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前世はきっと、ロールキャベツ系男子。

ほら、美味しそうでしょ。食べたくなるでしょ。
と主張してこない控え目なお料理の隠れた魅力に気づいてしまうと、
途端に心躍ってしまう、ということがある。

そんなお料理の代表格みたいなオムライスに出会ってしまった、
昼下がりの商店街。

下町の人々で賑わう通りの片隅、階段を登ってふらっと入った軽食喫茶。
喧騒を抜け出して昭和の空気に飲まれる。

オーダーしてしばらく待つと、
きちっと丁寧に卵に包まれたオムライスが登場。

ぴったりと薄く広げられた卵に、プツッとスプーンを入れると、
てらてらと光るほどにたっぷりのケチャップと絡んだライスが、
はちきれんばかりに粒を揃えて中から覗いてくる。

細く千切りにされたピーマンと、ざっくり大きめに切られた玉ねぎが
シャキッと程よく食感を残して、
大ぶりのマッシュルームもぷりっと存在感抜群。
それらが、なめらかなケチャップライスと相性の良いこと。

なんだか、口の中が賑やかで楽しい。

これまで、
とろとろふわふわな卵や、色とりどりな具材のソースで魅せるような
見える部分の外側に全力投球のオムライスはたくさん見てきた。

けど、今日のは、
「私なんてそんなそんな。どこにでもいる者ですよ。」みたいな顔をして、
いざスプーンが入ったら、その瞬間自分の世界に引き込む。
胃袋をつかんで決して忘れさせない。罪な人だこと。(オムライスだよ)

どこでそんなテクニック覚えてきたのよ。ずるい。
とかなんとか考えていたら、ロールキャベツ系男子のオムライス君は
あっという間に私のお腹にすっぽり収まった。

心もお腹も満たされて、お店の階段を降りて外に出たとき、
なんだか夢から覚めた時みたいなふわふわした気分で帰路についたのであった。

coco


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