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映画『CLOSE/クロース』感想

『CLOSE/クロース』ルーカス・ドン監督。
ベルギー・フランス・オランダの共同作品。

素晴らしかった。
これはレオの罪悪感の話であり、おかえりモネを思い出しましたね。 潔く柔く、も思い出した。全然違うけど。
あと映像の美しさに岩井俊二みを感じた。花とアリス。全然違うけど。

ネタバレします。







レミが自殺する前に、レオとレミが気まずくなるんだけど。その気まずくなる過程がすっごく丁寧でリアルで。きっかけはクラスメイトからの2人の関係性への言葉や視線。それでまずレオがレミと距離を置こうとする。レオに距離を置かれて、レミもレオを避ける。レオは自分から避け始めたのに、レミが離れて行ったら、レミを視線で追いかけて、また仲良くしようとする。2人はなんとなくまた一緒に過ごす。でも少しずつまたレオはレミから離れようとする。そしたらレミはレオを追いかけてきて、レオの新しい居場所であるアイスホッケーの練習に顔を出してきたり。レオはそこに何ともいない感情を覚える。そして朝の待ち合わせをすっぽかして、2人は激しい喧嘩をする。仲直りをしないまま、レミはいなくなってしまう。

周りからの視線を気にしていたのは一貫してレオで、レミはレオに拒絶されたことを気に病んでるんですよね。レミにはオーボエっていう打ち込むこともあるし、周りの目を気にしないちょっと大人な部分を持っていたんだと思う。(もちろんレミにはレオに拒絶されたことで自死を選ぶ脆さや危うさもある。) レオはレミみたいに打ち込むものもないし、レミとの関係性からの逃避のためにアイスホッケー始めて(この男性性強化な習い事を始めるレオ…社会からの抑圧を感じる)、自分だけの居場所を作ったり。レミはレオにオーボエを吹かせてくれたし、自分の発表会を1列目で観るレミを嬉しく思っている。けどレオは、レミの領域には自分から入るのに、自分の領域にレミを入れることは拒むんですよね。。お泊まりもいつもレオがレミの家に行く形なのが、それを表してると思ってて。ただ、それは対レミだけでなくて、バチストも家に招くのではなく家に行ってるし、お兄ちゃんに関しても自分の部屋に来てもらうのではなくお兄ちゃんの部屋に行くし、レオ自体が自分のパーソナルな部分に人を招き入れるのが苦手な人なんだと思う。他人のそれには入り込もうとするのに。その意味では、クライマックスで、初めてレオが他人を自分の心の中に入れることを許すんですよね。レミのお母さん。
この話、前半はレオ・レミ、後半はレオ・レミのお母さんだったな。レミが亡くなってから一切写真も映像も出てこないのがよかった。もう、レミはいないんだという現実を突きつけられた感じ。
レミのお母さんがさー、レオに優しいけど、でも本当のことを知りたいと暗にレオに詰めてる感じがリアルだし、こわいし、でも気持ちはわかるし、でよかったな。それでいてレオが本当のことを吐いたら降りてと言って、でもすぐ我に帰ってレオを探す感じ。大人も辛いんだ。それはわかる。でも子供は守らないといけないんだ、みたいな。レミのお母さんがレオ!レオ!って名前を呼んで、最終的にただ抱きしめるっていうのがいい。お母さん、レオにマイナスの感情もきっとあるけど、レオは自分と同じくらい苦しんでいる同志でもあって。複雑だなーと。序盤のレミとレミのお母さんとレオが寝っ転がってるシーンは、後半レオとレミのお母さんがメインになるから、そこへの布石よね。

この映画はセリフが少ないし、説明セリフはほとんどない。会話も、元気?とか大丈夫?とか学校どう?とかお腹空いてない、とかで。特別な会話は全然ない。(レミとレオが夜にアヒルの子供の話をしてるのはちょっと哲学的だし、あのシーンはこの映画の中で特別だな)
なのに、レオやレミやレミのお母さんやお父さんの気持ちが、とってもわかりやすくて伝わってきて。監督の演出や、脚本の巧さに、あっぱれでした。てか主演2人は映画初出演らしい。すごすぎる。レオの目がとてつもなく魅力的だった。
素晴らしい作品だったーー

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