つがうとは

最初に文字がうまれた。
文字はあなたの指先から紡がれた。

次に本がうまれた。
本はあなたの掌にのっていた。

最後にわたしがうまれた。
わたしはあなたの本をめくっていた。

そうしてふたりの時間は巻き戻っていく。
どんなときもどんなときもどんなときも、ずっとずっとずっと。

二本の脚を、二本の腕で支え、折れそうな腰を曲げて、砂漠を歩く。
躓き転んで血が出た膝に、しみこむ涙と溜息と。

声が聞こえないくらい離れていても、耳が触れ合うほど抱き合っていても、この肌は溶けやしないから、平気。
あなたの解けたこころ、わたしの解けたこころ、その糸を絡めて、肌に残るほど抱きしめて記憶したい。

そしておとずれる、暗闇と忘却。


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