映画『1秒先の彼』感想

昨年試写会が当たってスクリーンで一度鑑賞。
期待値が高過ぎたためか、微妙だな、という印象。(後半レイカちゃんパートはよかった)

で、今回。アマプラで見放題になっていたので、久々に鑑賞したのですが、とても、とてもよかったです。
最近イライラしたり鬱々としたり心が不安定で、そんな中でこの作品を観たので、作品を包み込む温かさ優しさに涙が出た。

レイカちゃんは人よりテンポが遅い。本人はこの事を深刻に悩んだりはしてないけれど、時が止まったゆったりとした世界は、レイカちゃんのテンポに合っていた。自分を急かさなくても写真が撮れるし、蚊をはたける。知らない人の自転車を借りて、ゆったりと道を走る。風が吹いて、木々が揺れている。時が止まった世界はレイカちゃんの心のリズムを可視化したような世界だった。

後半のハジメくんのお父さんのエピソードもまたよくて。彼もまた世の中のテンポに追いつけない人で、レイカちゃんと違うのは、そのことに深刻に悩んでいたこと。死のうとした時に踏切が止まって、死ぬのをやめて、でも家族と家族が暮らす俗世からは距離を置いた。お父さんがあのバスに乗ってたのはハジメくんのラジオを聴いていたからなのだろう。そして図らずもまた時が止まって、10何年越しに妻と息子との些細な約束を果たす。お父さんがまた消えてしまうのもよくて。そのあとどうしたんだろう。生きてきてほしいなあ。
息子との約束に関してはレイカちゃんに託したからさらに1年越しになって。でもそのゆったりとした空気感が、世の中のテンポに追いつけなくたっていいんだよ、と語りかけてくれているようで、心に沁みた。
レイカちゃんの撮った写真があの日確かにお父さんが帰ってきた証になっていて、きっとレイカちゃんはそのことを自分から話すことはしないだろうし、その慎ましさが好きでした。不意にハジメくんがあの写真を発見して、あの日起こったことを伝えたりするのかなぁ。

とても優しい作品だな、と思いました。
男女入れ替えて、今はギリ見れるけど、数年後は観てられない感覚になってるのかな…そうだとしたら、今観れてよかったな。

すごく好きな作品になりました。
果耶ちゃんのファンとしても、レイカちゃんはなかなか見ない役柄だなと思った。

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