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「反応しない練習」を読んで

たまたまKindleでサンプルを読んだところ非常に面白かったのでそのまま購入してしまった本。最近読了し、とても有意義な本だったので紹介してしまおうと思った。

タイトルが生む誤解?

売れた本なので、YouTubeの解説なども存在しているのだが、そういった解説だけでなく、アマゾンレビューの中にも解釈を大きく誤っているものがある。

例えばこんな感じである

「この本の趣旨は、人に反応するな、期待するな、ということである」

「この本を読んで、相手のことを気にしないようにしたら、返って心を病んでしまった」

などである。

これらは、明らかに本の内容を誤って捉えているか、本を読まずにレビューしていると思われる。

本書の最大の論旨は「反応するな」ではない。「心の動きに気づこう」である。

■なぜ解釈の違いが生まれるのか?

この解釈の違いがうまれるのはなぜか考えてみた。

本書の中にこんな趣旨の章がある。

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世の中には様々な価値観があるが、それとの葛藤により生じる「感情をじっと観察すれば」、実は囚われている価値観なんてバーチャルなものも多い。それは妄想(煩悩)の一部のようなものでしかないと気づく。

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つまり、学歴も成績も成果も巷で凄いと言われるものも、実は他者が作り出した価値観に過ぎないので、そんなものに惑わされない方がいい、ということだろう。

ただし、イキナリ意識から妄想を捨て去ることは不可能。
まずは、自分の心の動きをちゃんと観察して、「あ、今怒ってるな」「嫉妬してるな」など、感情の動きにラベリングするところから始めましょう、と言っている。そして、それらの感情の大本の原因は先程述べたバーチャルな価値観であることが多い。こんな趣旨である。

■消極的に見える

しかし「葛藤には立ち向かうべき」「困難には打ち勝つべき」という価値観に慣れていると、本書にある「バーチャルな価値観にとらわれない」という一節には不自然さを覚えるのかもしれない。

バーチャルもなにも目の前にある「現実」を、「バーチャル」とか言って逃げてるだけじゃないかと。

世の中には、目の前に現れる現実に日々対処するのに忙しく、自分の心の動きに立ち戻る時間がない(というより、必要がない)方も多くいるものだろう。

生活を守るために苦しくても邁進している人、葛藤があるけどそれに正面から立ち向かおうとしている人もいる。

もしかすると、そういう方には本書は響かないかもしれない。

■「反応しないように」してしまう人

「反応しないようにした結果心を返って病んでしまった」このタイプの方は、いきなり本書に回答を求めてしまったのではないかと思う。

元々何らかの葛藤(対人関係とか)があってそれに対処するためにこの本を適用しようとしたのだろう。確かにこの本には「そもそも本来人にいい・悪いもなにもないのでジャッジするな」と書いてはある。

ただ、その前段階として、「あ、今私は、この人に対してこういう感情を抱いているな」ということをラベリングして認識することから始めましょう、ということが書かれていることを見落としているか、実行していないか、どちらかではないか。

実は、筆者は本の中で「様々な感情を持つこと(反応すること)」を否定していない。人間だから何からの感情が生まれたり煩悩を抱えているのが当たり前なのである。まずはそれに気づこうといっている。

何年もの修行の末、だんだんと、心が反応しないようになるということだろう。その第一歩としてまずは「気づく」ことの重要性を説いている。煩悩を捨てるというのはそもそも何年もの時間が必要なことなのだから。

■どういう人におすすめか

今のやり方を続けて葛藤を解消出来るのであれば、それもその人の生き方だし、そうやって心は形成されていくもの。

むしろ、そういったものを乗り越え、さんざん苦労したにもかかわらず今まで生きてきた人生に何らかの空虚感があったりする方にとって、新たな提案になる書ではないかとおもう。

結婚後家計を守るために必死に働き続け、職場でも葛藤し続けた挙げ句、家庭も失い職場も辞めた私にとっては、よい提案をしてくれた本である。コロナで暇になったので、一人で静かに心を見つめ直している。

囚われていたものが一つ一つほぐれていき、より人生がクリアに見えるようになった、というのが本書を読んだ私の感想である。

人によって感想が異なると思う。あなたの感想はどうだろうか。

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