魔性の子

#魔性の子
#十二国記
#小野不由美

私は広瀬に感情移入してしまって、読み終えた後、
この後、広瀬はどう生きていくのだろうかとそればかり考えてしまっている。

置いて行かれた、
自分は選ばれなかった、
自分は特別ではなく、他のみんなと違うものではなかった、、

そんな現実を、非現実的なそれらが、これでもかと突き付けてきたラストは、こちらの心が崩れてしまいそうになるくらい、厳しい。

実はこの物語を読むのは2回目だけれど、
初めてこの物語を読んだときは、この広瀬になかなか気づけなかった。
どうして私はそこに気づけなかったのかなあと(読解力のなさ、としかいいようがないのだけれど。)、今にしてみれば思うけれど。

初めて読んだときは、「高里に置いて行かれた」という事実に打ちひしがられていると感じたのだけれど
今回読むことで、それよりも大きいインパクトで、「自分は特別じゃなかった」という広瀬のダメージを受け取ってしまい
今の私は、胸をかきむしって、この感情を消したいと思うくらいやり場のない思いが広がっている。

きっとそれは、私自身が、この世界に生きづらさを感じ、いつも、「帰りたい」と思っているからだと。

それは小さな芽でありながらもとても重くて深くて、だけど、それはごく普通であること。
それが「普通」であることを認めるのはなかなかに、しんどい。
途中、後藤から、お前と高里は違う、と言われても、まるで聞かなかったかのような反応をする広瀬は(私にはそう見えた)
この事実を認めることに、最後の最後まで抗っていたのだなあと思う。
読み手(私)はその広瀬の抗いを、ラスト近くになるまでなかなか気づけなかった。

その事実を、逃げ場がないほどに、目の前の非現実な有様に突き付けられた広瀬は、その先の道をどうやって生きていくのか・・・
私の想像では追いつかないくらい、精神的にも肉体的にも厳しくて、到底耐えられそうにない。
でも広瀬は、自ら命を絶つことはしないだろうとも思う(お話の中でもそのように言ってた記憶)。

だとすれば、それを抱えて生きていくしかない。
高里が言ったように、
「この世界で、人として生きていくしかない」広瀬は、
自分の外側で起こったことよりも、自分の内側で起こったそのことを乗り越えることができるのかが、とても、とても気になる。

そして、物語の本筋とはかけ離れてしまうけれど、高里に対して、「向こうで広瀬のことを思い出す瞬間があってほしい」と抱いてしまう。
ずいぶん前に一通りこの物語を読んだ記憶では、高里が広瀬個人を思い出す瞬間はなかったような気がする。
一つの景色の中に広瀬がいたことは、高里の記憶の絵の中にあっただろうけれど。


誰かの特別でありたい、は恋煩いのようであるけれど
この世界の特別でありたい、も似たようなものなのだろうか


魔性の子は、それはもう容赦がないほど凄惨なことが次々と起こる上に、その内容もまた容赦なくひどい様になっていく
文章から頭の中で起こされ、膨らむその絵面は、とても見るに堪えない
そのある意味わかりやすい事柄と同時に、とても繊細に揺れ動いて見せる様々なひと(こども、大人、親、教師、報道陣、傍観者)の心模様も、描かれている
心の内を誰かに話すときに、一枚カーテンを挟んでぼやかして見せる、ような。そんな感触で。

恥ずかしながら一つ分からないままのことがある。
自分の読解力のなさを説明するようで恥ずかしいけれど。
広瀬がわざとやった、といっているあれは、、どいういうことなの、、、、分からない。

次にまた読むだろう時には分かるかな。
その時の自分の感想が、楽しみ。

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