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ミキマキが熱くする!歌謡曲という夢物語。


筒美京平未発表曲をスペシャルコラボで

平山みき&野宮真貴「アーティスト/ホットな地球よ」が2月14日リリースされた。これが思いの他いい。前から気にはなっていたがちゃんと聴いたらホントに2曲とも素晴らしい。
筒美京平の未発表曲に長年の盟友である橋本淳が歌詞を付け、それを平山みきと野宮真貴が歌うという豪華なスペシャルコラボ。
たいていこういう未発表曲がありましたー的なコラボは楽曲としてはつまらないものが多いのだが、ポップな歌謡曲に突き抜けた新しいものになっている。

歌謡曲は物語の提示

「アーティスト」の歌詞はタイトルからもわかる通り直接的に筒美京平へと捧げられているもの。しかし、それを除いたとしても遠くへ旅立ってしまった彼へ向けた大人の女性の想いが伝わってくる純粋な歌謡曲になっている。歌謡曲はそこに物語を提示することに徹していることが魅力だろう。そこから何を感じ取るかは聞き手に委ねられている。
散りばめられた茅ケ崎や鎌倉の地名も想像を広げるスパイスとして機能している。そこに思い出があろうとなかろうと想像は自由なのだ。
今の音楽は割と個人的な感情の羅列でできていてそこに物語を感じることは少ないような気がする。

ちょっとエッチな歌謡曲

「ホットな地球よ」では男女のオンザベッドストーリーを思わせる実に愛らしい歌詞となっている。
御年84歳の橋本淳先生の綴る歌詞のなんと瑞々しくかわいらしいことか。まるでそれはポップな官能小説のようで本当に聴くたびに感動するレベルである。
茶目っ気のあるおしゃれとでも言うのだろうか。言葉の語感を大切にしているのも伝わってくる。
昭和の価値観ではちょっとエッチなこと、性的なことを少しでも口にするのも憚られていたと思う。でも、歌にすることでサラっと言えてしまう。このちょっとエッチなワンフレーズ、ツーフレーズが効果的に物語に感情移入させる効果があったのではないだろうか。若者でも昭和歌謡に惹かれる人が一定数変わらず居続けるのはそんな"ちょっとエッチ"に魅力を感じるからかもしれない。

アレンジもすごい

「アーティスト」のアレンジはあの船山基紀と橋本淳の息子でMISIAを発掘したことでも知られる与田春生。モダンで大人ビターな洋楽を思わせる仕上がりで力の入りようが違う。「ホットな地球よ」はピチカートを思わせる気持ちの弾む曲調でひたすらポップ。担当したのはポップ職人である本間昭光。適度にステップを踏みたくなる「アーティスト」もいいし「ホットな地球よ」のエネルギッシュな感じもたまらない。絶賛エンドレスリピート中だ。

歌謡曲という夢物語

この2曲を聴けば聴くほどにいろんな想像が膨らんで止まらなくなる。現実を直視するようなリアルな曲があってもいい。でも、そればかりじゃ人間つらい。曲を聴いて世界が広がる。そんな夢物語の世界にたまに浮気してもいいではないか。そんな気分にしてくれる。
夢物語を歌として口に出せばまた気分もアガってくる。その効果はバカにできないと思う。今度一人カラオケに行ったら飽きるまで歌おうと思っている。

大人も夢を見ていい

また御年74歳の平山みきと63歳の野宮真貴の大人の女性の輝きも見過ごせないコラボだ。すばらしい楽曲も誰が届けるかによって意味合いが変わってくる。もちろんビジュアルの美しさはあるが、40年、50年歌い続けてきたすごみも感じる貫禄コラボという感じ。
平山みきの今の声は本当に味わい深く素晴らしく甘く安定感のある野宮真貴の声と混ざり合い絶妙なバランスで聴き手に届いてくる。
彼女たちが物語のプレゼンターとなることで大人も夢を見ていいんだというそんな心強さも感じさせてくれる。

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