利益を失いたくないからとすぐに利確する。
人間には損失を回避しようとする「損失回避性」という心理傾向がありますが、FXでは損失を回避するとRR(リスクリワード)が悪いトレードになってしまいます。

コツコツ利益を積み重ねながらも、一度や二度のトレードで今までの利益をすべて失ってしまうのは、損失回避性によるリスクリワードが悪いトレードをしていることが原因です。
よく言う「コツコツドカン」というのは、まさにプロスペクト理論どおりのトレードをしている状態。

利益はさっさと利確し、損失はいつまでも握ってしまう。
こうしたリスクリワードが悪いトレードをしている限り、FXで勝ち続けることはできません。

損切りは素早く利益は伸ばす

人間の意思決定は、複雑で不合理で人間的なものです。
合理的に考えればあり得ないことでも、現実の世界では不合理なことばかり溢れているもの。

FXでは損失はすぐに損切りし、利益が乗っているときは最大限伸ばすのが理想的なトレードですが、人間の心理はそれに抵抗します。

経済学がモデルとする人間は、あらゆる面において合理的な行動しかとりませんが、プロスペクト理論が示すとおり、経済学がモデルとするホモエコノミクス(経済人)はこの世に存在しません。

  • 体に悪いとわかっててもタバコを吸う。

  • ダイエットしてるのに甘いスイーツを食べる。

  • 損切りしたほうがいいのに我慢する。

  • 利益は伸ばすべきなのにすぐ利確する。

こうした不合理な行動をとるのは、人間に生まれつき備わっている傾向です。

FXで勝つためにはこうした心理に抗い、損失はできるだけ早く損切りし、利益はできるだけ伸ばしてリスクリワードが良いトレードをしなければなりません。

FXで負けている人の多くは、自分がリスクリワードの悪いトレードをしていることに気づいていない人も多いです。
利益が少し乗るとうれしくなって利確し、損失はすぐ戻るはずだと思っていつまでも損切りできない。
そして結局戻らずに逆方向に大きく動き、今までの利益をすべて失う大きな損失となる。

プロスペクト理論について学んでいれば、損切りできない自分は損失回避的になっていると気づき、すぐに損切りしないといけないと気づきます。
一方、利益はできるだけ伸ばし、リスクリワードの良いトレードもできるようになる。
これがFXで勝つために必要な行動です。

RRが良ければ勝率は50%もいらない

FXはプロスペクト理論と損失回避性に抵抗して、感情に流されずリスクリワードが良いトレードをすれば収支をプラスにすることができます。

損失は素早く損切りし、利益が出ているトレードでは利確したい気持ちを抑え、できるだけ多くの利益を獲得する。
こうしたトレードなら、たとえ勝率が50%以下であったとしても、トータルの損益はプラスになります。
勝率とリスクリワードの関係は以下のとおり。

損失を1、利益を2とした場合、勝率は33%以上あれば収支はプラス、RR1:3であれば25%以上の勝率がある手法なら最終的な収支はプラス。
実際、FXで勝っているトレーダーはリスクリワードと勝率の関係を考えたトレードをしています。

FXは感情的な行動を減らし、プロスペクト理論とは逆のトレードをすれば長期的に安定して勝てるゲームです。
FXで負けている人のほとんどは「勝ちたい欲望」と「負けたくない欲望」が強すぎて、トレードが損大利小になっています。
そこを改善するだけでも、FXでの収支は劇的に変わるものです。

FXが勝てる人より負ける人が圧倒的に多いのは、FXがギャンブルだからではなく、損切りを設定せずに戻ってくると思い込んだり、損失回避性によって利益が出るとすぐに利確してしまうから。
つまり、FXがギャンブルなのではなく、プロスペクト理論のような損失を回避するトレードをすることによってギャンブルになってしまうのです。

勝率とRRのどちらかを重視する

FXで勝っている人は自分のトレードスタイルを持っていて、優位性が高い場所以外ではエントリーしません。

  • トレードスタイルが決まっているから損切りのラインも明確で、自分の思惑から外れたらロボットのように機械的に損切りしている。

  • エントリーするときも、自分のトレードスタイルに沿った優位性の高いところでしかエントリーしない。

つまり、FXで勝っている人はプロスペクト理論とは逆の行動をとっているのです。
FX初心者にありがちな「ポジポジ病」は、プロスペクト理論の「利益のチャンスを逃したくない」という損失回避性が逆方向に働いている状態。
損失を確定したくないためではなく、利益を逃したくないために自分のトレードスタイルを破ってエントリーしています。

損失を確定したくない気持ちも、利益を逃したくないという気持ちのどちらも、プロスペクト理論が示す損失回避性によるもの。
FXで勝つためには、トレードは必ずリスクリワードが良いものであることが条件です。
利益は伸ばし、損失はすぐに損切りするリスクリワードが良いトレードができれば、トレードの勝率にそこまでこだわる必要はありません。

本当にトレードがうまい人であれば、損大利小のトレードでも勝率が高ければ最終的な収支はプラスにできます。
勝率が7割以上あるトレードなら、損失1に対して利益が0.3以上であれば収支はプラスになるため、リスクリワードが悪いトレードでも問題ありません。
つまり、勝率を重視するのか、それともリスクリワードを重視するのかによって、トレードの戦略は大きく変わるということ。

FX初心者の人はそこまで勝率が高いトレードはできないと思うので、まずはリスクリワードを重視し、プロスペクト理論とは逆のトレードをするのがおすすめです。
利益を伸ばし、損失をすぐ損切りすれば、かなり勝率が悪い手法を使わない限りは、FXで大負けすることはありません。

まとめ

今回のコラムでは、FXとプロスペクト理論の関係について解説してきました。

FXとプロスペクト理論には深い関係があり、FXで負けている人のほとんどはプロスペクト理論と損失回避性にハマったトレードをしています。
人は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向がある。
FXで負ける人の多くは、本来なら損切りすべきなのに損切りせず、利確してはいけないところで利確している損大利小のトレードになっている人がほとんど。

FXトレードの基本は損小利大で、損はすぐに損切りし利益はできるだけ伸ばせば、たとえ30%の勝率しかなくてもトータルでプラスになるもの。
プロスペクト理論と損失回避性を理解すれば、損切りを素早くし、利益はできるだけ伸ばす損小利大の理想的なトレードができます。

長期的かつ安定的にFXで勝ちたいなら、プロスペクト理論とは逆を意識し、リスクリワードの良いトレードをしていきましょう!


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