第二章 変わり移り行く流れ

ここは現実世界。シズク・オトナリはドラセナの看病をしていた。以前の異次元世界へのワープで疲れが出たのか熱を出していた。安心するような笑顔を見せながら濡れタオルをドラセナの額にあて、ドラセナを見守っていた。ふ、とドラセナは目を覚まし始める。笑顔は安心するようなより深い笑みになった。
 「よかったね。もう大丈夫よドラセナ」
姉シズクがそう述べるとドラセナは姉の顔を見て頷いた。窓の外を見ると雀が空高く舞っていくのが見えた。ベッドから姿勢を起こすとシズクが寝かせにくる。まだ不安なシズクはドラセナに言い聞かせにくる。
 「まだダメよ。休んでなさい。明日があるんだから」
と言われたドラセナはおとなしく頷いて横になった。いい匂いがする中、しばし休息をとることにした。ご飯の時間になるとすっかり外は真っ暗だった。以前にも伝えたがドラセナとシズクは二人兄弟であって両親がいないのである。この時間は二人にとってはかけがえの無い時間である。楽しく兄弟で話せる時間なだけにドラセナはこの前の冒険の話をしている。が、まだ二人は以前のことを夢として認識しているのだが二人が現実を知るのもそうと遠くはないのだった。夜遅く、シズクが何かに反応して起きる。向かい側のドラセナの寝室から青白い光が溢れているのを発見する。恐る恐る近づくとドラセナの手の甲の周辺が光のもとになっているようだった。不気味に光る手に近づいていくとふ、と後ろから声がした!
 「誰だ!」
 途端にした声に驚いたシズクは無意識に問いかけた
 「あなたこそ誰!?ここは妹のお部屋よ!?」
 その言葉を聞くと後ろの影は朧げに姿を表わした。何かの民族装束のような着物を見に纏い、ニヤリと笑っている。月明かりと共に足元が燃えているように見えるが不思議と熱くないし燃え移りもしない。目の前の存在に目を疑うがシズクは初めて確信する。今度こそ幻ではなく現実に起きていることだ。しかし敵ではないのか襲ってくる気配が全くない。何かを伝えにきたのか消え掛かっているような気もする。するとそれを察したのか影の装束は口を開く
 「我の名は・・・アローン・・・。ここにいるは何かの運命(さだめ)によるものだろう。口を閉じてきけ・・この世界にある危機が訪れようとしている。この世界を巻き込む大事なりうる。ん、もしやお前は目の前でこの娘が消えてしまうことを見聞きしたのではないか?明らかに何かの物覚えをしての反応だな。話が早くて助かるがな。この小娘は・・・そうだな・・・ある可能性を抱えている。それが何かまではわからないがこの娘はその奇跡を一度ものにしているのだ・・遅くか早くかこの娘は危険だが変革の一端とも呼べるべき力に目覚めることになる・・。」
 シズクはいきなりのことなので何のことだかわからないが彼の言っていることの一部を理解し再び質問をする。
 「妹に起きていることは何なの。あなたは誰で、なんでそんなことを私に伝えるの!?何を知っているの?」
 問い返すシズクに無知を嘲笑うかのように鼻で笑って見せ語り始める。
 「なぜ?お前たちはどうなろうと知らないが、この娘は選ばれた。それだけだ・・。もしこの話を理解したなら少なくともここの近辺からは人を遠ざけた方が身のためだ・・なぜならもうあまり時間がない。やがてくる厄災はこの世界を飲み込もうとしている・・この世界にいずれ来る驚異、厄災が訪れるのはもはや運命・・・混沌が迫ってくるのは時間の問題だ!!」
 そう伝えると白い装束アローンは消え始めていた。シズクは呆気にとられながらその一部始終を見つめやがてアローンは消えていった。彼?の伝えていたこと、妹に起きた事象、何もかもが意味不明だが起きている事実は明らかに異常かつ奇妙だった。それが相舞ってか言っていた驚異、厄災もまた嘘ではないことがわかった。唯一不安が残るのは時間という懸念。とても胸騒ぎがするシズクはこの日を境に送る日々が目まぐるしく変わっていくのだった。朝を迎え、ドラセナが起きる。目を覚ますと家が静かなことに気が付くとドラセナはシズクを探したがどこにも姿はない。扉を開けるとシズクがいた。何かの荷物を集め始めていた。まるでキャンプにでもいくかのような大荷物をまとめていた。周りの近所の人も何人か挨拶に来るがどうやら引越しをするという話らしい。
 「おねちゃんどこかにいくの?」
 不安がるドラセナに優しく抱きしめる。
 「大丈夫よドラセナ。一緒に京都にいくのよ」
 「京都?お家は?」
 「ここにはもう住めないのドラセナ。ごめんなさいでもお姉ちゃんと一諸だから大丈夫よ。お家ももうあるわ。さあ行きましょ。すいません、急用なので失礼します。」そう近所の人に伝えると先を急ぎ始めた。自動車に乗ると京都へと向かうのだった。シズクとドラセナの長い旅が始まるのはここからだった。シズクはドラセナをとある場所へと連れていった。何かの気休めと考えたのが清明寺である。かの有名な安倍晴明を祀り語るとこのようだ。対してでかくもなく普通とは言わないが確かに得体の知れない気のようなものを感じなくもないそう思えたドラセナ。強まるそよ風の寒さに身を震わせる。シズクは何らかの理由でお守りを買いに来たみたいだ。ふたつ買い一つを自分にもう一つをドラセナ自身に与えた。厄除けのようなものだ。いつもと違う雰囲気を漂わせるシズクを醸し出すかのような顔立ちを見せるシズクはドラセナの手を握り、目当ての場所へ全て行った。1日かけて歩いたドラセナは疲れが出たのかお家に帰りたくなったが姉を困らせまいと静かにおとなしくしているしかし姉のシズクはそれを察したのか
 「疲れたね。帰ろうかドラン」
 笑って話してきた姉の顔を見てものすごく安心したドラセナは強く頷いた。引っ越してきて初めてのお家。ドランは元のお家ではないためとても不安がった。シズクは料理を一緒にして一緒に寝ようかと提案してきたのでその提案に満足なドラセナはものすごく喜び今を後にした。

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