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VA-11 Hall-Aとことば DAY 1 「その名前で呼ばないで」

「名前って大事なんだよ。一度名前を知れば、その人との間にある壁なんか消えてなくなっちゃうんだから」とはアナのセリフですが、VA-11 Hall-Aには名前にまつわる話が多数あります。1日目では名字のドーソンではなく名前で呼ばれて喜ぶドノヴァンも印象的です。

12月13日 火曜日

我らが主人公ジルが本名のジュリアンで呼ばれることを嫌う話もまた、1日目に登場します。仕事モードのジルは真面目なプロのバーテンダーに徹しており、ですます調で話します。このセリフではそれが崩れて素が垣間見える瞬間です。1日目ではキムとの会話の中で、ボスの話をする際も同じく素が出てハイテンションでボスについて早口で語り出すのですが、こうした素顔が徐々に見えていくにつれて、ジルに感情移入する作りになっているのもVA-11 Hall-Aの大きな魅力です。ちなみに、ジュリアンと呼ばれると不機嫌になる理由は6日目にわかります。

12月18日 日曜日

原文を見てみると「Do. NOT. Call me Julianne, please.」。単語ごとにピリオドが打たれているので言い含めるような口調の強い命令、notがすべて大文字(キャピタライズ)なので強い否定、後ろのpleaseも咄嗟に出た言葉に後から付け足したという感じです。特にキャピタライズは日本語に同様の表記がないためいつも処理が厄介なのですが、「その名前で呼ばないで」はジルが普段のですます調を崩しているという点と、「ジュリアン」という呼ばれたくない名を自ら口にしないという点で、ニュアンスを拾っており、ワザマエですね。短いですが、人によって訳文が色とりどりになりそうな一文です。

さて、いつものごとく隙があるので自分語りをするのですが、就職してはじめて客先に出向いた際、自己紹介するタイミングを逸して名前を覚えてもらえず、ずっとやりづらい思いをしたことをいまでも思い出します。自ら胸襟を開く重要性を学んだいい機会でした。まあ先日も自己紹介に失敗したんですが……nicolithという名前はそれなりに気に入ってるんですが、口にすると馴染みがなくてわかりづらいし、名字もないので「Bond. James Bond.」のようなかっこよさも出ません……呼びづらければnicoと省略して気軽にお呼びください。

VA-11 Hall-Aとことば Advent Calendar 2023 5日目

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