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AI. どこまで進化するか、残存職業と我々の市場価値

こんにちは。にだです。年末に以下2冊を読みました。
取り扱っている主テーマは異なるのですが、新井紀子さんの「AI vs 教科書が読めない子どもたち」では本質的に数学・ロジック・統計・確率・分析をベースに機能するAIの限界とその限界に対して人類が持つ価値について、茂木健一郎さんの「眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話」で電気信号で指示を出すことが判明した脳の基本的機能の一方でその電気信号のロジックは全く解明できない、という限界とその中で人間の「閃き」はAIに代替できない人類の価値であるという点。2つ意味することに共通点を感じたのでブックレビューを書いてみました

1.眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話

テレビなどでもお馴染みの茂木健一郎さんの著書。
図解付の脳に関する基礎知識や脳の部位毎にどういう活動をしており、日頃の我々の行動や思考に影響しているのかを分かり易く解説されています。今回の記事はAIとの対比ということなので脳に関する詳細説明部分に関しては割愛しますが、面白いなと思ったのは以下の点です。

①セレンデビリティ=偶然幸運に出会うことの根底にある
・Action 待っているだけではダメ、行動を起こす
・Acceptance 行動の結果見えた新しい風景、物事、考え方を受け入れる
・Awarenesee 気づきの機会を多くもつ
これらは脳の活性会にも有効であり、脳に刺激を与えてくれる。洋書での読書をトライしている「Luck is No Accident」でもラッキーだったね!運が良いね!と周りから言われる人の大部分には偶然ではなく、日々の行動・考え方によって形成された各々の知識経験の「点」がある日なんらかのきっかけで線になる、と具体的な調査結果として述べられています。Apple創業者のスティーブジョブス氏の有名なスピーチのConnecting the dotsのようです。

②脳の記憶方法
短期記憶と長期記憶、長期記憶内の陳述記憶と非陳述記憶、更に陳述記憶内のエピソード記憶と意味記憶。エピソード記憶のように全体のエピソードで覚えたり、なんらかの意味合いを持たせることで記憶の定着がし易くなるなるというもの。今米国公認会計士の勉強を私はしていますが、まずは各科目の全体構造を理解し、どのトピックスとトピックスが相互に関係しているのか、このルールはどういう背景で制定されたのか、など紐つけて覚えたことは忘れ難いと実感しています。

③脳に安心を


いつでも戻れる人や場所があるという安心感が、新しいことに挑戦する意欲を生み、感情のシステムの働きを活発にします

と著書内でも触れられていますが、安全基地を脳にも用意してあげることが大事と述べられています。これは仕事でも何か新しいことにチャレンジする際によく出る「反対勢力」「現状維持勢力」「余計なことせずやるべきことやれ勢力」などその組織に心理的安全性が担保されていないとせっかくの斬新なアイディアや取り組み、若手の台頭なども無駄になってしまいます。こういうことが繰り返し起こると脳も安心感を失ってしまうのかもしれません。マネージャーとして気をつけようと思うきっかけになりました。上述したのは外部的な要因ですので自分だけでは変えることが難しい側面がありますが、著書の中では「マインドフルネス瞑想」を1つの脳への安心を与える方法として取り上げられています。

不安が消える「気づきの呼吸」として5〜10分を1日2セットほど。もっとも目が冴えている時間帯にいすにまっすぐ座り、体の力を抜いて呼吸に集中。
思考、感情、感覚を観察トレーニング。

前置き長くなりましたが本題のAIに関して、これは既知の知識なのだと思いますが、AI開発には今のステージに至るまで3つの段階に分けられると解説されています。これは新井紀子さんの著書でも同じことが触れられています。

第一次AIブーム:1950〜1960年代。サーチと推論がメイン。ダートマス会議において「人工知能・AI」という言葉が登場。この時代のAIは、ゲームやパズルを解いたり、迷路のゴールへの行き方を調べるなど。しかし決まった枠組みの中でしか動かなかったため、1970年代に1回目の「冬の時代」に突入
第二次AIブーム:1980年代。知識表現がメイン。家庭にコンピューターが普及。このとき、エクスパートシステムという、専門家の知識をAIに取り込んだうえで推論することで、AIが専門家のように振る舞うプログラムが開発された。しかし、知識を教え込む作業が非常に煩雑であったため、1995年ごろから再び冬の時代に
第三次AIブーム:2000年代〜。機械学習。ビックデータという大量のデータを用いることでAI自身が知識を獲得する「機械学習」や、入力データから自ら特徴を判別し、特定の知識やパターンを学習する「ディープラーニング」が登場。これにより社会や暮らしで実用的なシステムが続々と登場している。

今は正にディープラーニングでどこまでAI技術が進化するのか、というステージでSiriや囲碁AI、チェスAIなどパターンを学習させる、自動運転で画像認識させるいずれも膨大なデータを機械に読み込みさせることが可能になった=ビックデータことが1つの大きなターニングポイントとなっています。これは後述する新井紀子さんの著書で触れますがあくまでもこれらの学習は数式やコードを元に一定のロジックを組み込んで学習をさせることになります(つまりこのロジックが限界値となる)。

そして人間の意思や感情、閃きを生み出す脳は人工的に生み出すことができない(未だに脳の細胞ひとつでさえ、人間は生み出すことができていない)そこに限界が存在するというものです。10年以内にAI技術に代替される仕事としてオックスフォード大学の研究・調査レポートが紹介されていますがこちらは新井紀子さの著書でも触れられていますのでそちらに譲ります。

2.AI vs.教科書が読めない子どもたち

私が今住んでいるイリノイ州のイリノイ大学を卒業されていることで興味をもった新井紀子さんの著書。AIプロジェクトの「ロボットは東大に入れるか」を率いるディレクターを務められた方で本書でも東ロボ君のセンター試験トライ、東大合格はできるか!?というプロジェクトを通じて気づいたAI技術の限界と、その限界を踏まえた上で今後人類に求められる価値、その価値を今の大人・子供達はどの程度基礎能力として身につけているのかという流れで論じられておりとても分かり易い内容になっておりAI素人の私でもスムーズに読み進めることが出来ました。本書は冒頭記載のメインポイントが元々の主題ですので前置きは割愛します。

①東ロボ(東大合格を目指すロボットプロジェクト)が到達できた限界
偏差値57の壁。これはMARCHレベルの大学で特定の学科は合格になるレベルではあるものの東大合格にはほど遠い。それは機械学習で組み込んだフレーム、ロジックだけでは試験問題の読解または常識を前提知識として求められる解いへの理解が不十分であり限界があるというもの。

例えば
・警報機は絶対に分解や改造をしないでください
・未成年者は絶対に飲酒や喫煙をしないでください

この例文では主語が「警報機」「未成年者」とAIは判断するが、警報機が主語にならない=警報機は何かを分解したり改造したりしないと我々は常識で判断できるがAIの文法読み込みでは限界が存在する。

またAI技術は「意味」を理解することは厳密にはできない、例えばSiriに近くにあるイタリアンレストランであれば所在地とそこからの距離、イタリアンレストランというキーワードで検索をかけるロジックが組めるが「イタリア料理以外で」や「まずい・おいしいイタリアン」というとその言葉の定義・意味が個々人で異なるためロジックを簡単には組めず、画一的な回答をすることがSiriの限界になる。

②オックスフォード大学の研究レポート

【10〜20年後になくなる職業トップ25】
・電話販売員
・不動産登記の審査・調査
・手縫いの仕立て屋
・コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析
・保険業者
・時計修理工
・貨物取扱人
・税務申告代理人
・フィルム写真の現像技術者
・銀行の新規口座開設担当者
・図書館司書の補助員
・データ入力作業者
・時計の組立・調整工
・保険金請求・保険契約代行者
・証券会社の一般事務員
・受注係
・(住宅・教育・自動車ローンなどの)融資担当者
・自動車保険鑑定人
・スポーツの審査員
・銀行の窓口係
・金属・木材・ゴムのエッチング・彫刻業者
・包装機・充填機のオペレーター
・調達係(購入アシスタント)
・荷物の発送・受け取り係
・金属・プラスチック加工用フライス盤・平削り盤のオペレーター
【10〜20年後まで残る職業トップ25】
・レクリエーション療法士
・整備・設置・修理の第一線監督者
・危険管理責任者
・メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワークー
・聴覚訓練士
・作業療法士
・歯科矯正士・義歯技工士
・医療ソーシャルワーカー
・口腔外科医
・消防・防災の第一線監督者
・栄養士
・宿泊施設の支配人
・振り付け師
・セールスエンジニア
・内科医・外科医
・教育コーディネーター
・心理学者
・警察・刑事の第一線監督者
・歯科医
・小学校教師
・医学者
・小中学校の教育管理者
・足病医
・臨床心理士・カウンセラー・スクールカウンセラー
・メンタルヘルスカウンセラー

「残る仕事」に分類されているのはコミニケーション能力や理解力を求められる仕事や、柔軟な判断力を求められる肉体労働が多い印象です。つまりAIが不得意とするところのこうどな読解力と常識、加えて人間らしい柔軟な判断が要求される分野であり、これは茂木さんが記載している項目と合致していると思われます。

③小・中学生の読解力低下
AIの不得意な分野=弱みは、応用が利かないこと、柔軟性がないこと、決められた(限定された)フレーム(枠組み)の中でしか計算処理ができないことが著書の中で挙げられておりつまりAIには「意味」そのものを理解する能力が現時点ではないというのが最も大きな限界となります。ではこの意味の理解、深い読解を我々人間は貴重な価値・能力として備える訓練ができているか?という問題が定提起されています。これは試験問題で問題文に出てくる数字を使ってなんらかのフレームや式にあたはめる勉強の仕方がその代表例でこれはAIが最も得意とする分野=将来的に代替されてしまう知識や能力となります。しかも人間より遥かに処理速度が速くミスが少ない。

例えば設問として「メジャーリーグの選手のうち28%はアメリカ合衆国以外の出身の選手であるが、その出身国を見ると、ドミニカ共和国が最も多くおよそ35%である」以下のパイチャート①〜④から正解を選びます。

正解は②ですが中学生の正答率12%、高校生28%という衝撃的な数字になっています。④を選んだ人は「以外の」「のうち」といった語句を読み飛ばすか、その使い方がわかっていないのどちらかまたはその両方であると分析されています。

この手の読解力というのは学校のみならず社会の場でも必要になります。日々の仕事のメールの読み取りと理解、相手とのコミニケーションから何を読み取るか。また各種規制文章、税金の納税方法の説明書き、これを正しく理解・読解できるか、というのはある種基本であり社会に出ると試験で通用していた数式丸暗記は通用しなくなります。勿論仕事にフレームワークやある程度の型があるわけですが、当然これしかできないのであればAI技術に代替されてしまいます(毎月〇〇の資料から〇〇の数字を抜粋し〇〇にまとめるというような作業)。大事なのはこの先にデータや資料を用いて「判断」や「アイディア・解決方法」を考える習慣と訓練が大事になります。

3.最後に

私も総合商社で働いていますが、この「決められた枠組み」の中でしかその機能・価値を発揮できない人を多くみます、ある意味では「なんでこのやり方にしたの?」に対して前任もそうしていたので、のような反応は決められた枠組みの中で与えられた課題の意味を読解せずにただこなしただけ、ということになり将来的にはAI技術にとって代わられてしまうかもしれません。それこそ事業会社経営の中で投資やM&AのプロセスでファイナンスでのValuation、DDといった作業は基本型があれば誰でも出来てしまいます。投資判断における目利き、シナジーを検証するために多角的にビジネスモデルを生み出す発想、といった能力がより求められていくことになるな、と2つの書籍を通じて学びました。

何か皆さんも最近読んだ本、過去に読んだ本で面白いものがあれば是非教えてください!それではまた。







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