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本当に似合う服って何だろう?

私は服が好きだ。
中学3年生の頃にメンズノンノを読んでからというもの、本格的に服が好きになった。それから毎月、メンズノンノやポパイを読んでファッションの勉強をしていた。しかし掲載されているのはハイブランドのものが多く、中学生、高校生の私にはとてもじゃないが買えなかった。

中学生の頃、おばあちゃんの古希のお祝いがホテルであった。母親は私に5,000円を渡し、「これで服を買ってきなさい」と言った。私は自転車に乗り、古着屋さんに向かい、Leeのヒッコリー柄のカバーオールを買った。母親はなんでそんな服を買ってきたの!と言った。そのカバーオールを着て撮った家族写真が今も実家に飾られている。当時の私に似合っていたのだろうか。

高校生になり、部活にも入部せず、アルバイトを始めた。今振り返ってみると、自分でお金を稼ぎたい、稼いだお金で好きな服を着たい、好きな格好をしたいと思ったのであろう。

アルバイト代を貯めて初めて自分で財布を買った。泣く子も黙るルイヴィトンの長財布だった。定番物ではなく、キャンバス時のしかもピンク色だった。当時の私に似合っていたのだろうか。

高校生の時は校則で靴は自由に好きなものを履いてよいことになっていた。私はコンバースのローカットを買った。ピンク色だった。しかも蛍光ピンクだった。当時の私に似合っていたのだろうか。

高校生の修学旅行ではナイキのローカットのダンクを新調していった。カラーはピンクではなく、黒白黄色の元気なカラーリングだった。私は1足に対して靴ひもを2本通した。両足で計4本の靴ひもを通していた。靴ひもがあまりにも長く、ダラダラしているため、修学旅行中に何度も何度も自分で自分の靴ひもを踏み、少し先に小走りしては靴ひもを結ぶ。それを何度も繰り返した。当時の私に似合っていたのだろうか。

高校生の高学年になるとクレジットカードのリボ払いを利用してハイブランドの服を買うようになった。当時はディーオールオムやクリスヴァンアッシュが流行っていた。ドメスティックブランドでは、ミハラヤスヒロ、ユリウスなど、個性的な服を着ていた。夏に冬の服を予約、冬に来夏の服を予約するという流れだった。スニーカーの縦半分がコンバース、残り半分が銀色の靴を履いていた。当時の私に似合っていたのだろうか。

大学生になるとますますハイブランドにはまっていった。パリコレやミラノコレクション、ニューヨークに東京コレクションをチェックするようになった。将来はファッションデザイナーになることも考えた。高いブーツをリボ払いで買った。学校に履いていき、友達に自慢した。その友達が私のブーツを遊び半分で踏んづけた。私は笑いながら「やめろよー!」といったが、内心はとってもショックだった。汚れたことが。

ここで転機が訪れる。大学3年生の時、東南アジアへバックパッカーの旅に出た。さすがにハイブランドの服は汚れると困るので、ユニクロで白Tを仕込んでいった。靴はクロックスにした。ただたくさん歩くならデニムもいい色落ちするだろうと思い、レプリカブランドのノンウォッシュデニムも持っていった。念のためにあまり履いていなかった安い短パンも持っていった。

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現地はとにかく暑かった。ノンウォッシュデニムなんかとんでもない、着るわけもなく、すぐにお荷物になった。それに比べてユニクロの白Tは役に立った。安いので汚れも気にしなくていい。スコールもいっぱい降るので、クロックスも気にせず履けて最高だった。また現地では観光客向けの面白いTシャツが安くたくさん売っていた。セブンイレブンのロゴやミニクーパーが描かれたいた。現地ビールメーカーのロゴTみたいなものは現地の方とも仲良くなれるのでたくさん買った。上は現地ビールメーカーのロゴT、下はなんお変哲もない短パン、靴はクロックス、当時の私に似合っていたのだろうか。

日本に帰国し、前みたいにハイブランドの服屋さんに行ったが、それからというもの、ハイブランドの服を買うことはなくなってしまった。なぜだろうか。気づいたのである。自分に似合っている服を。

似合っている服というのは着る意味、目的を自分自身で持っていて、また他人に優しくなれる服なのだ。

何のためにハイブランドの服を着ていたか。格好いいと思ってもらいたかったからだ。ただそれだけだった。

当時の自分がハイブランドの服を着ていて、前からアイスクリームを持った男の子が走ってきた、ドン!と私にぶつかったとき、まずはじめにその男の子の心配ができるか、「大丈夫?」と自分の服の汚れを気にする前に声を掛けられるか。

当時、私自身に自問自答してみた。絶対に「あ!高い服なのに~泣」と思ってしまうだろうと思った。

そうだ、今の私にはハイブランドの服は似合っていないのだと気づいた。それからというもの、安くてダサい服は着たくないが、ハイブランドの服は似合っていない。、、、服を選ぶことができなくなった。

そして今、1児の父親となり、本当に私に似合った服を見つけることができた。夏はヘインズのビーフィーTシャツに下はパタゴニアのバギーズショーツ、靴はチャコのスポーツサンダルだ。夏以外は上はチャンピオンのパーカーに下はディッキーズの874だ。

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そう、いくらアクティブに子供と遊んで汚れても、ドロドロの子供にだっこやおんぶをせがまれてもなんの躊躇もない。服の汚れなんか気にせず遊ぶし、おんぶやだっこもする。それでいいのだ。似合っているかいないかなんて周りが決めることじゃないんだ。

いつかロレックスが買える日は来るのかな。

おわり

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