映像シナリオ「Go Straight」

概要:シナリオ学校の自由課題にて執筆。大学時代に書いた「経理マン(仮)」(2022/01/12 note投稿)の主人公を使用。尺は約27分。2008/08/14作。

〇登場人物
山田 一(29)株式会社ヤスダ経理部・社員
中村健治(29)同社営業部・社員
大野 聡(49)同社経理部・部長
宮本典子(27)同社経理部・社員
細見智恵(26)同社経理部・社員
大木俊介(28)同社経理部・社員
小林信夫(48)同社営業部・部長
黒沢  (32)同社営業部・社員
加藤  (27)同社営業部・社員
金沢  (50)富士見株式会社企画部・部長
受付嬢 (24)同社受付嬢


〇 株式会社ヤスダ・経理部
   ある小さな会社の経理部。
   こじんまりとした部屋に大量の書類が置かれているが、きちんと片づ
   けられすっきりとしている。
   そんな環境の中、自分たちのデスクに向かい黙々と仕事をしている社
   員四人と部長の大野聡(49)がいる。
   大野、難しい顔で書類を見ているが、ときどき社員の方を窺いながら
   思案している。
   至って真面目に仕事をしている宮本典子(27)。
   少しダルそうに仕事をしている細見智恵(26)。
   体調が少し悪そうな大木俊介(28)、青白い顔で席を立ちトイレに向
   かう。
   それを見た大野、またかといった様子でお茶を啜る。
   それぞれきちんとした身なりだが、その中でも人一倍きちんとしてい
   る山田一(29)が、自分のデスクに向かって黙々と仕事をしている。
   整理整頓されている山田のデスク、仕事に必要なもの以外ほとんど置
   いていない。
   その隣の大木のデスクの上には、大量の書類が乱雑に置かれている。
   山田、それに気付くと仕事の手を止めて、書類をまっすぐにそろえて
   いく。
   そこへ、そのデスクの持ち主である大木が戻ってくる。
大木「あ、いつもいつもすみません」
   山田、自分の仕事をしながら、大木の方を見ずに淡々と答える。
山田「いえ、曲がっていたので直しただけです」
   苦い表情の大木、軽くため息を吐くと、自分の仕事を始める。
   その様子を見ていた向かいのデスクに座っている宮本と細見が、小声
   で話す。
細見「山田さん、またやってるわよ」
宮本「ああ、あの人、人のものにも手ぇ出してくるのよね。何でもまっすぐ
 にしてさぁ、几帳面にも程があるっつーの」
細見「そうそう」
   宮本と細見がくすくすと笑っていると、咳払いが聞こえ、大野がこっ
   ちを見ている。
   慌てて仕事に戻る宮本と細見。
   山田、宮本と細見のやりとりなど聞こえていない様子で、黙々と仕事
   を続けている。
   山田に視線を移す大野、飲みかけのお茶を一気に飲み干し、山田を呼
   ぶ。
大野「おい、山田君。ちょっといいかな」
山田「はい」
   山田、仕事の手を止め、大野のデスクまで行く。
山田「何でしょうか?」
大野「うん、じつは……君に一週間だけ営業の方へまわってほしいんだ」
山田「営業にですか?」
大野「ああ、営業の一人が急に辞めちゃって人手が足りんみたいでな。新た
 に人を雇うにしても、なかなか見つからなくて、まあ、とりあえずヘルプ
 としてうちから一人、営業にまわしてくれって上から御達しが来たんだ
 よ。うちもギリギリでやってるからいい迷惑なんだが……まあ、短い期間
 だから異文化交流とでも思って気楽にやってくれ。なっ」
   にかっと笑う大野。
山田「わかりました」
   無表情の山田、淡々と答え自分のデスクに戻る。
   その途中、書棚にある傾いたファイルに気付くとまっすぐにする。

〇 同・営業部
   経理部とあまり変わらない広さの部屋だが、経理部より乱雑に散らか
   っている。
   ほとんどの社員が外回りで出払っていて、中村健治(29)と部長の小
   林信夫(48)しかいない。
   二人ともそれぞれのデスクで事務仕事をしている。
   少し疲れ気味の表情の中村、ネクタイを少し緩め、椅子に座りながら
   伸びをし、小林に話しかける。
中村「部長、今日からですよね? 他の部署からヘルプが来るのって」
   中村の方を見ずに答える小林。
小林「ああ、しかも経理から来るそうだ」
中村「経理?! なんでまたそんなとこから」
小林「うちの会社、小さいからなぁ……まあ、どんなとこからでも人が来て
 くれるだけでありがたいってとこだ。あ、お前に教育係やってもらうから
 な」
中村「えっ……僕にですか?」
   小林、中村の方を見てにやりと笑う。
小林「よろしく頼むぞ」
   嫌そうな顔の中村。
   そこへ山田が入ってくる。
山田「失礼します」
   山田、部屋に入るなり散らかり具合が気になり辺りを見わたす。
小林「おお、来たか来たか」
   小林、人の良さそうな笑顔で山田を迎える。
山田「経理から来ました。山田一と申します」
   山田、礼儀正しく挨拶するが、部屋が散らかっているのが気になって
   仕方がない様子。
   山田の様子など気付いていない小林、にこやかに話す。
小林「部長の小林だ。いやぁ、君が来てくれて助かるよ。短い間だけだけど
 頑張ってくれ」
   小林、二人の様子を見ている中村を手招きして呼び、山田に紹介す
   る。
小林「君の指導にあたってくれる中村だ。わからないことがあったら、彼に
 聞きなさい」
   小林、山田に中村を紹介すると、さっさと自分のデスクに戻って仕事
   を始める。
中村「中村です。よろしくお願いします」
   営業スマイルの中村に対し無表情の山田、軽く会釈するが、周りの散
   らかり具合が気になり落ち着かない様子。
中村「とりあえず、山田さんには主に事務をやってもらいます。たまに僕と
 一緒に取引先に向かうこともあると思いますが」
   説明している中村をよそに、散らかったものを手当たり次第まっすぐ
   にしていく山田。
中村「あの、山田さん……聞いてます?」
   山田の行動を不審そうに見る中村。
   山田、中村の方を見ると、中村のネクタイを締めまっすぐにし、再び
   周りを片付けていく。
   呆然と山田を見る中村。

〇 同・経理部
   黙々と仕事をしている大野、宮本、細見、大木。
   すっきりしていた部屋が少し散らかっているが、誰もその事を気にし
   ていない。
   大野、飲んでいたお茶がなくなり、湯飲みを片手に宮本を呼ぶ。
大野「おーい、宮本君。お茶」
   ため息を吐きながら席を立つ宮本、お茶をいれ大野のデスクに置く。
宮本「どうぞ」
   宮本がいれたお茶を飲みながら話しかける大野。
大野「山田君がいないと気が楽でいいなぁ。あいつの几帳面さは窮屈過ぎて
 かなわん」
宮本「ほんと、そうですよ。人の物まで勝手に片付けて……」
   書類を提出するため大野のデスクに来た細見、二人の会話に加わる。
細見「今頃、営業部の人たちの物でも片付けてるんじゃないですか」
大野「あいつのことだからやりかねんなぁ。いっそのこと、ずっと営業にい
 てもらってもいいんだがな」
宮本「部長、それは言い過ぎですよー」
   楽しそうに笑う三人。
   大量の書類が乱雑に置かれたデスクで探し物をしている大木、なかな
   か見つけられない様子。

〇 同・営業部
   山田が来た日より、部屋が少し片付いている。
   黙々と仕事をしている山田。
   その隣のデスクに、外回りから戻ってきた黒沢(32)が座る。
   黒沢、鞄から書類を取り出し、乱雑にデスクの上に置く。
   黒沢、立ち上がり席を離れる。
   山田、黒沢のデスクの散らかった書類を見ると、それをまっすぐにし
   ていく。
   片付け終わった山田、自分の仕事に戻る。
   戻ってきた黒沢、書類がまっすぐになっていることに首を傾げる。

    ×     ×     ×

   書棚にファイルを取りに来る山田、そこにあるファイルの向きや順番
   がバラバラになっていることに気付く。
   山田、それらの向きと順番を揃え始める。
   すべて揃え終わると、加藤(27)が来て持ち出していたファイルを向
   きを揃えず適当な場所に突っ込んで去って行く。
   山田、すかさずそのファイルを取り、順番に合った場所に戻す。

    ×     ×     ×

   山田、作成したデータの書類を数枚ずつにまとめ、端がちゃんと揃っ
   ているか入念に確認しながらホッチキスで留めている。
   そこへ中村が来る。
中村「山田さん、ちょっと四階の資料室まで行って、これ取って来てくださ
 い」
   中村、山田にメモをわたす。

〇 同・資料室
   薄暗い資料室。
   頻繁に使われる所ではないため埃っぽく、大量の資料が乱雑に置かれ
   ている。
   山田、メモに書かれた資料を見つけ、資料室から出ようとするが、室
   内を見わたしてしばらく考えると、乱雑に置かれた大量の資料を片付
   け始める。

〇 同・営業部
   自分のデスクで仕事をしている中村。
   イライラしたように時計を何度も見る。
   中村、席を立ち資料室へと向かう。

〇 同・資料室
   資料室に入る中村。
   黙々と片付けている山田がいる。
   資料室の半分以上がきれいに片付けられている。
   驚く中村。
中村「な、何しているんですか?!」
   山田、中村の声など聞こえないように黙々と片付けている。

〇 同・廊下
   不機嫌そうな表情の中村が歩いてくる。
   その少し後ろを無表情の山田がついて歩いている。
中村「これから取引先に向かいますけど、勝手に動かないでくださいね。こ
 の前みたいに人の話も聞かず、手当たり次第片付け始めたり、もう何しに
 きたんだか……って、あれっ?!」
   中村について来ていた山田がいない。
   中村、歩いてきた方向を見ると、廊下の掲示板の掲示物をまっすぐに
   している山田を見つける。
中村「山田さん! もうそんなのいいから、早く行きますよ!」
   中村、早足で山田に近付き、山田の袖を掴んで引っ張っていく。
   山田、まだ掲示物の歪みが気になり、名残惜しそうに掲示板を見つめ
   ながら中村に引っ張られていく。

〇 富士見株式会社・前
   八階建てのビルの全景。
   看板には『富士見株式会社』の文字。
   そのビルに入って行く山田と中村。

〇 同社内・受付
   中村、受付のカウンターに向かうと、受付嬢(24)に話しかける。
   その後ろについて来ている山田、中村が取引の相手に取り次いでもら
   っている間、おとなしく立っている。
   山田、カウンターの上に置かれた小さなキャラクターの置物が三つ並
   べられているのに気付く。
   それぞれ向いている方向が少し違う。
   山田、それらをしばらく見つめると、それぞれの向きを数ミリ単位で
   揃えようとする。
   そこへ中村が山田を呼ぶ。
中村「山田さん、行きますよ!」
   山田、中村のところへ行く。
   カウンターには同じ方向をむいた置物。

〇 同・応接間
   小さな応接間。
   緊張した面持の中村と無表情の山田、ソファに座っている。
   中村、小声で山田に話しかける。
中村「くれぐれも失礼の無いようお願いしますよ」
   そこへ取引先の金沢(50)が入ってくる。
   すぐさま立ち上がる中村、山田も立ち上がる。
金沢「いやぁ、待たせてすまない。ちょっと立て込んでいてね。まあ座っ
 て」
   ソファに座る三人。
   金沢、テーブルに書類を広げながら汗を拭いているが、カツラが少し
   ずれているのに気付いていない。
   金沢の頭に気付く山田と中村。
   中村、見て見ぬふりをして、チラッと山田の方を見ると、山田はしっ
   かりと金沢の頭の方を見ている。
金沢「前回、この見積もりでやってもらったんだけど、今回ちょっと事情が
 変わってね……」
   山田の様子に気付いていない金沢、テ―ブルに広げた書類を見ながら
   話を進めていくが、山田が心配な中村、ヒヤヒヤしながら金沢の話を
   聞いている。
   その間もずっと金沢の頭を見ている山田。
   中村、真剣に金沢と会話しているが、冷や汗が出てくる。
   山田と中村の様子に気付かず、にこやかに話を進める金沢。
   山田の方を気にしつつ、金沢との会話に集中しようとする中村。
   金沢の頭の方を見続ける山田。
   しばらくその状態が続く三人。

    ×     ×     ×

   テーブルに広げた書類を揃える金沢。
金沢「……ということで、今回は頼むよ」
中村「わかりました」
   ひとまず安心したように息を吐く中村、ふと山田の方を見ると、まだ
   金沢の頭の方を見ている。
   ぎょっとする中村。
   そこへ金沢がペンを落としてしまう。
   山田と金沢のちょうど真ん中に転がっていくペン。
   拾おうとする金沢。
   同時に山田も動き、金沢の方へ手を伸ばす。
   慌てて山田の行動を阻止しようとする中村だが、咄嗟に動けない。
   金沢より先にペンを拾う山田、金沢にペンをわたす。
山田「どうぞ」
金沢「お、すまない」
   笑顔で受け取る金沢、腕時計を見る。
金沢「もうこんな時間か。すまないが、急いでるからお先に失礼するよ」
   申し訳なさそうな金沢、足早に立ち去る。
   金沢を見送りほっとする中村、鞄を持ながら山田に話す。
中村「さて、僕らも戻りますか」
   山田、返事もせず、金沢が座っていたソファの後ろの壁に掛けられた
   カレンダーや額をまっすぐにしていく。
   脱力したように苦笑いする中村。

〇 オフィス街(夕)
   会社に戻る途中の山田と中村。
   無表情でまっすぐ前を見て歩いている山田に中村が話しかける。
中村「山田さん。どうしてそんなに几帳面にしようとするんですか?」
山田「私はただ曲がっているものをまっすぐに直しているだけです」
   山田、中村の方を見ずに話す。
中村「でもやり過ぎじゃないですか? 正直誰も気にしていない所までやっ
 て……山田さんの行動は無駄なんですよ。そんな暇があるなら他にやるこ
 とあるんじゃないですか?……ちょっと山田さん、聞いてますか?」
   中村、今までのイライラをぶつけるように強めの口調で喋るが、山
   田、無言のまま前だけ見て歩いている。
   中村、険しい表情で黙る。

〇 株式会社ヤスダ・営業部(朝)
   黙々と仕事をしている山田と中村。
   中村、山田が書類を持ってきても、素っ気ない態度で距離を置こうと
   している。
   山田、気にせずマイペースに仕事をしている。
   中村、ふと山田の方を見る。
   山田、相変わらず書類をまっすぐに揃えたりしている。
   中村、またかといった様子でため息を吐き仕事に戻る。

〇 同・経理部
   乱雑に散らかった部屋。
   それぞれのデスクの上も、以前より散らかっていて何がどこにあるの
   かわからない状態。
   そんなデスクで探し物をしている細見、なかなか見つからずイライラ
   している。
   大木、自分のデスクで仕事しているが、山積みになったファイルに肘
   が当たり大木の方へ倒れてくる。
   大木、慌てて支えようとするが、別の山積みになったファイルに当た
   り倒してしまう。
   宮本、大野の湯のみをお盆に乗せて大野のデスクに持って行こうとす
   るが、床に置かれていたダンボールに躓き、湯のみのお茶を大野にひ
   っかけてしまう。
大野「おわっ! あちちちちっ!!」
   慌てて立ち上がる大野。
宮本「すみません!! もう、どうしてこんな所に置いてあるの~」
   宮本、急いで拭きながら恨めしそうにダンボールを見る。
   探し物を諦めたように座っている細見、その様子を見てぼそっと呟
   く。
細見「なんだか、山田さんがいなくなってから、この部屋散らかっちゃった
 わね……」
宮本「山田さんが何かと片付けてくれていたから、使いやすかったのよ」
大木「僕も山田さんにいつもデスク片付けてもらって、ほんとはすごく助か
 ってたのがわかりました」
   大木、散らばったファイルを拾いながら話す。
大野「山田君、早く戻ってこないかなぁ……」
   お茶で濡れてしまった書類を見つめながら、ぼそっと呟く大野。
   少し沈んだ表情の細見、大木、宮本。

〇 同・営業部(夜)
   一人、残業している中村。
   そこへ小林が入ってきて、差し入れの缶コーヒーを中村にわたす。
小林「ほれ」
中村「あ、すみません」
   小林、自分の缶コーヒーを開け、一口飲む。
小林「明日で山田君ともお別れだな。どうだ? 彼の教育係になってみて」
中村「どうもこうも散々でしたよ。あの几帳面過ぎる行動に」
   疲れた表情で小林を見る中村。
   小林、愉快そうに笑う。
小林「あはは、たしかにあれはやり過ぎだなぁ。金沢部長の話を聞いた時は
 笑ってしまったぞ。でもな……山田君が来てから、うちの部署、前より仕
 事がしやすくなったんだぞ」
中村「え?」
小林「うちの部署、俺も含め結構ずぼらな奴が多いだろ。部屋が散らかって
 いても、誰も片付けないし気にしない。多少使いづらいことがあっても、
 外回りが多い営業にはそんなに支障は無いよな。でも、山田君が片付けて
 くれたおかげで、思った以上に無駄がなくなったと俺は思う。ファイルの
 向きとか小さいことだけど、意外と便利なものなんだな」
   穏やかに話す小林。
   中村、黙って小林の話を聞いている。
小林「まあ、他の奴らはそんなこと思ってないかもしれんが、お前はどう
 だ?」
   中村、部屋中を見わたす。
   以前の営業部の部屋とは全然違うように見える程、整然と片付けられ
   ている。
   同じように部屋中を見わたす小林、中村の返答を待たずに話す。
小林「山田君が経理に戻ったら、この部屋もまた元に戻っちゃうかもなぁ。
 俺も少しは片付けるようにしないと」
   小林、大きく伸びをする。
小林「ほどほどにして帰れよ。じゃあお先に」
   立ち去る小林。
   考えるように部屋中を見つめる中村、ふとデスクの上の散らばった書
   類を見て、それをまっすぐに揃えてみる。

〇 同・営業部(朝)
   山田、黒沢や加藤と話している。
   その様子を少し離れた所で見ている中村。
   笑顔で山田に話しかける小林。
小林「短い間だったけど、助かったよ。また気軽に営業部に顔出してくれ」
   相変わらず無表情で対応している山田。

〇 同・廊下
   経理部に戻る山田。
   その後ろから中村が走ってくる。
   中村、山田の前に立つ。
中村「山田さん……すみません。山田さんの行動、無駄って言って……」
   山田、無表情で中村を見つめる。
   ふと中村のネクタイを見ると曲がっている。
   山田、無言でそのネクタイをまっすぐに直すとそのまま立ち去る。
   山田の後ろ姿をじっと見送る中村。

〇 同・経理部
   散らかったままの部屋。
   所々片付けようとした痕跡が残っているが、あまり片付いていない。
   それぞれ仕事をしている大野、宮本、細見、大木。
   少し表情が暗く、ぼーっとしながら仕事している。
   そこへ山田が戻ってくる。
   仕事の手を止め、じっと山田を見る四人、次第に微笑む。
大野「おう、おかえり」
細見「もう、山田さんがいなくて寂しかったですよー」
宮本「営業の仕事はどうでした?」
大木「また経理の仕事頑張りましょう」
   にこやかに山田に話しかける四人。
   山田、無言で四人を見つめているが、すぐに部屋中を見わたす。
   無表情の山田、部屋の片付けをし始める。
   山田の行動を見ている四人、それぞれ見合わせ、山田と一緒に片付け
   始める。

〇 同・営業部
   乱雑に散らかった部屋に戻っているが、所々片付いている場所もあ
   り、以前よりはすっきりしている。
   黙々と仕事をする中村。

    ×     ×     ×

   書棚にファイルを取りに来る中村、ファイルの順番が違う所を見つけ
   ると元に戻す。

                              (了)

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