nicoの星宙予報 2023 蟹座 ~今こそ「タラレバ」を手放し、持たざるわたしで有限をつくる
2023年の夏至図 ~個を確立する、作るとは
夏至とは、春分ではじまった物事や動きが、ひとつ深まりを見せるときです。
前回の春分図読みで、「こうした問題が一年の間に起こるかもしれない」と挙げたものが、この三ヶ月で一気に凝縮されてきました。その流れを受けて、これからの夏の季節・三ヶ月間をどんな意識で過ごせばいいのか。
参加者の多くが注目していたのは、春分から引き続いているアセンダント(ASC)牡羊座、そして何と言っても5ハウスの強調でした。
参加者の皆さんからは、このようなさまざまな意見が出ました。今回は、この問いに答えるかたちで、nico の解説が進めていきます。
春分で生じた事象は、夏至で深まりを見せる ~AIへの規制と少子化問題
nico: 春分図では、魚座土星の問題として、真実が把握できなくなっていくことをお伝えしました。
魚座は柔軟サインの最終形であり、知識・知恵の集合体というアーカイブ的な意味をもちますが、いま話題のChatGPTをはじめとする AI=人工知も知識の集合体であり、非常に魚座的といえるでしょう。
近年、フェイクニュースが問題視されているように、こうした情報を適切に理解、解釈して活用できる力(リテラシー)がないと、これからますます生きるのが難しくなっていく。
その柔軟サインの象徴である「知識」の扱い方に対して、大きな規制が必要になってくるだろう、というのが前回の話でした。実際に、この三ヶ月の間、ChatGPTに対する規制についての議論が一気に上がってきましたね。
今後、情報がどんなかたちで私たちの現実に役立つのか、それとも混乱を招くものになるのか。土星が魚座に入ってきたことで、元々潜在的にあったテーマが浮き彫りになっている。
そして、これらを有効活用するために、いわゆる規制も必要になってきた。そういう動きが出てきたといえます。
また前回、冥王星が水瓶座に移動するにあたり、静かなる有事として、人材不足と少子化問題を上げました。
戦争と同じぐらい大問題であり、これから少子高齢化の日本が本当に立ち行かない中で、若者が活躍できる仕組みはどういうものが有効だろうか。
そのとき、ひとつの考え方として、これから手広く拡大するような経済を作るのは難しい中で、どう縮んでいけばいいのかという、「戦略的に縮む」という提案をしました。
実は、今回の夏至図のテーマとなるアセンダント(ASC)の牡羊座に、そのヒントが示されていると考えています。
アセンダント(ASC)牡羊座の意識とは
nico: では、アセンダント(ASC)の牡羊座を考えていきましょう。
12サインの意識は、牡羊座からはじまり魚座までの間にどんどん拡大されていきます。最終サインの魚座では、大きな夢なのか、ロマンなのか、ビジョンなのか、あらゆる情報がワーッと膨んだ状態になっている。それらが、牡羊座に入ったとき、(風船の空気が抜けるように)いきなり縮んでしまう。そういうイメージで捉えてもらえるといいでしょう。
いま土星が魚座にいますね。魚座でワーッと大きく広げられてしまったあらゆるものが、この後、牡羊座で現実に引き戻されていく。なぜなら、牡羊座は活動サインのテーマであり、自分に過不足のない、十分なサイズ感を作らなくてはならないから。
「浦島太郎」をイメージしてください。
目が覚めたら爺さんだった、その感じは、日本の失われた30年に近いとも言えます。大きく膨らんだ成長の世界から「日本はもう成長することがありませんよ」と、現実に引き戻される感覚です。
そのもう一回、現実に引き戻されたときに、私たちには何があるのか、それが本当に問われていく時がきているのです。
魚座の理想「タラレバ」を手放し、牡羊座の「有限化」へ
nico: ひとつの例をご紹介しましょう。鑑定をしていると、こんなケースがよくあります。
病気が良くなったら…
収入が安定したら…
親がこうなったら…
このような「タラレバ」の話は、実に魚座的です。「こうなったら…」という理想を語りたがる。でも、現実には「ない」のだから、その状態からしか、はじめることはできない。
病気は良くならない
収入は安定しない
親も変わらない
つまり、今が変わらない、もしかしたら、さらに悪くなっても計画できることはなんだろうか。
魚座と違って牡羊座に求められるのは、リアルな世界で、いまある現実を前に組み立て直していくこと。もうこうなったら、誰もが「タラレバ」を完全に手放さなくてはいけない。牡羊座の厳しさというのは、そうした”有限性”があるということです。
例えば、芸術家の草間彌生さんは、現実的な有限性があるからこそ、生き延びていられる。自ら大きな太い黒枠を作り出し、その枠という有限の中でドット(点)を描き続ける。
枠という有限性を作り出すこと、これが牡羊座の生き延び方であり、サバイバルの方法です。
だから、どんなに小さくてもいいから、まずは自分の中で「有限」を作ること。それができないと、いつまでも魚座のタラレバに引っ張られてしまうのです。
「持たざる」という感覚が生み出す力
nico:これからの3ヶ月は、「有限化」する。まずはここをスタートにしておく。
最近、やっと「失われた30年」というフレーズが聞こえなくなってきました。代わりに出てきたのは「持たざる国」という言葉です。持ってないんです、もう無いんです。
持たざる国で、何も持たずに生まれてきた子供のように「私には何もない」。物資もない、エネルギーもない、テクノロジーも大してない、強い日本はない。
この「持たざる」という感覚からじゃないと、牡羊座はスタートできません。ないない尽くしのところから、「自分は何がしたいのか」という、そこにはじめて有限化のエネルギーが生まれてくる。無いから作っていこう、創造していこう、獲得していこう。それが、これからの日本の生きざまになっていくといいと思います。
夏至図で強調されている牡羊座と5ハウス、月や太陽。そして、今日の冒頭で皆さんから挙がっていた問い「『個』を作るにはどうしたらいいのか」に対する答えのひとつは、「持たざる」という感覚を持つこと。
そしてもう一つは、自分自身に制限をかける、有限化していくこと。有限化する=あなたが出来ないことを決めると、そこから何ができるかがやっと見えてくる。
その時、何にもない中から「どうしてもこれはやりたい」「どうせならこれをやりたい」が出てくるまでは、待つしかないかもしれません。
「有限化」のひとつの結果、秋分に向けたイメージ
nico: 今朝のニュースで、ヤマト運輸がメール便事業を日本郵政に委託する話が出ていました。企業にとって大きな決断で、英断といってもいい。
これは、まさに先ほどの「有限化」のひとつだと思います。5ハウスの火星・金星の強調が、(火星のルーラー牡羊座の)「有限化」を生み、(金星のルーラー天秤座の)補完関係につながるという流れを見ることができる。
つまり、「有限化」したことで自分たちに「できない」ことが分かり、「できない」からこそ自分たちで行うのではなく、おのずと「できる相手」との協力関係が生まれてくる。
これから三ヶ月間は、こうした委託や業務提携などのニュースが増えてくるだろうと思います。
国も同様で、日本も(牡羊座の)「持たざる」を知り「できない」という判断があるからこそ、(天秤座の)パートナーシップの意識が成立しうるわけです。
これは死活問題ですから、誰彼構わず手を組むわけにはいかない。「できない」から、アジア諸国と絆を強くするのか、EU諸国とどう付き合うのか、アメリカとどう組むのかという選択が生まれてくる。そうした協力関係をつくるための実際の動きは秋分くらいに任せられるといい。
ちなみに、マイナカードは有限化に失敗した例だと見ています。自分たちのできる、できないを見定めずに「できる」という方向で進んでしまったが故に、現場にしわ寄せがいくばかりになってしまっている。
先ずはここまで「『個』を作るとはどういうことか」について十分に理解してきました。さらにここから、「個」の力を得ることで生まれる強さを5ハウスの強調から読み解いていきましょう。
5ハウスの強調に見る経済の動向~投資の引き込みによる経済効果
nico: では、少し経済の動向も見ていきましょう。最近、政府が発表した「骨太の方針」(「経済財政運営と改革の基本方針2023:2023年6月16日閣議決定」)では、海外からの直接投資を積極的に呼び込み、経済活性化を図る戦略が打ち出されています。現在、46兆円の外国資本による直接投資を2030年には100兆円までを目指す、というもので、これは非常に5ハウス的です。
5ハウス=「個」の力を得るということは、その魅力を知ってもらい相手に投資をさせる、相手を引き込む力ともいえます。
しかし、日経の社説にあるように、これまで日本は、人件費や不動産などのビジネスコスト、投資金利などを理由に、長らく海外の投資家からその対象とはみなされてこなかった。
今回、国がこうした方針を出しているということは、これから企業/個人においても同様の意識が求められるということ。
こうした金銭的な投資だけではなく、集客を増やす、商品を買ってもらう、プレゼンテーションして仕事が回ってきやすくなる、なんでもいい。どうやったら自分の魅力を理解してもらえるのか、そうした努力が誰にとっても必要になってくるでしょう。
土星の象徴、法やシステムが機能しづらい、その理由
今回の夏至図で、参加者が見逃していた注目すべき点がありました。6ハウスと12ハウスのインターセプトです。その隠されたハウス・12ハウスに土星が滞在している。社会の動きを見る上で土星は欠かせないものであり、この点について意外な見解が語られました。
nico: 最後に触れておきたいのが、この土星が12ハウスでインターセプトしていること。これは国/企業/個人において大きな意味を持つだろうと思います。
インターセプトしている、これはどういう意味を持つのか。単純に言えば、土星が機能しづらくなっている。つまり、法律やルール、制度やシステムがうまく働かない、政府や企業、個人においてもやり方や仕組み、そういうものが全然機能していない、と感じやすい状況が続くということ。
これは、非常にもどかしいですよね。
自分自身が有限化して形を作ろうとしたところで、最終形にたどり着けない。このもどかしさは、とても大事にしてほしいところです。
もう一度、活動サインの流れをおさらいしましょう。牡羊座の最終目標は、同じ活動サインの頂点・山羊座の土星。牡羊座で有限化することで、天秤座のパートナーシップが出来て、山羊座で自分自身が一番長く続けられるサイズがわかり、きちんと持続可能な仕組みにできる。
こうした本来の流れに対し、土星がインターセプトしていることで、「そのやり方が本当にいいんだろうか」という感覚の希薄さが、これからの三ヶ月は非常に出てくる。上手くいかないことが前提で考えておいた方がいい。
この、なぜ上手く機能しないのかを考えるうえでヒントになるのが、土星そのものの性質ともいえる「当事者としての感覚」が求める「必要(ニーズ)」です。これは、土星を支える個人天体が水星―金星であることからも明らかです。
当事者の人々が、自分の必要として求める声を上げ(水星)、平等や対等に話し合いが行われ(金星)、しっかりとニーズが理解されることで、ルールや社会の方向性がわかってくる(土星)。
水瓶座が土星を通過している間にコロナがあり、これまで見えにくかった障害や差別に光が当たり、弱者が浮き彫りになった。そこから魚座で議論が活発化し、さまざまな法案が可決されたが、それらは機能するとも思えない、誰のためのものか分からないものばかりになっている。
まあ、システムを作るのはそんなに簡単ではないですし、現状はひとつ形をを示したことで、10年後、30年後に機能すればいいのかもしれません。でも、そのためにはここから「当事者研究」をしっかりやっていく必要があるでしょう。
ここで、当事者研究の第一人者である、熊谷 晋一郎氏の言葉を紹介すると、
これは、本日の一つの話の結論としても大事かもしれません。つまり、障害を持ってる本人でさえ、私は私のことをよく知らないと言っている。本人だって、どうしたら自分が車椅子で快適なのか、どうやったら楽に移動できるのか、は分からない。
もしかすると、障害だけではなく、LGBTQや少子化、認知症などの法案についても同様で、その当事者である人たちは自分たちに何が本当に必要なのか、よく分かっていないのではないか。マイナカードの問題も現場のニーズがわからなかった結果ですね。
今回のチャートでは、土星がインターセプトになっていることから、これからより混沌としていく様子が出ています。様々な法案が論議を醸すだろうが、今は仕方がない。先ずは、当事者のニーズをきちんと理解していくことが先決だといえるかもしれません。
今回は、夏至のチャートとして重要なテーマとして、獅子座5ハウスの強調、水星・太陽も3ハウスと個人天体がピックアップされている様子、アセンダントが牡羊座になっていることを踏まえて、経済的または社会的に意識したいテーマを数々挙げてきました。
秋分の時期に向け、より良いパートナーシップが組めるよう、この夏は、自分自身の必要を理解し「有限化」に努めてみてください。三ヶ月に一度の星宙予報・特別版は、今後も勉強会レポートとしてお届け予定です。
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