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空気感

ここ数か月のあいだ、毎日通っていた場所がありました。最初はここを通っていなかったのですが、ある日ひどい雨を避けたくて入り込みました。

その場所は朝は電気がついていないのと、天候の加減で日の光が入らず、雨を避けるために入った瞬間真っ暗に感じました。日の光が入るのは、ところどころに設けられているポッカリと空いた出入りのできる場所のみ。

目が慣れるまで恐る恐る歩いていたのですが、よく見ると通路として利用している人が歩いているようだと気が付きました。最初の感想は「終わってるな。ここ。どうにかすればいいのに」。

それから雨が多く降る季節になり何度となくその通路を利用することが多くなると、色々な事に気が付くようになりました。

毎日、同じ時間にすれ違う人や、もう営業されなくなってしまったお菓子屋さんの奥から、いつも外を眺めている白髪の女性。店舗の素敵な看板やシャッターに描かれた絵。

最初は何だここって思っていた真っ黒な通路の魅力にある日突然気が付きました。特に雨の日の真っ暗な空間に出口からかすかな光が入ってくる雰囲気がとても素敵に見えて何度となくスマホのシャッターを切りました。

なんとなく、ここが好き。映画とかで使えそうだなぁ。

かつては人が多くの人がショッピングや飲食を楽しんだ場所だから、その残存エネルギーが残っているのかもしれません。youtubeを検索してみると、昔の映像を見つける事ができ、今とは全く違った賑わいを見る事ができました。

電気がつけられた時間に通ってみると、立退きをせざるえなくなり、シャッターを閉めると書かれた張り紙を掲示している店舗もありました。耐震の工事の為にと補強工事をするために立退きだと言われているようです。かといって、いくつかの店舗はそのまま営業をされている。

耐震工事をして、年月が経たないと出せないこの雰囲気、空気感がなくなるのは寂しいです。上手く雰囲気を残してほしいと思いながら、またシャッターを切りました。


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