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nicoの星宙予報 2023 獅子座 ~この夏は金星逆行と共にある、経済や価値の是正がはじまった、個人も経済の見直しをすべきとき

 心理占星術家nicoによる一ヶ月の星読み「星宙予報」。
太陽が双子座に移動した瞬間のホロスコープ(イングレスチャート)を心理占星術観点から分析し、時代と社会、個人の照応を紐解きます。
この時期、わたしたちが陥りやすい心理的不安、抱えやすい葛藤とはどのようなものでしょうか。その傾向をお伝えします。

[ 2023.7.29 追記 ]
日銀の金融政策、最低賃金上昇の報道から金星逆行の考察を追記しました。

画像:パウル・クレー「城と太陽」1928年(Paul Klee/ The Castle and Sun)


 占星術の難しさの一つに、象徴の捉え方の不確定さ、あいまいさというのがある。見る人によって、扱う人によって、象徴の切り口なり、解釈なり、言語化なりが変わる。こういったところに、占いとしての占星術の信用のなさ——だから占いなんかあてにならないのだ——があるのかもしれないが、私にとっては、ここがもっとも魅力だと思っている。

 確かに、この点に関していえば、占星術を学問として扱おうとすると無理があるようにも思えるが、ホロスコープも、そして太陽系の天体配置というのは、体系として、構造として確立されており、多くの人が同じ道具を扱うことができている。もうそれで充分ではないか?

 この事実だけで、精神分析家の松本卓也氏の言う 

たとえば、アウグスティヌスの『秩序』においては、リベラルアーツは、自己自身に向き合うことであり、そこに秩序=構造が見出される

こうしたことを、占星術は2000年以上もの間行ってきた。だから、今も現存する価値があると言えるのではないか?

 そんなふうに自分に問いかけながら、日々、あーでもないこーでもないと占星術から見出せる構造=「自分が対象をみる 対象によって自分が見られる」をやっているのである。

 こういった視点で、たとえばイングレスチャートを見た場合、どんなものを取り出すことができるのだろう。私という人間が獅子座イングレスチャートと向き合ったとき、対象によって私の何を見られるのだろう。そんなことを考えながらチャートを読むのは本当にワクワクする。

 世界(宇宙?)=ホロスコープを鏡にして自分を知るなんて、こんなにロマンチックな作業は他にないのではないか。

 こんなロマンがあるからこそ、私は多くの人に占星術のチャートと向き合ってもらいたい、そして自分の言葉を取り出してもらいたいと思っているし、またクライアントに対し、同じこの発見の喜びを共有してもらいたいと思っている。

 私自身、まだまだ研究の段階ではあるが、私がやっている心理占星術はそういったロマンを背景にしていると思ってもらえるといい。

* * *

 ということで、さっそく2023年の獅子座イングレスチャートを読んでみよう。

 占星術チャートを前にしたときに体験する一瞬の混乱、不安は、つまり冒頭に書いたように、象徴の捉え方をまずどこに設定するか、その糸口、切り口のあいまいさ、膨大さにある。どうとでも読めるということは、どうと読んでもよくわからないということで、だから、最初に勇気を振り絞って「今回はこれで行こう」と決め打っていく必要がある。

 ここで大事になるのは、「今回は」ということ。つまり、象徴を読むということは、いつも言っているように暫定的というか、仮止めというか(哲学者の千葉雅也氏的に表現すると仮固定的)、けっして固定せず、断定せず、あくまであいまいなまま進んでいくこと、それが象徴を扱うときにもっとも必要な技術だと私自身は考えている。

 ということで、「今回これで行こう」と私が決め打った(仮固定した)チャート読みを今からここに書き記していきたいと思う。

2023年太陽・獅子座イングレスチャート

 まずASC=1ハウスの天秤座の意味から考えてみたい。

 ここで私は大きく悩んだ。天秤座はいわゆる外交、またはパートナーシップのサインなので、わかりやすく岸田内閣の外交政策として読んでもいい。

 そうなると、真っ先に頭に浮かんだのが、8月18日に開催される日米韓首脳会議である。国際会議などとは別に、独立したかたちで三カ国が会談を行うのは初、またバイデン大統領が就任後、キャンプデービッド(米大統領の保養地)に外国の首脳を招くのも初めてということで、これが中国や北朝鮮にどのようなプレッシャーを与えることになるのか、そういった意味で「天秤座らしさ」が表れているエピソードであると言っていいだろう。

 しかし、ASCの状態をさらに読み進めてみると、ASC=天秤座の支配星である金星が逆行している。逆行というのは、見かけの逆行運動という天文現象であるが、占星術的には、これを「通常どおりの動きが得られない、物事がうまく前に進んでいかないと感じやすい」と考える。または、「今は前向きに物事を動かすのではなく、後ろ向きに解決すべきことがある」というように、逆行を「課題」として捉える。

 この現象は9月4日まで続くので、2023年の獅子座期は金星逆行と共に過ごすことになる。つまり、思ったように外交が進まなかった、成果を実感できなかったとも読むことができるし、外交に関する解決すべき課題が山積みであると読むことができる。

 この会談より一足早く、米韓両国は7月18日にソウルで、アメリカの核戦力の運用に関する初会合を開いた。これに合わせて戦略原子力潜水艦がおよそ40年ぶりに韓国に寄港したという。北朝鮮に対する抑止力強化に向けた姿勢を鮮明にしたということだ。

 「核兵器の脅威から自国民を実際に守らねばらない」というのが韓国の尹大統領の狙いであり、今後、両国で年に4回ほど会合を開き、韓国防衛の計画を深化させるという。

 さて、両国のこうした動きを前に、「核兵器なき世界」の理想を掲げている日本はどのような態度を取る必要があるのだろうか。

  5月に「広島ビジョン」を謳ったばかりであり、防衛費増税時期のさらなる先送りもあったが、ウクライナ侵攻後の核をめぐる状況や文脈は刻々と変化している。

 ロシアや北朝鮮に核を使用させないこととアメリカの核戦力を含む抑止力を頼ること。こういった悩ましい現実から目を背けず、その選択、その意味をどう天秤で量るのか。どのような価値観を持ち、どのような理想を未来に掲げ、どうやって失われた30年を再構築していく必要があるのか。

 今、まさに日本はそのような議論を本気でしていく必要があるのではないか、そういった問いかけをこのチャートはしている、とまずは読むことができるだろう。

 ではこの象徴は、個人にとってどのような意味になるのだろうか。

 仕事においてもプライベートにおいても、今あるパートナーシップの在り方を考えてみるというのは重要かもしれない(芸能人の不倫問題は最たる例か)。

 理想と現実のギャップに悩むこともあるだろう。損得勘定が先走ることもあるかもしれない。周囲が反対したとしても、自分の決断と未来を信じて勝負に出る必要もあるだろう。

 今は獅子座期であり、ASCの支配星の金星が獅子座で逆行することもあり、獅子座的な見直しが必要であると考えた場合、「自分の未来を明るく豊かにする価値とは何か」を再考することは欠かせない。そこで得た理想は、自分が誇らしく感じられる決断であるのか、そのためなら自分が一時的に損をしたようなかたちになってもいい、それでもそれを選択すべきである、そのように人生を賭ける勇気や情熱を持てるのかどうか、そんなことを選択の基準にしてみるといい。

 それが5番目のサイン獅子座にちなんだ小アルカナの5のカードにも示されている。

 左から2番目コインのカードはいわゆる貧乏カードと呼ばれているものだが、未来のためにリソースを投資し、後に利益を得るという不動サイン的な「価値の循環」も意味している。まさに「損して得取れ」ということだ。

 動画は倍速、情報は無料といったタイパ、コスパという言葉を耳にするようになって久しい。だが、タイパやコスパを優先した先で私たちはどのような価値を手にすることができるのだろうか。もしかしたら、私たちは自閉気味に小さく縮こまり、身を守ること、損をしないこと、安全や安心に期待することばかりを求め、未来に対し大きくイメージを広げることができなくなっているのではないだろうか。 

 たしかに決断するのは難しい。理想もあるが現実も付きまとう。核がない世界はいつでも理想だが、核で脅かそうとする輩がいなくならない限り、それでも大きなコストを払ってでも理想を掲げなくてはいけないこともある。
 じゃあ、財源はどうするんだ、安全は誰が守るんだ、誰がどう責任を取るんだ、そういったことは次の乙女座期に任せるとして、まずこの一ヶ月は未来に思いを馳せてみたいと、私自身は思っている。
 マイナカード、少子化問題、支持率低下と岸田内閣も問題は山積みだし、さらなる物価上昇も懸念されている。賃金を上げれば経営は苦しい。

 けれど、この獅子座期は、単に米韓の出方に揺さぶられることがないよう、日本の在り方を本気で考えてほしい。だから、個人も周囲の価値観や力に屈することなく、まずは自分自身のこれからの人生の豊かさがどのようなものか、そのイメージを生き生きと思い描いてみてほしい。

 そこからどんな行動指針のヒントが生まれてきたか。

 揺れ動く情勢、それに伴い揺れ動く価値観の中で、今はたとえ後ろ向きに感じても、じっくりと自分の未来のイメージと向き合う時間にしてほしい。


[ 2023.7.29 追記 ]

 もうひとつ、11ハウスに入室している獅子座金星逆行の別の解釈を加えておきたい。

 7月28日の昼に飛び込んできた日銀が長短金利操作の部分修正に踏み切ったというニュースは、私にとってかなり衝撃だった。日経新聞によると長短金利操作の柔軟運用は、市場経済の自律性を取り戻し、日本を「金利ある世界」へと向かわせる一歩になるという。

 速報が入ったときのチャートはこちらだ。

 逆行している金星がチャートのもっとも高いところで水星とタイトに合になっている。

 なるほど! こういった配置でこのような発表が行われるのか。これは占星術的には耳よりの情報ではないか? 逆行が決して後ろ向きの現象だけをもたらすわけではない、そんな証明になるのではないだろうか?

 そして、そのすぐ後に厚生労働省が最低賃金を1,002円に引き上げると決定した。日本の賃金は世界的に見ても異常なほど低いことは承知の事実であるが、まあ小さな一歩と考えたい。

 
 この2つのニュースは、占星術の象徴の捉え方の是正になると考えられる。前述のように、逆行は後ろ向きの現象だけをもたらすのではなく、文字通り「是正」にもつながることがわかった。そして、金星的象徴の是正として、経済や価値の見直しというかたちで現象化したということだ。

 そこに水星とのコンタクトもあり、今回の発表につながったのだろう(天王星と金星のタイトなコンタクトは7月2日なので、この辺で話し合いが熟成したのかもしれない。天王星も金星も、また獅子座も牡牛座も不動サイン。なので「適正な価値」をもたらすという意味で、今回は妥当な判断だったのかもしれない)。

 この現象が企業/個人の中にもたらされるとしたら、やはり自分自身の経済状況の見直し、収支が適正に働いているかどうかの見直しは必須なのかもしれない。金星、天王星のタイトなコンタクトは8月9日に再び訪れる。この辺までじっくりと企業/個人の経済状態と向き合うのは得策のように思われる。

 以上のことを含めて、再びイングレスチャートに戻って考えると、ASC=天秤座、また11ハウスの強調とは時勢=時代の空気=世間の風当たり=フィードバックを受け取ることで、よりよい修正を加えることができると考えられるかもしれない。

 たとえば、毎日新聞には「1,000円やむなし、というムードが早くから広がっていた(厚生労働省幹部)」とあるが、つまりムードが現実を動かす決定打になるということだ。

 できれば現状維持でいたい。事なかれで穏便にやりたい。

 しかし、風エレメントは、そういった停滞感に風を起こし、修正、是正を加える力があるのだ。ということは、個人も変化の風=ムードを感じたら速やかに動きをつくっていけるといい。


 以上が、2023年獅子座期のイングレスチャート読みになる。

 象徴読みなので、読者の皆さんにもある程度の力量がいるかもしれない。しかし、当たっていない、自分のことではないと思う前に、少し象徴の理解を広げたり、角度を変えたりしながら自分に合うような解釈を加えてみてほしい。そうすることで象徴が深く理解される瞬間がやってくるかもしれない。


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