白銀の墟 玄の月

1~4巻、読み終わりました・・・。何度もくじけそうになった;

まーーーーーーー進まない。ほんっとうに進まない。
物語が動き出すのは後半の後半。
それまでは、いっかな動きが鈍いです。
手を変え品を変え、

泰の民がどれだけ苦しいか
泰の朝がどれだけ腐っているか
阿選に対抗するのがいかに不可能であるか・・・

というのが延々とつづられます。
と同時に、地道に、あきらめずに、へこたれずに、進める道を模索する登場人物の姿が、
いろいろな人の視点で描かれます。

停滞しているように見える物事が一気に動き出す、ということは
多かれ少なかれ我々の日常にもあって。
それはきっと水面下で、いろいろな人や物事が交差して、戻っては進んでを繰り返して、全然進んでいないように見えるその裏でも確かに歩みはあって。その結果が目に見えるのが最終局面だけ、ということなんでしょう。
泰のこの物語とはスケールが違うけれど。


読むのが本当につらかった。。。
心苦しい、ということじゃなくて、本当に全然話が進まなくて、しんどかった。笑
次々と土地の名前、山の名前、人の名前、集団の呼び名、役職名、が出てきては入れ替わり、また別シーンで登場したりするもんだから、「これ誰だっけ・・・」「これなんだったか忘れた・・」とか山のように出てきます。
1回目を読んだ去年も、ここらへんはあきらめてたのですが
2回目の読んだ今年も、同様にあきらめてしまいました。笑

とにかく、物語が進み始める後半の後半までくじけずに読み続けることができれば、動き出した時の高揚感はものすごいものがあります。
私はお風呂の中でほぼほぼ最終巻のほとんどを読み進めてしまった。
(お湯は冷めきってた;)


人がばんばん死にます。
死んだかどうかも分からず「帰ってこなかった」という表現だけで終わる人もばんばんいます。
そのたびに、ものすごい抉られます。

このえぐられ方は、前半のあの、いっかな進まない停滞感、苦痛を、歯を食いしばりながら読み進めたからこそ感じられるものだと思います。
読み手の私たちはほんの数時間の停滞感ですけど、
驍宗なんて・・・・6年真っ暗闇の地底で、食べ物も飲み物も光も何もない中生きていたわけですから。気が遠くなる。
その年月、それぞれの場所で戦ってきた人たちが、あっけなく死んでいきます。
そらもう、泣けてきます。なんでや、と。

まあそこが小野先生。絶対に容赦しない、というか。
厳しいことも真正面から描いてくださるので、登場人物の死だけ都合よく回避、なんてことはありません。


「死ぬ」ということだけじゃなく、魂魄が抜かれ傀儡になってしまう人もばんばん出てきます。
あんなに頑張ってた人も。
なんでや・・・そこはやめたってください・・・とめちゃめちゃ心の中で思ったもの。
この感情も、前半、手を変え品を変え、視点を変え、描かれていた現状と背景があってこそのものです。めちゃくちゃネタバレですが、恵棟と帰泉はもうほんっっっっっっとうに阿選を恨みました。
阿選許すまじ。本当に許すまじ。


そして、ろうさんは一体何がしたかったのか?
この人、黄朱の民出身のようだけど、驍宗を主として心から尊敬していることは確かな様子。
なのに阿選をけしかけ、あおり、妖魔までほどこして驍宗を討てと。
なんやねん、この子は。
この子が施した鳩みたいな妖魔のせいで、どれだけの人が廃人になったと思ってるんや。何のために。何のためにこんなことしたんや。
泰麒を不能にするための知恵を植え付けるくせに、泰麒を助けたりもする。
本当に何がしたいんや。謎すぎる。まったく想像がつかない。
(感情が高ぶって方言になっています)

泰麒は「敵じゃないとおもう」っていうけど、「そうか!?!?!?!?」ってめっちゃ心で突っ込みました。
直接手を下していないだけで、この人のせいで相当な数の人が、死んだり廃人になったりしたぞ!?!?

最後までろうさんの心のうちは描かれなかったけど。
ろうさんはこれからも泰の朝の中央に居続けるんだろうけど、
私はこの人きらーい・・・・いなくなってほしい・・・・はあ・・・・


そうそう、泰麒。
私はいつかの感想で、きっと泰麒は広瀬のことを思い出さない、と書いたけど、ちゃんと思い出してくれてた。一瞬。
誰かや何かを切り離してきた人は、それと両てんびんにかけて勝ったものを今目の前にしているはずで。
そんな場合はきっと、てんびんに負けた側のことなんて思い出すことはないのだろうな・今の目の前に一生懸命だから。って思ってたのだけれど。
己を奮い立たせるために、言い訳して逃げないために、切り離した人のことを大事に思い出すんだなあ。
今これ自分で書いていて、ちょっと泣ける。

それにしても泰麒、もうそろそろゆっくりさせたって欲しいな・・・
心の平穏をあげてほしい。
今後、何年後かわからないけれど新刊が出て、十二国記のなかの人たちがどうしているのか少しは描かれるんだと思うけれど、泰麒と驍宗が元気だったらいいなあ・・

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