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逃げ水
夏は、死の匂いがする。 噎せ返るようなあつい酸素で肺を満たす時、 冷房の効きすぎた小さな箱に揺られて窓の外を見ている時、 最終バスを降りた素足を舐め上げる生温い風とじゃれる熱帯夜、 今も、 誰かがどこかで死んでいる。
ピンクと水色の夕焼け。宇宙が近くなる。
真夏の風景はいつも死の気配をスパイスのように孕んで、私を不安にさせて期待させて焦燥させる。 思念みたいなものってないと思う。 そうしたら地球は悲しみと絶望でいっぱいになってとっくに爆発してるんじゃあないかしら。
流れる風景がぬらぬらと光って脳を蕩かしていく、 夏が好きだ。
だいすきだ。
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