カタカムナの奇跡でサイアクな彼と別れた話ー1・始まりの事件編

2024年の5月4日土曜日。ここがドラマの始まりでした。
GWも最終日が近づいて、あぁまた仕事が始まるなぁ~と、スマホを操作していたお昼下がり。
同棲中の彼氏と、別々の布団で二人、りの字になって並んで横になっていました。
これといった会話らしい会話もなく、ただそれぞれがそれぞれの時間を過ごしていたんです。

でも、もう心は離れていました。
別れたいので力を貸してくださいと神社にお参りも何度も行きました。
すごーく別れたくてしょうがなかった。
でもどうせ…と半分諦めて、自分からは動こうとしなかったんです。

というのも、口を開けば要求ばかりの彼。
あれをしろこれをしろ腹減った飯まだ?できない事は言ってないよねなんでできないのできないなら言ってよできない事まで要求するほど鬼じゃないからさ
からの
「なんでできねぇんだよ」
この構図、パワハラ上司と遜色ない俺様主義といいますか。
自分の要求は100%通そうとするんです。
でも、こっちの要求は受け入れてくれないんです。
俺だけ満足できればいい。お前の都合は知ったことか。
…口では言いませんでしたが、態度に透けて見えたんです。

私が趣味に打ち込んでいるとそれを取り上げて壊したり破いたり、「なに無駄なことしてんの?やることあるでしょ」と行為自体を否定されたり。
この頃には、自己表現で趣味である創作と名のつく行為は、彼の目に触れないように、別の場所に出かけたり、彼が寝ているうちに済ませたりして、隔離するようにこっそり行っていました。

私は彼に寄り添っていたつもりでした。
彼の希望は叶えていたつもりでした。
でも、できない事も増えてきて、無視することも増えてきて。
でも、毎回伝えてはいました。
「アナタの全ての要求を満たすことはできない」と。

その日も、そういう中身のない会話だけで終わって、この怠惰な三日間をすごし、また私が働いて、彼は家で過ごして…そうやってまた、心を失くして働いて、嫌いなこの人が待ってる部屋にいやいや帰ってくる。そんな毎日を繰り返すんだと、本当にこの時は思っていたんです。

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不意に、彼が口をききました。
「やれよ」って。
普段聞いてるより数段低い声で。
もう、ひたすらに短い言葉。ここしばらくは、詳しいことの説明もないままこの言葉ひとつで終わらせていました。

私「やれってなにを」
彼「決まってるだろ、掃除だよ。なんでわからないのずっと言ってるよね」
私「決まってるって、エスパーじゃないんだからさ」
彼「いいから玄関の掃除やれよ」

ああ、また始まった…と重たい気持ちが押し寄せます。
しかし、逆らっても話しても押し問答だって分かってたし、しぶしぶ重い腰をあげ、スマホゲームに勤しむ彼をわき目に、玄関掃除を始め、数十分後に終了した旨を伝えました。

玄関を確認して、
「おい、何が終わっただよ、全然終わってねぇじゃん」
と怒り口調の彼。
「え?でもやったよ」
「いつも言ってんじゃん。中途半端なことすんなよ」
もう、ドがつくほど完璧主義なんです。理想が高い人なんです。
他にも言葉は交わした気がしますが、私が
「アナタが望むような完璧な掃除は私には無理だよ!どうしても嫌なら自分でやれば?命令ばっかりじゃん」
と言い返した時、彼の中で何かが切れたのでしょう。
「チッ…わかったよ」

部屋にある私の私物や布団を引っ付かんで玄関へ投げ飛ばしたり運んだり。むりやり掃除を敢行しました。
以前にも経験があったことですが、玄関扉に何かが当たるたびに、私の心も砕けて削れていく音がします。ガラスのような硬いものが、パリン、ジャラっ…と崩れ去っていく音が。
ああ、もうこれは黙っていられない。
スマホを録画モードにして、なおも玄関に、乱暴に物を持ち出す彼の背中を写します。
玄関に物を置いて振り返った彼とスマホ越しに目が合うと、眉がつりあがった彼が、ずんずん大股で、こっちにやってきて
「何撮ってんだよ!」
キレた彼が私のスマホを奪い取って、思い切り床に叩きつけました。
画面はグッシャグシャに割れ、画面は消え入るように真っ暗に。
見るも無残に壊されたスマホを拾い上げる私を尻目に彼は、何事もなかったかのように、イラつきをまといながら掃除へ戻ります。

その時は、ショックで胸がドキドキはしていたんですが、頭は不思議と澄んでいました。もうこんな奴、相手にできない。
割れてしまった普段使いスマホ、動画を見るだけに使っていたサブのスマホ、あと最低限の貴重品をリュックに詰め、彼が部屋へ戻った隙に、脇を通って玄関へ向かいました。もう一秒だってここに居たくない!
廊下をすすんで、バリケードになってしまった私物と布団を乗り越えようとした時、

「なに逃げてんだ!」
叫びに似た声が飛んできて、背負ったリュックごと引っ掴んで、後ろ向きに引き倒されました。
見下ろされながら、
「掃除しようとしたらそうやって逃げるよね、なんで?」
放たれた言葉にはおおよそ温度というものが感じられませんでした。
言葉をまた少し交わしたんですが、正直、心も身体も空っぽになってて。
「もうこの人は私の味方じゃないんだ」
と漠然と思いました。涙すら出ませんでした。
それ以上の攻撃はなく、彼が掃除に部屋へ戻ったのを機に、早足で玄関から外へ出ました。
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彼流の掃除の内容をざっくり説明すると、私の私物は全て袋に詰められ、玄関に並べられます。俺はこれらは要らないよと言うように。何度も掃除しろって前置きはしてそれでも動かなかったよね?と。
自分の布団とパソコン(もちろん私のパソコンです)で自分の好きな動画を流すだけのミニマリストな部屋へと変貌した、小奇麗でこざっぱりとした部屋。彼のための整理整頓されたチリすら落ちていない部屋。
私の痕跡を消したくてたまらないという思いが伝わってくるよう。
この部屋の所有者はわたしですけど?
要するに、彼にとっても私は捨てたい存在だったのでしょう。
タダ飯が食えて、勝手に煙草が補充されて、のみたい時にコーヒーが飲めて、好きなだけゲームができて、邪魔なものはひとつとてない、こざっぱりと掃除された、自分にとって大変に都合が良く、私がいない部屋さえあれば良かったんです。
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心臓はばくばくするものの、10分も歩くと緊張がとけて、瞬間涙がわっと溢れてきました。もう第三者を通して事を解決するしかない。あの部屋に、私の痕跡を消すかのような掃除の仕方をするあの部屋に戻りたくない。
そもそも私が借りている部屋で、彼はよそから転がり込んできたのです。居候で邪魔者は彼なのです。
もう一緒にいられない、居たくない。追い出してもらおう。そう思って警察に出向いて事情を説明しました。
幸いなことに婦警さんがいて、親切に対応してくれました。

事務的な調書に協力したのち、壊れたスマホを新しいものと買い替えまして、警察について来てもらい、複数人で彼と対面しました。
もう愛想が尽きたのでアナタとは別れること、猶予は明日。日曜日の間に退去してくれと伝え、私は実家に帰ることになりました。声がたまらなく震えましたが、人がついてくれているので、強気に言うことができました。
彼を一度、部屋の外に出してもらい、私が入れ替わりで部屋へ入ります。実家に泊まるのに最低限の荷物を持ちました。
私の荷物は、…やはり大袋に詰められ、悪意あることに、リッター入った化粧水を袋のなかでぶちまけたらしく、通帳の入った包みも、勉強に使っていたA4ファイルも、仕事で使うアレコレも水びたしでベタベタにされていました。
平素ならもっとショックでしたが、これより以前に、わたしの私物(本や読んでた漫画、画材など私の趣味のもの)を詰められる、は既にやられていたので、まぁ腹を立てたあの人ならやるだろうなと妙に納得できました。
もはや相手にするのがバカらしく思えていたというか、腹いせの仕方が幼稚で卑怯だなって。
でもやるよね。私のことも口では愛してると言いながら大嫌いだったんでしょ。それがこの「掃除」で象徴されているじゃないかと。

警察と彼との会話は興味もなくてあまり聞いていません。もっと取り乱したり、怒ったりするのかと想像はしていましたが、妙に素直というか。ただ、言葉の端々から「俺は悪くないんです、アイツが、あの女が全部悪いんです、俺はむしろ被害者なんです」という保身が見えてますます嫌悪感が湧きました。
「ねぇ、せめて連絡先は教えておいてよ…」
という日和った声が聞こえましたが、首を横にぶんぶん振り、エレベーターへ逃げ込んで下階へ向かいました。

気付くともう外は少しずつ、とばりが降り始め、暗くなり始めた時間帯。
今後の予定を、警察の方と確認して別れたあと、新しくピカピカになったスマホ…うわ卸したばかりで充電が本当にない、20%くらいしかない。

急に予定を組んで心苦しさはあったし申し訳なかったけれど、実家の家族へ軽く事情説明と、今夜帰るから泊めてほしいと伝え、公共の交通機関を使って帰ります。

帰りの電車に揺られながら、いろいろ考えました。
…普段の私なら、証拠になると思って、スマホのカメラを構えたりしただろうか。
実際に構えたのだから疑いようはないのですが、でも自分の意志じゃなかったようにも思えて不思議なんです。まるで、誰かに身体を動かされたような…。そんな不思議な感覚でした。

家族に彼との事を話すことになるのか、数年前に顔を合わせてのお付き合い報告もしたのにカッコ悪…、とは思ったのですが、縁が切れる喜びに比べたら、この苦心は大したことはありません。例の大病・コロナが流行ってからこっち、実家には一度も顔を見せに行けてないので、ちょうどよかったのでしょう。思えば、そんな遠くへ帰らなくても、近場で宿を取ったほうが安上がりだったのかもしれないのですが、この時はただ無性に、故郷と家族に会いたい、会わなければ!という使命感がありました。のちに、この判断に私は救われ、癒され、感謝することになります。

正直、うまく行き過ぎていて、私に都合がよく事が運ばれすぎていて、驚いているのもまた事実。えっ明日には絶縁を望んでいたアイツが居なくなる?こんなに先延ばしにしていたのに?

もっとひどい結果になるんじゃないかとおびえていたんです。
警察が手を貸してくれなかったら?「そんなの気のせいじゃない?」とか鼻で笑われるんじゃないか?会社の人にバレたら、減給?地方に飛ばされる?最悪離職になっちゃうんじゃ?
…全て、私が不安から見た幻覚で、杞憂でした。

ともあれ、涙は出ました。渦のど真ん中にいきなり放り出された気持ちです。
ショッキングではありましたが、縁が切れるキッカケになってくれたと、むしろ清々しい気持ちさえあります。
縁切りは悲願でした。
けれど、自分では動けない、どうせ無駄だと思いながらズルズル引き伸ばしていました。だからこそ、神頼みをしに行って、他力本願で叶えようとしていました。
その姿勢がまず駄目だったから、神様は手を貸してくれなかったんだろうなぁと、今では思えます。

人生の渦の真っ只中!ぐるんぐるん掻き回されている感覚が抜けないし、目頭と頭の後頭部を締め付けるような苦しさにみまわわれていて、生き霊でも飛ばされてるのかと思うくらいですが、カタカムナで根っこ鍛えられましたから、身体はしんどくても、
心にまでは、
魂までは傷ついていないぞ!の感覚が確かに感じられる。

飛び込んで乗り越える力が付いたから、キッカケをくれたのかなぁと思えてなりません。
やはり何か、おおきな何かが側で見守ってくれている感じがします。ありがとう、カタカムナの神様。これで彼との縁がきっぱり切れるといいなぁと、強く思います。


そんなことを考えながら、相談をしたひろのさんにも報告メールを打ちます。
「こんにちは。先日相談していた件ですが、動きが本日あったのでご報告いたしますーー…」

2024.0508

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