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国語と数学。


好きな教科を訊かれたら、「国語と数学」といつも思っていた。


文系と理系の取り合わせのようで、変な感じがするだろうか。
でも本当に好きだったのだ。国語と数学(算数)が。



国語は、漢字の書き取り以外は大体好きだった。音読をするのも好きだったし、熟語や慣用句の問題に答えるのもそんなに難しく感じていなかったと思う。「◯◯文字以内で答えよ」という記述問題では、いつも文字数ぴったりで書いた。大体、句読点や接続詞で文字数調整をするのだ。
一瞬、辞書を読むのにもハマった。本当に一瞬だったけれど。読むというか、調べ物をしたついでに同じページにある言葉を見て、良さそうな言葉があったら自分の中にストックしていた。そうして出会った言葉もある。

教科書に掲載されている作品は、論説文よりは物語文の方が好きだったけれど、論説文もそれなりに読み解いていたと思う。アーチ橋の仕組みとか。


「夏の葬列」という作品の感想文を書いて、国語の先生に褒められたのを今でも覚えている。中学の時だった。
この「夏の葬列」という小説は、教科書の中でも後味の悪いトラウマ作品として有名なのだが、そんなことがあったので私は本文の内容よりも自分で感想文を書いたことの方が記憶に残っている。

これは調べても出てこなかったのだけれど、「夏の葬列」の後日譚のような話を読んだ。それは教科書には載っていないもので、先生が文面を印刷したプリントを配ってくれた。その後日譚も踏まえて感想文を書いた。
後日譚の中で主人公の母が亡くなっていて、人の死という“喪失”を、主人公が今度は冷静に受け止めていると思った。そのことを書いたら、「そこに気づけるのは流石ですね」と先生から言ってもらえて、なんとも誇らしい気持ちになった。授業中ではなく、休み時間に廊下ですれ違ったようなタイミングだったのもなんだか嬉しかった。


数学は数学で好きで、算数の時から好きだった。
新しく習う単元の問題の解き方を考えるのが楽しかった。あの頃の私には予習という概念はなく、今思えば、いつも未知と相対して心躍らせていたのだから凄いなと思う。(ちなみに予習はズル、くらいに思っていたほどである。)

図書館にドラえもんの算数だったか数学だったかの本があって、そこでつるかめ算に出会った。私の記憶では、学校の授業でつるかめ算は習っていない。(同じ考え方の単元はあったのかも知れないが)
だからドラえもんの数学の漫画で読んだ時に面白い!と思った。こうやったら、足と頭の数から何匹ずつか分かるんだ、と、つるかめ算の問題を解くのが楽しかった。


定期テストでは、誰よりも早く問題を解きたかった。主張はしなかったけれど、この教室の他の人よりも早く解きたいという気持ちがあったと思う。両面プリントされたテスト用紙は、裏面の大問の方が腕が鳴った。そんな時代が私にもあった。


問題解決が好きなのだと思う。それは今でも変わらない。仕事でも謎解きでも、与えられた問題の解法を考えて取り組むのがきっと好きなのだ。そして解決できた時が何より嬉しい。
国語にも、そういう側面がある。漢字の読み書きのような暗記以外は、必ず文章の中に手がかりがある。

それから、表現することが楽しかったのかも知れない。音読や感想文を通して表現することがきっと楽しかったし、算数でも、自分のアイデア(解法)を発表するのは、自己表現だったかも知れない。少なくとも、自己主張であったのではないか。


国語と数学が好きだった。けど、好きで楽しかったのは中学までで、高校からは全然勉強ができなくなった。というか、元より私は勉強家ではなく、勉強する習慣が身についていなかった。なので必然的についていけなくなったと言う方が正しい。できていたのは現代文くらい。(高一の時に受けた模試で唯一、難関大学合格レベルの判定を取れた。)

基本的にテストは赤点未満の点数しか取れなくなったし、数学などは100点満点のテストで1桁の点数を取ったりしていた。その頃の私は教室に行くことがあまりできておらず、テストも度々保健室で受けていたのだが、保健室で目の前にした数学の問題があまりにも分からなくて泣きそうになったこともある。ちょっと泣いたかも知れない。分からないことと、分からない自分への情けない気持ちが、胸にじわーっと広がった。


学問を、ずっと好きで愛していられる人が羨ましいな、と思うことがよくある。コンプレックスの裏返しで、数学をテーマにした小説を何作か読んだこともある。読みながらわくわくもしたけれど、物語の中の登場人物にも、その小説を書いた作者にも嫉妬した。


でも、私にも学問を楽しめていた時はあったのだと、昔を思い出して思うことができた。残念ながら、長く、深くは愛せなかったけれど、それでも確かに好きだった。好きな教科は何だった?ともし今訊かれることがあったら、私はやっぱり「国語と数学」と答えるだろう。

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