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『紗倉まなのダッチオーブンレシピ』を読む(※今回も書評できませんでした)

一昨日からnoteを始めた。

こういうものを書きたがるということは、「絶対、続かない」などと口では言いながら、生来は自己顕示欲が強いわけで、時間をかけた以上は文章を読んでほしい性分なのだ。

Noteを始めたことを知人にLINEで伝えたところ、「精神を病んでいるんですか?ちゃんと書評をしてください」という心温まるメッセージをいただいた。

くたびれたサラリーマンの箱庭療法みたいな記事を読んでくださった方々、お礼を申し上げると同時に、みんな大丈夫か?今日、会社で嫌なことがあったんですか?

そんなこんなで、今日、紹介する本は『紗倉まなのダッチオーブンレシピ』である。

ネットで検索してもこの本は出てこない、でるはずがないのだ。だって刊行されてないから。一体どういうことなのか、以下事情を説明しよう。

私がロシアから来日してすぐのことだが(※そういう設定です)、出版社の販売部に配属され、書店営業に従事していた。新刊のチラシを持って書店員に注文をもらい、自社刊行物の売り場提案をする仕事だ。

ある日の休日、ふらりと書店に立ち寄った。

写真集コーナーに足を運ぶと紗倉まな(※AV女優です)のコーナーを見つけたのだ。「あ、これ明石家さんまが好きって言ってた人だ」と思い、手にとってめくる。
「おー、スゲー」と眼光紙背に徹して写真を眺め、誤字脱字がないか、くまなくチェックしていると、背中をトントンと叩かれた。

「あれ、立ち読み禁止なのかな」と思って振り向くと、学生時代の友人セルゲイ(※仮名です)とイリーナ(※もちろん仮名です)のカップルだった。

「あれー、ニコライ(※私のことです、もちろん仮名です)。久しぶりじゃん。大学出て以来だけど、元気?確か出版社に入ったって聞いたけど」とセルゲイ。

イリーナも「ニコライ(※しつこいようですが仮名です)、久しぶりだねー」と笑顔で手を振る。

かつてゼミの同期だったこの二人。大学卒業後、彼女は新卒で外資系金融機関に勤め、彼氏は在学中に司法試験に通った秀才、噂では近々結婚することなっていた。

はっきり言おう。私は目の前にいる経歴も年収も眩しいばかりのカップルに「休日に一人寂しくエロ本立ち読みか」と思われたくなかった。

「あれ、紗倉まな、好きなの?」とセルゲイに言われた私。素直に「好きです、興味あります、できることならやりたいです」といえば良いのに言えなかった。

くだらないプライドが邪魔をして、咄嗟に「いやー、これさ。次の企画にしようと思って」と嘘をついた。小さな嘘は、時として雪だるま式に膨れ上がる。

「えー、スゴい。どんな企画?」と満面の笑みを浮かべたままのイリーナ、ここまで聞かれたら、男たるもの嘘をつき続けるしかない。
迷わずに「レシピ本だよ」と即答した。

「どんなレシピ本?」とセルゲイ。

「(しまった、そこまで考えてなかった、、)」。その瞬間、前日に書店員に案内した新刊チラシが私の脳裏をよぎった。

「紗倉まなの、、、ダッチオーブン、そう、紗倉まなのダッチオーブンレシピだよ。紗倉まながこうやって水着姿でダッチオーブンを持っている表紙にしようと思って。」と言って、読んでいたページの紗倉まなの写真を二人に見せた。

かくして、世紀の奇書『紗倉まなのダッチオーブンレシピ』は生まれた。

大嘘もいいところである。そんな企画、企画書の時点で社内で袋叩きに遭う。一瞬でパージされる。ハイソな本を作る出版社の販売会議で「なぜ、紗倉まながダッチオーブン持っているんだ?」と販売部のベテラン社員に凄まれたら、私は恐ろしさのあまり失禁するだろう。

それに、だいたい、なんでビデオ女優が水着でダッチオーブンを持っているのかも分からない。シュール過ぎるだろ、そんな表紙。レシピ本だぞ、もう少し考えろよ。

そういう事情を知ってか知らずか、彼らは妙に納得していた。とにかく私は「出版業=編集者」と言う世間の歪んだイメージに助けられたのだ。

それ以来、私はいつか『紗倉まなのダッチオーブンレシピ』がどこかの出版社から刊行されないか、密かに待ち望んでいる。

刊行された暁には「いやー、本当はウチから出したかったんだよねー」と言って、あの時セルゲイたちについた嘘に整合性を持たせるつもりだ。

さて、6月の投稿はこれで終了、予想通り三日坊主だった。

次回こそ、ちゃんと書評します。

本コンテンツはフリーです。共産圏出身なので、”良いものはみんなで分け合う”のが基本です。だいたい、こんな文章にお金を払う人はどうかしてる、お金の使い途を家族と一度ちゃんと話し合いましょう。そのお金でまともな本を書店で買ってください。なお、書店店頭で写メする人は全員粛清です。