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VA-11 Hall-Aとことば Prologue: DAY 3 「いわゆる“オーオカ裁き”ってやつ」

VA-11 Hall-Aには驚くほど多くの日本文化についてのネタが登場します。理由は単純で、制作者がオタクで、オタクにとってそれがリアルだからです。後に触れるものもあるでしょうから、いまここで詳らかにはしませんが、それこそ「大岡裁き」というフレーズが出てきても違和感がないほどです。

12月11日 日曜日

このセリフは見たことのないプレイヤーも多いかと思います。前日譚にあたるプロローグの内容で、ゲーム中でもやや気付きづらいところからプレイできます。

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プロローグはVA-11 Hall-A本編開発以前の試作のひとつで、時系列としては本編の前日譚になりますが設定がいくらか異なります。現在こうして遊べるプロローグと、itch.ioで配布されているVA-11 HALL-A Prologueの内容もまた微妙に異なり、オタク心をくすぐられるところです。

ベティとディールもまた本編とは設定が異なるのですが、二人の掛け合いの面白さは本編同様。パイルドライヴァーとブリーディングジェイン、どちらがおいしいか争う二人に、他の酒を提供するとこのセリフが見られます。

さて、英語では「"Cut the baby in half" Solomon thing」と、旧約聖書に出てくるソロモンの審判を引いています。これは大岡裁きとほぼ同じ話というか、大岡越前よりも旧約聖書のほうが当然古く、こちらが元ネタと言われています。英語圏でよく見る聖書ネタのひとつと言えるでしょう。

こうした逸話やことわざなど、日本語圏では馴染みのないものの翻訳は厄介なネタのひとつです。同じようなものがあればいいのですが、そうそううまくはいきません。「kill two birds with one stone.」に由来する一石二鳥のように、意外なことわざが実は英語由来だったりしますが、なかなかうまくはいきません。仮に見つかったとして、今度はゲームの世界観に似つかわしい代物かという問題が顔を出します。かといって、その意味をダイレクトに書くというのも、大抵の場合は退屈になってしまいます。悩ましいですね。

「いわゆる“オーオカ裁き”ってやつ」は、そんなラクダが針の穴を通るような奇跡の産物です。西暦207X年ネオン地区グリッチシティ、場所は明言されていませんがおよそ日本とは思えないのに日本のマニアックなネタが飛び交うバーVA-11 Hall-Aだからこそ成立する奇跡。無論、「オーオカ」とカタカナ表記にすることでこの用語を知ってはいるが馴染みはない、または「大岡」という言葉そのものをベティは知らないというニュアンスが出ているのも素晴らしいです。

さて、今更ながら、本連載は改めてVA-11 Hall-Aを日本語と英語でプレイして、気になる言葉を一日ずつ拾い集めようという試みです。ダジャレやジョークなど、面白くかつ学びのあるテキストが多い作品で、すべてを取り上げるにはあまりに紙幅が足りません。時として大岡裁きを下さざるを得ませんが、まあ語る機会はまたいくらでもあるでしょうし、よければみなさんもよろしくお願いします。

VA-11 Hall-Aとことば Advent Calendar 2023 3日目

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