最近の記事

坊ちゃん刈り

彩音は、母親に背中を押されると弟と一緒に店の中に入っていった。 母が、カットのチケットを2枚買うのを呆然と見ていた。 店の外にある混雑具合を示すサインは、黄色。 彩音は、母と弟と一緒に待合の椅子に座った。 彩音は、肩まで伸びた髪を触ると、キューっと胸が痛くなってきた。 本当は、もっと長く伸ばしたかった・・・・。 しかし、母が髪を伸ばすことを許してくれなかったため、彩音の髪は、いつも顎のあたりで揃えられ、肩くらいまで伸びてくると、母の行きつけの美容院で、また顎のあたりま

    • ゆりかご

      「もう、終わりにしよう」 俺の言葉に、百合奈は、泣いて抵抗した。 「いやだ・・・・諦めたくない・・・・・」 おっとりしていて、自己主張しない百合奈が、嫌だというのを聞くのは結婚して初めてかもしれない。 しかし、俺もこれ以上は我慢できなかった。 「これ以上、百合奈が苦しむところを見たくない。今までだって二人で十分頑張ってきたんだから、これからは、二人で楽しく暮らしていこう」 百合奈は、まだ諦めきれないのか、黙って泣いている。 百合奈と結婚して15年。 子どもには、恵まれ

      • 自分の知らない自分

        「長い髪、鬱陶しいなぁ」 不意に夫が口にした言葉に雪は、愕然とした。 大切に伸ばしてきた髪を雪はもちろん、夫も好きでいてくれていると思っていた。 しかし、次の言葉でそれが今では現実ではないことを思い知らされた。 「もうすぐ梅雨だし、短くサッパリと切ろう」 切ろうというが、夫の髪ではなく、妻である雪の髪である。 雪は、恐る恐る聞いてみた。 「短く、てどのくらい?」 「最低でも刈り上げて、耳は出すよね。短い方がさっぱりしてていいじゃん。よし、今から床屋いくよ」 雪は、絶句し

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          妖精の変身

        坊ちゃん刈り

          夏仕様

          「見てくれよ~。うちの姫たち、ほんっと可愛いだろう~」 「ほんとだー。かわいいなー」 聆は、柊羽が見せてきたスマホの画面を見ることなく、棒読みで答えた。 飲み会で繰り広げられる、子ども自慢に、聆は飽き飽きしていた。 独身の聆には、子どもの可愛さもよくわからないし、ましてやよその子どものことなど、どうでもよかった。 「お前、ちゃんと見てないだろう!見てみろよ!ほんと、可愛いんだからさぁ」 今夜の柊羽は、やたらとしつこい。 聆の目の前にスマホを突き付けてきた。 「んっ!」

          夏仕様

          地元の生活 〜衆子の覚悟〜

          秘書からの電話を切ると、衆子は溜め息をつき、スマホをソファーに投げつけた。 夫が、女性との写真を週刊誌に撮られ、明日には発売されるという。 妻がいる身でなんてことを・・・と、清いことを言うつもりはない。 もともと、夫とは、家同士が決めた結婚だし、衆子の周りには、そんな人ばかりだったせいか、結婚なんてそんなものだと思ってきた。 とはいえ、自分以外の女性に手を出すとは、釈然としない。 それに、遊ぶのなら、どうしてもっと上手くできないのか。 浮気なんて、所詮、家庭の問題であり、モ

          地元の生活 〜衆子の覚悟〜

          地元の生活④

          事が起きたのは、美千代が中学2年生の時だった。 父の女性関係が、週刊誌にスクープされた。 父の生きる世界では、こんなことはよくある話で、法を犯したわけでもなく、モラルと家庭内の問題である。 しかし、思春期の美千代は、父への嫌悪感が募っていた。 そして、こんな時、支援者に頭を下げて回るのが母の仕事であることも、美千代の苛立ちを増幅させた。 週末、母の衆子が、地元に帰ってくる。 美千代は、空港まで母を迎えに行った。 到着口から出てくる人混みの中、母の姿を見つけるのは簡単だっ

          地元の生活④

          地元の生活③

          美千代が、小学四年生の夏、父が政界への復活を果たした。 しかし、美千代の生活は、何も変わらなかった。 「先生のお嬢さん」という肩書が復活したことと、地元での生活になじんできたことで、町の人は優しくなったが、東京に帰ることは叶わず、地元での暮らしが続いた。 母は、東京に行くことが多くなり、美千代は、ほとんどの日をお手伝いさんと二人で過ごしている。 それでも、母は、ほんの少しでも美千代といられる時間があれば、地元に戻ってくる。 それにひきかえ、父や歳の離れた兄たちが、地元に来

          地元の生活③

          地元の生活②

          衆子と美千代が地元に引っ越して3か月が経った。 あの日、東京から来た衆子と美千代を迎えた地元の秘書と運転手、お手伝いさんは、二人の変わりように誰だか気づかないほどだった。 小さなリュックと手提げバックに入る荷物しか持ってこられなかった美千代は、学校に行くために必要なランドセルや洋服を町の店で揃えてもらった。しかし、所詮、落選議員の家族、町の人々の対応は冷ややかなものだった。 東京にいたころは、運転手付きの車で、誰もが知る名門女子校に通っていた美千代だが、ここでは、学校ま

          地元の生活②

          床屋女子が熱い!

          眉子が、美容院で雑誌を読んでいたら、こんな文字が目に飛び込んできた。 「今、床屋女子が熱い!」 記事によると、 「今、床屋に行く女性が増えている。ひと昔前であれば、女性が床屋に行くと言えばシェービングのためだったが、若い女性を中心に床屋で髪を切ることがブームになっている」 という。この記事には、何人もの女性の写真が添えられていたが、どの女性も短く刈り上げた個性的なヘアスタイルで、ほとんどが10代~20代の若い女性。想像する町の床屋とは違う、おしゃれな雰囲気を醸し出していた。

          床屋女子が熱い!

          地元の生活

          落ちればただの人。 そんな選挙の無情さを知ることになったのは、美千代が小学校1年生の時だった。 祖父の跡を継いだ父が、まさかの落選をした。 代々、政治家の家系で、嫁にきた美千代の母の家系も政治家一族という代議士一家に生まれた美千代。そんな中での父の落選は、美千代の生活を大きく変えた。 親族会議の結果、選挙区の地盤固めのために、美千代と母の衆子が選挙区に移り住むことが決められた。 家の中のただならぬ雰囲気を感じていた美千代だったが、いつもと変わらず楽しい学校生活を送っ

          地元の生活

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          ウェディングフォト

          ウェディングフォト

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          断髪インタビュー〜美久瑠〜

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          育休明け前にやること①娘の散髪

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          お姉さんチームに異動になりました!

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