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あと10年 <001>

僕は、今までの人生で死のうと思ったことは一度もない。多くの人がそうであるように、元気で長生きしたいと考えている。でも、これから10年後、僕はいないかもしれない。

こんなプロローグでは何事かと思うだろうが、愚痴の一つも書きたくなったので、久々に筆をとった次第である。これからするのは、聞こえはちょっと暗い話になるだろう。なぜそんな独白を一般公開するかといえば、自分に向けた決意表明みたいなものなので、あまり本気にせず、タチの悪い冗談として聞き流してほしい。

どこにでもある、実にありふれた話だ。
今の仕事を続けていくにあたり、ずっと限界を感じていた。人の少ない部署ということもあり、役職が上がっていき、気づけば管理職。能力もないのに高い理想を求められ、厳しい評価に晒されている。問題が起きれば、原因が他に考えられても、ほぼ自分の部署の問題になり、部下たちの評価も下げられる。その背後にはそれぞれの生活があり、それを預かる責任がある。誰も人の人生を背負うことはできないが、それでも平常心でいられるほど鈍感ではない。自分の判断で進めた仕事も覆り、協力会社にも迷惑をかけた。インボイスや社会保険範囲の拡大、資材、人件費、光熱費、物流、その他あらゆる価格が高騰していき、これもうちの会社に限った話ではないだろうが、昨年度予算を大幅に超えることになった。

部長級の会議では毎回のように叱責され、会社の売り上げが下がった事態に対し有力な対応方法を提案できず難詰された。先の評価はボロボロ、降格のみならず、部の存続自体が危ぶまれる状況だ。自分が無能なばかりに、本当に申し訳がない。経営者と現場からの声に板挟みとなり、自分は絵に書いたような役立たずを曝している。

毎日のように自己嫌悪に苛まれている。劣等感で狂いそうになる。心がざわざわして、好きな漫画も映画も平常心では観られない。休日も心休まらず、唯一日帰り温泉に入っているときは会社ケータイから解放された。この1年、仕事で良かったことは何一つ起きなかった。
責任問題で何度も会社に謝罪した。部下にも謝った。クレームの矢面に何度も立った。こんなに頭を下げた1年もなかったと思う。もうこれ以上の迷惑はかけられない。

会社を辞めよう。

この判断に至る条件は1つ。
会社を辞めることは、自殺することに近い決定だ。つまり、働くより死ぬほうがマシになって初めて成立する。これはオーバーな話ではない。

当たり前のことだが、収入がなければ生活ができない。日本は貧困時代に突入し、多くは死ぬまで働かざるをえない。人は、いつ自分の寿命がくるのかわからないからそうなる。だったら、あと10年だけは生きると決めて、あと10年生きるに必要な収入を目指すなら、今の会社を辞めることも不可能ではないと考えるようになった。

祖父は僕が小学生のとき、母は僕が高校生のときにガンで他界した、父は僕が赤ん坊のときに蒸発、祖母は認知症だったが99で大往生だった。
幸か不幸か、僕にはもう家族がいない、気ままな独り身だ。僕が死んで困る人は誰もいない。たった一度の人生だ。10年だけでも、自分のために生きようと決めた。

これは、残りの人生をどう生きていくかの考えをまとめた記録である。

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