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芬語講師、フィンランドへ行く 1

自己紹介

こんにちは。フィンランド語の講師をしております西野と申します。
主にオンライン個人授業で教えています。最近は少人数のグループ授業もやっております。
講師活動は2019年から始めたので、もうすぐ丸5年ですね。
いやぁ、時の流れは速い速い。

フィンランド語との付き合いは大学からなので、再来年で20年になります。
何も知らない若造だった私がもうすぐ不惑です。恐ろしい。
フィンランド語との腐れ縁がいつまでも続いている私ですが、先月5月後半に久しぶりにフィンランドへ行ってきました。

その時の記憶をnoteに残しておこうと思います。
対面授業であれば授業終わりに何となく雑談やら旅行の話やらできるんですが、オンライン授業だとなかなか難しいですね。
生徒さんやフィンランド(語)にご興味ある方が気軽に読めるよう記事にしておこうと思い立った次第です。

生徒さん以外に公開するのはやっぱりちょっと恥ずかしいな、と思ったら場所を移すかもしれません。ご了承ください。

それでは私の2週間のフィンランド滞在記、御笑覧くださると幸いです。

最初の難関、入国審査

実は英語ができません。
さる2008年、留学へ向け英語フィンランド語両方を勉強していたんですが、とあるフィンランド人留学生が
「フィンランドはフィンランド語ができれば英語はいらないよ」
と私に言い、
「それもそうだな」
と思った私はそれ以来フィンランド語だけに集中して英語の訓練はまったくやりませんでした。今考えても向う見ず。
フィンランド語に集中しても流暢というレベルには留学前になかなか達せず、留学の最初の1カ月間くらいは相当苦労したので、フィンランド留学をこれからお考えの方はあまり真似しない方がいいかもしれません。

英語ができない私は入国審査でもフィンランド語を使うことになります。
起こりうるパターンは2つ。

1. なごやかに世間話が弾みスムーズにハンコがもらえる
2. ひどく怪しまれる

パターン1なら何も問題ないのですが、時折パターン2になることがあります。なぜなら私の行き先は大抵オウルです。私の留学先だったので友達がいるのです。しかしオウルは観光地でも何でもない。
観光地でも何でもないオウルに行きたがるなぜかフィンランド語を話すアジア人。あやしいことこの上ない。
入国審査くらい英語で済ませばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、それができないくらい私の英語は壊滅的なのです。

さて、今回の入国審査。
「Hei」
「Hei, 滞在の目的は何ですか」確か英語で聞かれました。
「休暇で来ました」
もう堂々とフィンランド語でいくことにしました。怪しまれたら全力で言い訳しようと考えながら。
「休暇ですね。どのくらいの期間ですか」
相手もフィンランド語で返してくれました。一安心。
「2週間です」
「2週間ですね。どうしてフィンランド語話されるんですか」
「何年も前にフィンランドで勉強していたんです」
「フィンランドのどちらで」
「オウルで」
「へえ。そのくらいフィンランド語ができたら、楽しいでしょうねぇ」
そう、楽しいんですよ。授業準備で毎日ヒィヒィ言いながら辞書を引いている私にとって、フィンランドで多少楽しい思いをするのは唯一のご褒美のようなものです。
「何を勉強していたんですか」
「フィンランド語です」
当時大学で言語学をやっていた折、道を外してフィンランド語の沼にはまって抜け出せなくなったのでした。
「そうですか」
そのほか世間話の延長のようなやりとりをいくつかしたあと、審査官はにこやかに笑ってパスポートを返してくれた。
「それじゃあ」

幸い、今回はパターン1でした。怪しまれなかった!
入国審査がなごやかに終わると気分もすがすがしいです。このとき早朝の6時ごろ。天気もいいし、多少疲れはあるけどいい朝だ!
さあ7年ぶりのフィンランドだ、と感慨にふける前にまだもうひとつ難関があったのでした。

eSIMが申し込めない

最近はeSIMという便利なものがあるらしいぞ。何とかなるだろう。
携帯電話に関してはそれだけの知識と心構えでヴァンター空港まで来てしまいました。迂闊すぎる。
手元のスマートフォンと空港のWifiでeSIMをとりあえず検索してみます。いろいろ見て、ElisaのeSIMの申込ページまでたどり着きました。
さすがElisa、何でもやってるなぁ。私もフィンランドの電子書籍はElisaで買っているんですよ。(しかしこの旅行中にElisaの電子書籍部門閉店のニュースを聞きショックを受けることになる)
クレジットカード番号を入力して、決済です。するとクレジットカードからSMSの二段階認証を求められました。
はいはい大丈夫ですよ、とSMSを待ちますがスマホはうんともすんとも言いません。
あれ? なんで?
よく見てみると日本で普段使っているSIMカードがまったく機能していないではありませんか。7年前は「今から国際ローミング開始します」みたいなSMSが来ていたはずですが、それもありません。

調べてみると私が使っている通信事業者は国際ローミングに別途申込が必要になっていました。書類で申し込んで、2、3日かかるの? ぎゃあ。
きちんと確認しておくべきでした。前大丈夫だったというだけで油断していたのです。ひどく後悔しましたが、朝から落ち込んでもいられません。

もうeSIMは諦めよう。eSIM、使ってみたかったなぁ。
フィンランドのR-kioskiでプリペイドのSIMカードを買います。
「SIMカード取り出すときに使うアレ、あのスティックないんですけど」
日本語でも名前がわからないアレがありません。普段エコバッグを持ち歩く私ですが、さすがにアレは持ち歩いていません。
「大丈夫ですよ。付いてますよ」
杞憂でした。レジで会計を済ませた時にアレはもらえました。よかった。
もらったアレでSIMカードを入れ替えて、鉄道駅で切符を買い、いよいよヘルシンキへ向かいます。

Hakaniemiのマーケットホール

ヘルシンキについたのは朝ですが宿泊先に荷物を預かってもらえました。機内食で朝ごはんは食べたものの腹が減ってきました。宿泊先はHakaniemiのマーケットホールの近くだったので、カフェのサンドイッチを求めて歩き出しします。

ホールの中のカフェでは朝ごはんセットがまだ提供中でした。確か時間は9時ちょっと前。

朝ごはんセット10ユーロ。もう円安のことは考えないと覚悟は決めてある

隣のテーブルのおばちゃんたちのおしゃべりが耳に入ってきます。担当のお医者さんに随分不満があるようです。まあ、いろいろあるよね。
おばちゃんたちのおしゃべりが夏の予定の話になり、明るい話題に私もなんとなく安心しながらサンドイッチを食べていました。もうすぐ夏なんだなぁ。

食べ終わって、ホールの2階も見て回ります。確か石鹸屋さんがあったはず。
まだ10時になっていなかったので、開いているお店も買い物客も少なくて静かでした。
あったはずの石鹸屋はなく、かわりに空き店舗がひとつ。そこに隣のお店のご主人が佇んでいました。
「ここに石鹸のお店ありませんでしたっけ」
「あったよ。でも閉まっちゃったの。他の商売もしてるんだけど、石鹸の部門はこの3月に」
そうだったんだ。あのお店は店主のおじさんが石鹸を小さくカットもしてくれて、お土産に買っていくと喜ばれたんだよなぁ。
空き店舗を少し寂しい気持ちで眺めながら、隣のお店のご主人と「さみしいね」「ところでどこから来たの」「日本から?」「船の仕事してたから横浜と大阪には行ったことあるんだよ」などと世間話をして、Hakaniemiのマーケットホールを後にしました。

ここからヘルシンキ観光の話を期待している方がいたら申し訳ないです。私はこれから勉強できる場所を求めて図書館に行って、そこで集中力が切れるまで勉強して、あとはホテルに戻って寝る、という旅行客の風上にもおけない行動を取ります。
この旅行の主な目的は2つでした。友達に会うこと、それからYKIテストを受けること。YKIといのはYleiset kielitutkinnotの略で、フィンランド語のYKIテストはフィンランドの国籍取得にも関わってきます。
国籍をとる予定は全然ないんですが、フィンランド在住の生徒さんがいつか受けたいとおっしゃっていたので旅行のついでに受けると決めていました。その時のドタバタ受験劇はまた別の機会に書こうと思います
ヘルシンキについたのが木曜日で、試験は土曜日だったので、勉強しなくちゃな、と思っていました。まあ直前にジタバタしてもしょうがないのですけど。

ヘルシンキ市の図書館Oodiへ

線路を超えて図書館へ。保育園児たちも架道橋の上から歓声をあげていた。動く列車、いいよね
ヘルシンキ市の図書館。とても大きくて写真には入りきらない

Oodiを訪れたのは初めてで、2階の3Dプリンタやらオンラインゲームの個室やらがあるのにはびっくりでした。
私は図書閲覧スペースがある3階の席に陣取って、日本から持ってきたファイルを開きました。
ファイルには小説『容疑者Xの献身』の本文とそのフィンランド語訳『Uskollinen naapuri』を書き起こして両方を並べたものが入れてあります。以前上級クラスで使っていた私の授業ノートです。
私のフィンランド語をどうにか仕事で使えるものまで引き上げてくれた思い出のノートで、ついつい試験前にも縋ってしまいます。

お昼は図書館1階のレストランで
フィンランドでよくあるビュッフェ式のお昼。ナイフとフォークが見つけられず全部スプーンで食べた。ナイフフォークは食べ終わった後にカウンターで見つかった

お昼休憩をとったあとも少し勉強して、一休みにホテルに戻りました。
時間はまだ早かったのですが、飛行機でやはり疲れていたのか、ベッドに横になるともう起き上がれませんでした。

こうして1日目が終わります。つらつら書いていたらもう4000字ですね。読んでいただいた方、ありがとうございます。

また気が向いたときに続きを書こうと思います。それでは。


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