VA-11 Hall-Aとことば Anna: Demo 「たまには悪いことも起きないと、バランスがよくないの」
VA-11 Hall-Aは徹頭徹尾、バーテンダーが客に酒を提供して話をするゲームです。サイバーパンク・バーテンダー・アクションの名に恥じないだけの練り込まれたSF的な設定や蠢く陰謀もありながら、作中で描かれるのは酒の席で私的な話。だからこそ話題は豊富で、時としてテツガク的な話も出てきます。酔った人間はテツガクを一席打つものなので。
このセリフは、アナに酒を提供することで始まる会話の一部で、テツガクモードに入ったアナの「悪いことってどうして起きると思う?」から始まる問答の一部です。この後に続くアナの「それでも、死みたいな悪いことが起きることは、 正当化できないよ」という返答から、この議論自体は有耶無耶に終わるのですが、そうした空気感も酒の場らしく、際どい話題を楽しい読み物にしています。
一方でジルがバーテンダーになった経緯や、アナがジルとこうして酒を酌み交わすまでの経緯を思うと、二人がやりとりする言葉ひとつひとつの意味の大きさを感じられます。このセリフが出てくるのは前日譚に当たるデモで、itch.ioで配布していたデモ版をゲーム本体に組み込んだものになります。時系列としては本編開始前日にあたりますが、クリア後に改めてプレイしてみるとより味わい深いものがあるでしょう。
原文では、「sometimes bad is just a matter of contrast.」。おいしいチョコを食べ続けると、過去の思い出の中のチョコはまずいものになっていく、という前段から、悪いこととは相対的なものだ、という話です。画像編集の経験がある方ならばコントラストは馴染み深い用語ですが、あまり一般的とは言い難く、バランスの良し悪しという話のほうが自然でわかりやすいセリフだと思われます。特に、ここはアナに対して一度抽象的な話をするも伝わらず、より具体的な例を出して説明し直している文脈のため、わかりやすさが重要になる箇所です。
さて、VA-11 Hall-A本編は12月13日に始まり、おおよそ1月1日に終わる物語です。それにちなんで、12月は毎日なんらかの投稿をするDaily VA-11 Hall-Aという文化がVA-11 Hall-A界隈にはあり、本連載もそれを踏まえたものとなっています。だから、12月はVA-11 Hall-Aファンにとって特別な月であり、作中でメガクリスマスと呼ばれる祝いの日12月25日も特別な日です。未プレイの方はぜひこの機会に、既プレイの方はいわずもがな、VA-11 Hall-Aをプレイするのにうってつけの機会と言えるでしょう。
ところで、去年の12月は突然の病に、人生ではじめて入院しました。
オタク定番のセリフ
クリスマスは、VA-11 Hall-Aのオタクの嗜みとして病床でVA-11 Hall-Aをプレイしました。
ドロシーは癒やし
どんどんロクでもない質問するよー!
その後、手術をしたり再度入院したり、いろいろなことがあってゲームの翻訳をはじめることになります。あまり過去を物語にしすぎるのもよくないとは思いますが、去年はこの件に限らず人生最悪の一年だったものの、禍福は糾える縄の如く、今年は現時点でバランスを取り戻したような一年です。あと一ヶ月足らずを無事に過ごせれば……
VA-11 Hall-Aとことば Advent Calendar 2023 4日目
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