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花の都へのゆめ

 ちょっとだけ時は戻って、アルフィー と出会ったおれは、ビートルズにはじまりS&G、CSN&Yなんてのを聞く日々を送り、周りとのずれはもちろん感じていたので音楽の話はあまり人にするもんじゃない! の考えを固めていった。

 詩を書き、友達に言えない音楽をダビングしたカセットテープで延々と聞き、休み時間には映画雑誌をじっくり読みする中学生だったおれの次のゆめは東京で暮らす人、例えばアイドル。

 その頃のアイドルといえば誰だっただろう。昭和のアイドルは思い出せるのに、そしてその後のハロプロから始まる沢山のアイドルたちは浮かぶのに、その頃誰がいたのかまったく思い出せない。もしかしたらいなかったのかも。こんな人になりたい、、、がもしあったとしたら、『りぼん』に出てくる蘭世みたいな、実果子みたいな、姫ちゃんみたいな。そんなふうになんかチヤホヤされたり恋されたり恋したり。それってアイドルしかなくない? 

 今思えばその時になりたかったのは、一生懸命ダンスのトレーニングしたり可愛く整えてニコニコしたり、の本気のプロのアイドルではなくって、自分のしたいことにまっすぐでそのしたいことで生きてる感じへの憧れ。そして芸能人という仕事とアルフィー と対等とまではいかないまでも、同じステージと言えそうな近さ。そして東京。だって東京ってそういう人しか住んでないんでしょ!!

 なのに、そのためにおれがしたことといえば、郵便手帳で東京の住所と郵便番号を調べることと、えりちゃんとのアイドル同士の文通だけ。
 アイドルはもちろん東京に住んでいて、日々とにかく忙しくしている。その合間に同じくアイドルのえりちゃん(アイドルネームはかすみ、〒150-0013渋谷区在住)に手紙を書く。お互いレッスンとか撮影とかなんかいろいろで忙しいからなかなか会えなくて、その会えない日々のいろいろを書いたアイドル文通。おれ(アイドルネームは瞳、〒107-0052港区在住)とかすみの文通は何年続いただろう。
 かすみの日々はアイドルとしての活動となぜかXのサポート。瞳ことおれの日々はソロのアコースティックライブを開くためにアルフィー にギターを習いに行ってなんか楽しくしてるというのがメイン(えりちゃんにだけはアルフィー のことを話せた)。その活動報告をお互いつらつらと書いてそのゆめに酔っていたけれど、たぶんそれアイドルの仕事関係ない。おれらアイドル知らない、ただXの、アルフィー の近くに行ってみたかっただけ。
 そんなわけでかすみと瞳はアイドルを引退することになる。引退コンサートは二人合同で野外で行われる運びとなり、何万人も集まるでっかいコンサートのため、連日のリハーサルが必須となり、おれんちの庭でのリハーサルに夢中になる。
 ありがとう、ありがとう、またいつか! 涙ながらに歌い走り回るかすみと瞳。それぞれ思いついたままのオリジナル曲をふんふんしながらありがとう! ありがとう! と手を振り踊り走って汗びっしょり。


 花の都大東京、瞳のゆめは続くよ。
 みんなありがとう!
 また会おう!!


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