風の海 迷宮の岸

泰麒があまりにも可愛らしく、不憫に感じて仕方ない。

魔性の子を読み終えている私は、彼の未来がどうなっているかを知っているから。
こんなにも素直で、人を思いやるばかりの子が、
その力が強靭すぎることと反比例する自信のなさ・自尊心の低さで
とてつもない凄惨な事態を招くことになるなんて、誰が想像できただろう

「他の子と違う」ことを忌み嫌う祖母、弟。父は祖母のいいなりだろうし。
母親だけは蓬莱でもやさしく、愛してくれていたのに。
未来の母親は。

知っているが故に、蓬盧宮で女仙たちに愛されて楽し気に過ごす姿が、ほほえましくもあり、不憫で不憫で仕方ない。


蓬山で楽しく過ごしていても、徐々に、「他の麒麟とは違う」という思いが泰麒に重く圧し掛かってくる。
蓬莱と違うのは、誰もそんなこと言っていないってこと。
泰麒だけが、自分で、そう思い込んでいる。僕は落ちこぼれだからと。
見ていてとてもまどろっこしくなるくらい、彼は自信がない。

でもまだ10歳。小さいころに刷り込まれたもの(もしくは生まれつき?)がこんなに影響を与える。
(そう思うとこどもを育てるのってものすごく、ものすごく、神経を使うなあ・・)


自分に自信はないのに、それとは反比例するように強大な力を持っている。
自分のためには発揮できず、誰かを強く守りたいと思っているときに発揮されるその力は、この先、彼を守るのか、それとも足を引っ張るのか。
驍宗が危惧するように、こちらも彼が心配になる。

彼は人間ではなく神獣だから、人間と同じように据えてはいけないのかもしれないけれど、10歳の子供がこんな重たい気持ちを腹に抱えているなんて。
世界観もなにもかも無視して、
校庭で、
もしくは公園で、
はたまた自分の家のお庭で、
読んでいる漫画やテレビの世界の中で。
無邪気に、笑って、過ごしてほしいと願ってしまう


叶わない願いなのは分かっていても、その願いが沸き上がってきてしまう。
この本は、泰麒の胸の苦しみが、手に取るように伝わってくる。


***

王になったとたん、彼、ものすごい偉そうにするなあと感じたのは私だけ?笑
嫌な感じの「偉そう」ではないにしても、こーんな変わる?ってくらい一瞬で変わるの。

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