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3分でわか(った気にな)るポニョ解説

「崖の上のポニョ」みたけど、なんだかよくわからなかったよ、という人のために物語の解釈を3分ほどで紹介します。

「崖の上のポニョ」「ハウルの動く城」は視聴済みであること前提です(ネタバレあり)

映画の流れは4つのパートに分かれており、ストーリー展開はこんなかんじです。

  1. 宗介くんがポニョと出会う

  2. ふたりは別れ別れに

  3. ふたりは再会する

  4. いっしょに冒険して、共に生きることを誓う

宗介くんとポニョの関係は、友情や初恋などのかわいらしいものではなく、宮崎駿監督が「異類婚姻譚」という言葉を用いたように婚姻です。「ずっと好きでいる」と永遠の愛を誓うことで、世界のハメツを阻止します。たった5歳なのに重すぎる決断を課されることに違和感を持たれた人も多いのではないでしょうか。

では、もともと宗介くんとポニョが一心同体の関係だとしたら?

宗介くんがポニョをみつける場面、ハウルのこの場面と似ていませんか?

宗介くんとハウル、ポニョと心臓

少年時代のハウルが火の悪魔と取引をするために、自分の心臓をわたす場面です。

ポニョは、ハウルの心臓のような存在です。
自分の体の一部だけれども、意のままには動かせないもの。

正確にいうと一心同体ではなく、一つの身体に同居しているけれども動機は異なるもの、とでもいいましょうか。

ポニョを解釈する際の大前提として、最も重要な点は人間の祖先はデボン紀(約4億年前)に陸上に進出した魚類であるということです。なんとなくおわかりだと思いますが、この映画は生物の進化がテーマのひとつになっています。
わたしたち人間の身体には、魚類だったころの痕跡がたくさん残っています。例えば心臓が動くしくみもその一つです。
自分の身体なのに人間の意思ではどうにもならないことがたくさんあります。感情とか本能もそうです。
「崖の上のポニョ」はそういった人間の中に残るサカナっぽさとどのように向き合っていくのかを主題にしています。

ポニョを「宗介くんの中にあるサカナっぽさ」と読み取ると、物語はこんなふうに解釈ができます。

  1. 宗介くんは自分の中にサカナっぽさを発見する。
    しかし、保育園に連れていくとトラブルを起こしてしまう。

  2. サカナっぽさを抑え込んでいるあいだは、
    イイコになって家と保育園での生活に適応できる

  3. サカナっぽさは宗介くんを追いかけてくる。
    サカナっぽさが暴走するとマジカルな世界を楽しめるが、宗介くんの生きる現実の世界は水没してしまう。(ここで描かれているのは宗介くんの心象の世界です)

  4. サカナっぽさを愛し、共に生きていくことを約束する。
    親や社会もそれを受容する。

サカナっぽさは封印したほうが現代社会にはうまく適応できるのですが、心臓のないハウルが魔王になってしまうように、宗介くんも(人間は誰でも)ポニョなしで幸福な未来は望めないのです。だから、ポニョと共に生きていく約束をすることに大きな意味があるのですね。

で、結局ポニョとは何の寓意なのか。
自分の意のままにならない身体の中のサカナっぽさとは具体的に言うと何なのか。

おそらく、ポニョは大脳辺縁系あたりの働きをあらわしています。
「崖の上のポニョ」は人間の脳とその進化の話なのです。(例えば、心臓を動かしているのは大脳辺縁系が司る自律神経のはたらきです。感情や本能も大脳辺縁系が司っています。)
長くなってしまうので、くわしくは次回以降に続きます。

では、なぜ、宮崎駿監督は人間の脳というむずかしいテーマで、子ども向けの映画を作ったのでしょうか。

これには2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の影響が強くあるように思います。科学技術と宗教という問題です。これも、くわしくは次回以降に。

どんな人も、ポニョのような野生っぽさは持っています。
自分の中の意のままにならない情動とどう付き合っていくのか、これはとてもとても大切な問題で、日常のストレスから鬱、いじめ、殺人事件、テロ、戦争、宗教、自然破壊、環境問題まで、さまざまな困難の根底にあるものです。

人間の知能がどんなに発達して科学技術が進んでも、身体に残るおサカナっぽさを手放さずに、愛して良い関係を築いていこう!というのが、めちゃくちゃザックリですが、この映画を通した宮崎駿監督の提言だと思います。

なんとなく、わかったような気になっていただけたでしょうか?

この記事のタイトル「3分でわか(った気にな)る」としましたが、宮崎駿監督の作品が3分で理解できるわけないですよね。
繰り返し見て勉強して、ようやくほんのりわかる程度です。
昨今の流行に逆行するスローコンテンツです。そこが魅力だと思います。
一緒に気長に考察を楽しんでくださると嬉しいです。

不気味だとか支離滅裂だとかただの子ども向け映画だとか評されることも多い作品ですが、ポニョを「宗介くんの中にあるサカナっぽさ」と読み取り、人間の「うちなる魚」との共存を主題にした映画である、と考えると、巷の評判よりずうっとずうっと、壮大なテーマの、大人にも見ごたえのある作品であることがお判りいただけるかと思います。

<まとめ>

映画「崖の上のポニョ」は

  • 宗介くんとポニョは、ハウルと心臓のような関係である

  • 人間の中に残るサカナっぽさ「うちなる魚」との共存が主題

  • 人間の脳と進化をテーマにした寓話

  • 科学技術と宗教もテーマのひとつ

くわしい解説は次回以降に続きます😊



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