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ニコニコ雑記:デ・パルマのユーモアに思いを馳せる「悪魔のシスター」

 そんなに思い入れの強い作品では無かったが、最も好きで影響を受けた映画監督の1人がブライアン・デ・パルマなので、やっぱり劇場で観ておいた方が良いなと思い、「悪魔のシスター」のリバイバル上映を観に行った。

  TV番組での共演をきっかけに一夜を共にしたフィリップとダニエル。女には嫉妬深く精神的に不安定な双子の妹ドミニクがいるらしく、朝から「てめえ男連れ込みやがって!」と怒鳴られウンザリ。今日は2人の誕生日だというのに!そこで気を利かせたのがナイスガイなフィリップ。ダニエルに頼まれた薬のおつかいついでに、誕生日ケーキを買ってくる。サプラーイズ!と番組で何故か貰った切れ味鋭い包丁をと共にベッドに突っ伏したダニエルにケーキを持って行ってあげると、突如として彼女は男をその包丁で滅多刺しにして殺してしまう!事後、昨夜から彼女を付け回していた自称彼女の夫エミールが死体の処理を完璧に済ませて事なきを得るが、殺人現場は向かいのアパートに住むハングリー精神溢れるジャーナリスト・グレースに目撃されてしまっていた。グレースの独自捜査の末、ダニエルとドミニクはかつてシャム双生児であったこと、ドミニクは分離手術のすぐ後に死んでいたことが判明するのだが──。

 後のデ・パルマ映画に見られる描写のクドさとエグさ、映像表現の過剰さはやや薄めではあるが(多分そこが本作への思い入れの少なさの原因の1つ)、それはあくまで“デ・パルマ映画の中では”という前提の上での比較であり、他の監督の映画と比べれば当然、描写はクドいしエグいし、映像表現は過剰。長椅子の上でフィリップと交わり合うダニエルの太ももに天井視点から徐々に寄っていきグロテスクな分離手術の傷跡をドアップで写す長回し、グレースが殺人現場を目撃し警察と共に殺人現場へ乗り込むまでとエミールが部屋へやってきてフィリップの死体を処理するまでを同時進行で見せるスプリット・スクリーン、作品テーマの1つである“覗き”を強調するような手前と奥の二重構造の画面構成。そこにバーナード・ハーマンの若干やかましめの音楽まで加われば、もうお腹いっぱいのデ・パルマ節の完成である。

寝起き即刺殺!

 内容としてはデ・パルマ製スリラーの中では結構こじんまりとしたものな印象。規模としては他作品と変わりはないが、デ・パルマ映画あるあるのクライマックスに二重三重のサスペンスがぶつかり合って惨劇を呼ぶ疾走感・爽快感が、本作の病院でのクライマックスには無い(「キャリー」辺りからの技法だろうか)。絵面としてもかなり地味ではある。ただ、ラストのラスト、オチと言いたくなる伏線回収のなんとも言えぬ間抜けさ。いや間抜けとか言ってる場合ではないのだが……。映画館で呆れ笑い起きてましたよ。
 思えば、日本ではあまり観る機会がない初期の監督作品にはコメディーが多いし、スリラーやホラー、ギャングものの監督作品にも思わずクスリとさせられるユーモラスなシーンも多かった。(個人的に好きなのは「レイジング・ケイン」で警察署?にやってきた心理学者?の女性が刑事たちに事件の考察について語りながら、目的地も知らないのにズンズン進んで「あ、そこ違います」「あらどうも」みたいなやりとりを2,3回繰り返すシーン)
 今後、デ・パルマの映画を観る時は、デ・パルマの笑いのセンスも注目してみるとより面白いかもしれない。

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