女の友情について考える。あいつ今何してる。
何度もネタにしているが、引っ越しをした。
洋服を捨て、本を売りに出し、部屋の目につくところに置いてあった謎の荷物も出来る限り処分した。昔のクレジットカートの約款、古い保険証券、干支を1周以上回っている年賀状・・・何度か引っ越しをしたけど、その度に捨てずに残り続けた思い出の残骸たち。
10代・20代からの個人情報が含まれるので、手動のシュレッダーまで買って、残骸を木っ端みじんに切り刻んで捨てた。
しかし、どうしても捨てられなかったのが、写真だ。
今はスマホ、少し前はガラケーやデジカメに収められた、30歳以降の画像は記録媒体に残っているが、それより前の、日本が不景気とは言え、失われた10年で済んでいた頃の、現像した写真たちだ。画像ではなく写真だ。
表面がツルツルしていて、デジタル処理されたそれとは明らかに違う、少し白っちゃけた写真の山だ。引っ越し作業中に、幾度となく目に入り、想い出が津波のように押し寄せ、手が止まった。
うわ、若い!眩しい!と自分の姿を見て思ったし、なんだこのメイクは。ファンデーションが全く合ってないし、眉毛も細すぎる!と恥ずかしくもなった。
そんな青春輝かしい膨大な写真に最も一緒に写っている友達とは、この3年会っていない。
仲違いしたワケではない。
友達は結婚し、子どもが居る。主婦として日々忙しくしているだろう。ただ、夫の金遣いが荒く、借金が発覚したのが4年ほど前だ。それ以外にも、夫が嘘をついて会社を休んでいたことが発覚し、友達は、その間も一人で家事育児に励んでいた。
取り乱した友達は、お酒が飲めないのに、子どもを預けて、私を居酒屋に呼び出した。出張帰りで慌ててお店に行ったら、夫の借金といくつかの噓が発覚したと話してくれた。
「離婚した方がいいかな・・・?」力なく聞かれた。専業主婦の友達に、「離婚はしない方がいいんじゃないか」と答えた記憶がある。
その答えに今も後悔は無いが、結婚して家庭に入り子育て真っ最中の友達と、独身で働いていて自分のことしかしていない私とでは、共通点が無さ過ぎたのだ。同じ小中学校に通い、毎日のように遊び、互いの家も行き来し、旅行にも行き、動物占いも六星占術も同じで、本当に気が合う、何時間あっても話しが尽きなかった友達だったが、気が付けば、世界線が違ってしまった。
友達が結婚しても、子どもが生まれても、私が転勤しても、連絡は取り合っていたし、時間が合えば遊びに行ったり、食事に行った。
それなのにあの日、友達の悩みを聞いたときに、改めて感じてしまった、「あ、私とは全然違う生き方をしている」と。多分それは、友達も感じ取っただろう。私と彼女の強烈な違和感だ。「こいつ、変わったな。こいつとは生き方が違うな」というザラっとした感覚。何十年も仲良くしてきたからこそ、瞬時に感じてしまった。
世の中には、妻に知られずに借金をしている夫はたくさんいるだろうし、仕事と偽って家に帰らず、妻にワンオペレーションを強いている夫なんて、家事を手伝う夫よりも多い気がする。だが、それを友達には言えなかったし、代わりに毒にも薬にもならないようなことを言った気がする。
話しの内容よりも、友達と私の事情の違いが気になって仕方なかった。
埋められない溝がそこにはあった。
その後、居酒屋以降も何度か友達と会ったが、夫・子どもという友達を取り巻く環境と、主婦という友達のおかれた立場、自分との違いばかりが気になってしまうようになった。
いや、本当はうすうす感じていたのかもしれない。夫婦喧嘩の話題が結局はのろけ話に聞こえたこと。子連れてご飯を食べていたとき、会話の大事な局面でオムツ替えに走った友達。子どもをあやすのに必死な友達を微笑んで見守ることしかできなかった私。
会話の端々に小さなストレスを感じていたし、生活、生きる道の違いを違和感として捉え、共感し合えていない状況に気づいていたが、それを口にすれば終わり。そう思って、ただただ世界線がズレていくのを見て見ぬふりをするしかできなかった。そしていつしか、私と友達は異星人になってしまった。
その後、友達の身に何が起きたのか詳しく知らないが、携帯電話で連絡が取れなくなった。別の友達から、携帯電話を持たなくなったと聞いた。現代社会でそんなことがあるのだろうかと、疑ってしまったが、友達自身が古い人間関係を絶ちたいのであれば、友達の日常に土足で踏み込むようなことも出来ない。
偶然会った友達の実父から、体調を崩しているときが多く、家で寝込んでいる、代わりに孫を公園に連れていると聞いた。私の携帯電話の番号を伝言してもらうように言ったが、電話連絡はない。唯一、年賀状だけやり取りを続けている。「何かあったら連絡してね」と書いているが、連絡はない。
来年の年賀状は、きちんと届き、返事が来るだろうか。
女の友情ハムより薄い。というキャッチコピーが遥か昔に流行ったが、人生の選択が違うことで、自分たちの意思に関係なく、気が付いたら、違う惑星に住んでいて、共通点がほとんど無くなっているという、元女の友情は多いのではないだろうか。なんだかとても淋しい。
たかだか3年会ってないだけだが、やっぱり友達と会いたい。また会ってバカ話をしたい。夫の愚痴、子育ての悩み、何でもいいから、友達の話しが聞きたい。
惑星同士のようにいつかまた接近する日を願って。
あいつ今なにしてる。心から思う、元気で居て欲しいと。