降雪
今年も何度目かの雪が降ってきた
あなたと過ごした街を思い出して
ぼくはまた思考の彼方
ぼんやりと記憶を辿る旅に出る
あの頃あんなにもはっきりと感じていた
あなたの存在
もう今はどこにも感じることができない
どこを探しても見つけることができない
こんな光のなくなった世界に
生きている自分が時々虚しくなる
あなたの手を離してしまったのは
紛れもなく僕自身だというのに
思い出すのはあなたがいた日々
目に映るたくさんの事象の多くに
あなたの面影が宿る
喪失感は薄れるいとまもない
とろけるように掌で雪が溶けてゆく
こんなふうにこの思考も消えていけたらと
思う度に強くなる寂寞
きっと永遠に続いていくのだろう
さびしい
さびしいよ
身を切るような冷たい夜の淵
ぼくはひとりきりで震えるばかりで
(2024.3.3.0:37)