華胥の幽夢

短編が5編収められているのだけれど、どれも趣が違って読み進めやすい。
これまでのエピソードを読んできた者からすると、各話に登場する国も人も、行き先が気になっていたのでとても興味深かった。

柳は結局何があって(もくは何がなくて)、国が傾いたんだろうか。
今後描かれるかなあ。

一度読んでいるはずなのだけれどすっかり忘れてしまっている話も合って、
「華胥」なんてハラハラして読み進めてしまった。
身につまされる話だったわ。
(十二国記の感想で私はよく身につまされる。)

理想を掲げ、現行を非難することが正しい道、というわけではない。
これって、仕事でよく上司に文句言ったりしてる私からすると「私はどうだ?」と思い返してしまったよね。

自分が正しい道を踏み外していないことを自分に言い聞かせるために、他人をそそのかして道を外させる。
考えれば考えるほどめちゃくちゃずるい。
でもやりがち。な気がする。
いや、やらんな。
道を外させることはしなくても、足を引っ張る、ってのをよくするのかな。人間は。(しらんけど)

こずるい人間も、ずるい人間も(こずるい、とずるい、って微妙に受け取る感じが違う気がしている)、十二国記のお話にはたくさん登場するし
陽子のように真正面からぶつかって悩んで迷う人もいるし
風漢(延王)のように快活なように見えて腹の中では何を考えているのか分からない人もいるし。
小野先生は人間の複雑さの解像度がとても高くて、本当にいつも身につまされる。
「君はどうだ?」と突き付けられているよう。

陽子、楽俊、驍宗、泰麒などは、十二国記の中ではとてもまっすぐに自分を見つめられる人だなあという印象。
自分の弱いところもずるいところも黒い部分も白い部分も認められる人。
だから強い。
悪いことずるいことをしない清廉潔白さとは違って、弱くてずるい自分を知っている、という強さって、私からするとまぶしいくらいいいなと思っちゃう。

理想の国、理想の世界、理想の人間、って何だろうな。
むずかしく思っちゃうな。

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