名作映画『小さな兵隊』(1963)

今回取り上げるのは、昨年亡くなったばかりの映画界の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール(1930〜2022)の初期のモノクロ作品である『小さな兵隊』です。

この作品はどう言った意味で重要なのか?それは、彼の「ミューズ(女神)」として活躍した、名女優アンナ・カリーナ(1940〜2019)を主演女優に据えた、初の映画であるということです。相も変わらず、アンナはとっても可愛らしく、男を振り回す小悪魔ぶりを遺憾なく発揮。「恋をしたことがない」と豪語していた主人公を、あっという間に虜にしてしまいます。

しかし、内容はかなり政治的。ゴダール自身の思想も色濃く表現されています。撮影時のフランスは「アルジェリア戦争」の真っ只中であり、主人公であるブリュノも、表面上はカメラマンながら、とある秘密組織に属しているという設定。さらに、その組織から二重スパイの疑いまでかけられてしまいます。そんな状況の中、彼につきまとう謎の女ヴェロニカ(演アンナ・カリーナ)とは一体何ものなのだろうか…。

興味深いのは、ブリュノとヴェロニカの対話のシーン。まるで、ブリュノという俳優の姿を借りて、ゴダールがアンナと蜜月を過ごしているような感覚に陥るのです。
「たばこを吸う彼女が好きだ」
このセリフは、ゴダールがそのままアンナに捧げた言葉そのものであると言えるでしょう。これから二人は共にヌーヴェル・ヴァーグを牽引していくのですが、ゴダールはよくアンナの「喫煙シーン」をカメラに収めていきます。『女は女である』(1961)でも、彼らの集大成とも言える『気狂いピエロ』(1965)でも、アンナは常にタバコを片手に、おしゃれな服を着て、男を弄び、そして我々に笑いかけるのです。

のちに破局を迎える二人ですが、いわゆる「アンナ・カリーナ時代」に撮られた作品群は、映画界に今でも燦然と輝きを放っています。そう思う時、私は『気狂いピエロ』のラストシーンを思い出さずにはいれません。

みつかった
なにが
永遠が
海に溶け込む
太陽が

最後は『気狂いピエロ』のお話になってしまいましたが…。ではまた。
https://www.youtube.com/watch?v=JESMKZjgmng(『小さな兵隊』予告)
https://youtu.be/Zdkhf5r5fog(『気狂いピエロ』予告)

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