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スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜#20 次回最終回

前回までのあらすじ
東京西新宿の高級ホテルで、ヤスは北朝鮮の諜報員の情報収集のために暴露系ユーチューバーのナンシーと会う事にした。がしかしあって間も無くドローン爆撃を受けてしまう。ヤスは重症を負ってしまって病院に収容される。痛手を負った特別諜報捜査隊のトップ、エリーラインハートも買い出される。


〈第十八章〉

警視庁と新宿警察から問い合わせが来ている。
基地に帰る前に片付けておきたい。ミミに今日、明日はOFFだと言う。
明日エリー様迎えの車で同乗して帰ってもいい。
別に警視庁新宿書の刑事が来たって構わないと言っているので、両方とも時間をずらして来てもらった。被害者なので、ナンシーも居たことはちゃんと言おうと思っている。
自分は階級警視だけど、あいつの係でもないし、目の前で悪さをしているわけでも無いから、会っていたといえば大丈夫で、ナンシーも被害者なんで、ただ相手に心当たりは無いと言っておいた。
ネネや黄はこちらで捕えたいからだ。しかし、ネネの野郎いつまで付け狙うんだ。そう考えてみるとミミも危ない気がする。見境なしに撮影現場とか狙われたらたまったもんじゃない。
1日も早くネネと黄、宗を逮捕もしくは殺害しないと、こっちがヤバい目にあう。それには今のところ、アルに中井の動向を探ってもらい、居場所の確認等を明日よりしなくてはいけないことをアルに伝えた。
警視庁の刑事はもの分かりが良く、ヤスが1回言ったことをパソコンでめちゃくちゃ早いブラインドタッチ入力で、供述調書を仕上げ、署名押印して終わった。
新宿署は、同じ事を少し割愛しながら話して言った。何故なら、この2人があのナンシーが言っていた追立警部補たちだった警部補と言うから40歳後半ぐらいと思ったら30歳半ばの少し癖のありそうな刑事だった。
もちろん俺の方が年下だけど2階級上なので、何てことはないが、話にグイグイ来る。失礼なことも平気でわざと言う。隅で聞いていたミミが

「ねぇ、ちょっとこの人若いのに何だか一言多いと言うか、こっちが悪いことをしたような感じで話すよね。私、役者やってますけどそこまでワザと素で言えるって、あなた刑事より役者さんになったらどうですか。」

ミミが人のこと言うのは、珍しい。それほど気になったのだろう。
確かに勘に触ると言うか、ユーチューバーのナンシーがめっちゃ怒っているのは分かる気がする。追立刑事は言う。

「えっ、そうですかねぇ。私は、当たり前のことをこれでも階級上の方なんで気を使って言っているつもりでした。気に触ったのでしたら失礼いたしました。大女優の今井ミミさんが言われるのならそうなんでしょう!」

と追立刑事が言うとミミが

「ほらほら、それ!そんなこと言わなくていいじゃん!」

と言ったら、皆んな笑った。皆んなに笑われて真っ赤な顔をした追立刑事は

「本日は以上です。それでは、お大事にしてください。失礼します。」

と言って踵を返して帰って行った。アルもヤスもミミも顔を合わせて笑い、ミミが

「なんだ、あれ?あれで良く若くして警部補になったね。」

ヤスが

「警察って色んなやつがいるよ。ってか、これでも俺前科ないんだよ。」

アルは全部知ってるから、口は出さなかったけどミミが

「えーっ!そうなんだ!元ヤクザって私もずーっと考えていたけど、元ヤクザは本当みたいだけど、それも潜入捜査だったのかなぁ〜って思った。刺青も体じゅうにあるし・・・。」

アルが

「潜入捜査ねぇ〜、個人の潜入捜査みたいな。」

ミミが興味津々で

「どう言う事?、ねぇ、教えて。履歴書見たいぐらい?。」

アルとヤスが笑った。ヤスが

「ミミには、話しても何のことやら分からないと思うけど、実は俺の敵はヤクザの方なんだよ。実父がヤクザに殺された。それで身内が居なくなっちゃったんだ。実父に育てられてたから、それで俺を高校、大学まで行かせてくれたのが、今の社長の矢﨑の叔父貴なんだ。でも矢﨑の叔父貴がある日お前の父さん殺したのあいつだよって教えてくれた。最初は検事になってヤクザをやっつけていこうとか、警察とか司法の方を考えて東大法学部卒業したんだ。考えて考えた末に司法試験諦めてヤクザになった。懐に入った訳だ。でも、結局、暴排条例とか暴対法とかで自分が食えなくなっちまうんだ。組内の分裂抗争で矢﨑の叔父貴が何のしがらみも泣く辞められたので、俺も叔父貴が辞めてから3年後、帰参せず辞めれた。そしたら、叔父貴こんな組織作っていたんだ。ヤクザ辞めて叔父貴が運送屋やってたのは知っていたけど、俺は自分の進路を間違えたと思って1年。まだ前科ないので司法試験の予備試験を受けたんだ。要するに司法試験を受ける資格を得るための試験だ。大学でも勉強していたから、合格したよ。予備試験を合格したら5年以内に本試験受けないと無効になるんだ。まだあと3年あるけど、今の地位は検事や警察庁より上だから、もう受ける必要無くなった。しかも親のカタキは今の地位で十分取れる。チャンスはいつか来るさ。あっ、俺の話長くてごめんなミミ。」

ミミが

「うん、ヤスは多分頭が良いと思っていた。ヤクザやって道間違えたって、軌道修正するのが凄い。東大出てるんだったら、あら間違えたって元の道に帰るわね。司法試験って弁護士になれるやつだよね。すごっ!あと3年だったら保険でとっとけば。」

ヤスが

「そんな簡単に取れないよ。けど、予備試験合格した人は合格率高いらしい。ミミの為に受けとくか・・・。俺のことはそのぐらいにしてアル、中井どの辺にいそう?」

アルがタブレットを見て

「東扇鳥に居ますねぇー。」

続けて、移動履歴を見てみると

「川崎にアジトありますねぇ〜。衛生で見てみましょう。あー、アジト発見しましたよ!川崎の産業道路沿いに外資系量販店のコストコがあるんですけど、その裏をずーっと川崎港方向に行くと倉庫があるんですよ。あのあたり北の人間のタウンみたいになってて、そこがアジトですね。」

とアルはヤスに教えて、ヤスは

「あ〜っ、なんか貨物列車が行き来してて、コンビニが途中あるとこ。そのコンビニ薬の取引きによく使わせる。」

アルもなんとなく分かると言い納得するような顔をして

「とりあえず明日、外来の開館が午前9時だから、その時間に地下駐車場に侵入していただいて、直通エレベーターで車椅子で下まで行って、少し痛いかもしれないけど、ベンツに移り基地に皆んなで戻ろう。明日は、湾岸署の方の入り口を使おう。」

了解と皆んな一緒に言ったような気がした。
トンットンッと鳴ったので皆んな振り返ると入り口のドアが開き、コンシェルジュが立っていた。アルがどうしたんだ?と近寄って言ったら、

「外のすぐ近くに、ちょうど裏になるんですが、コンビニがございます。そこへ行くのには看護師IDのキーカードが必要ですが、VIPのお客様ですので、こちらをお使いください。」

と親切に持って来てくれた。アルが

「それは助かる。色々とありまして腹が減っていたところでした。すぐ買いに行くのでこの迷路みたいな通路の答えを教えてください。」

とコンシェルジュとアルはそのまま行ってくると言い、入り口のコンシェルジュカウンターに一緒に出て行った。ミミが

「私も行きたかったーなぁ〜。」

と言うとヤスにバレたら逃げるのに大変だよ。ミミが

「コンビニの人にたまに声をかけられて、今井ミミさんですよね?、ファンなんです。とか言われる時に急いでると、あー良く言われるけど、似てるだけですって言うもん。」

って笑って言う。それもどうかと思うが、彼女なりに苦労は多々ありそうだ。ミミに今回のことがあったし、ヤスの正体もミミの両親に分かってしまい、少し両親も安心したのか、そんなような話をミミがしていた。あと、両親にあんな大きな車を運転しないでと言われたらしい。
ミミに両親に近々挨拶に行かないとねって言ったら、将来のためにお母さんに料理習いに行かなくちゃって笑顔で言っていた。
そういえば、オーディションで16才ぐらいに事務所に入って、一人暮らし始めても家バレで引っ越してばかりで料理なんかする暇無いもんな。
仕事(任務)に一段落着いたらこれから先の事も考えないと。
ミミは冗談か本気か分からないけど、お金の心配はしないでいいよ、私、節約して貯金いっぱいある、とか日本人の居ない海外に住もうよ!とか言われるが、今の仕事が日本のスパイを見つける仕事なので、それは無理と言った覚えがある。
そう考えてるうちにアルが両手にコンビニの袋をいっぱいにして帰って来た。とりあえず、その中から棒アイスをもらった。今、一番食べたかった・・。

〈第十九章〉

2〜3年前に新しくなった東京慈恵医大病院。午前9時前になると地下駐車場の取り合いで行列が出来る。その中にベンツの最高級マイバッハが並んでいた。運転手はもちろんエリーラインハートキャップだ。
今日は目立たないように白いブラウスにパンツスーツだ。前から3番目ぐらいに並んでいたので9時の開場と同時にチケットを取る作業の一旦停止して、エレベーターの前に車を駐車位置に停めて待機する。隊のインカムで呼び出す。

「定位置に待機中です。」

アルが回答する。

「了解です。間もなくエレベーター乗車します。」

エリー様が

「了解、まだ朝一なのか。女子アナとカメラとか居たけど、2局ぐらいでした。」

アルが

「了解、間もなく到着。」

と言うと同時に車椅子でエレベーターフロアから出て来た誰も居ない。
車を少し出して車椅子から後部座席に移すのが一苦労だ。ひとまず成功。
アルが黒いサングラスを掛けてエリー様を助手席に乗せる。
尾行防止に首都高に一度乗るのは常套手段だ。霞ヶ関インターから首都高に乗り、助手席用のバックミラーも付いているので、車線変える度に『クリア』と言う。一応、『クリア』そうだったので、目黒分岐も『クリア』レインボーブリッジ方向へも分岐『クリア』でレインボーブリッジへ。台場で下車した。湾岸警察署の裏から基地に入る。
とりあえず、バレずに基地までたどり着いた。皆んなこんな地下室なのにホッとするのは何でだろうと思う。
考えれば今回の事件の発端はユーチューバーのナンシーがヤスに会いたいと言うことから狙われた。まだナンシーには連絡していないが奴も怪我をしているのは確かだ。一体、どちらが狙われたのだろう。
新宿署の追立警部補がナンシーの件でムキになってるのも分かる。追立刑事はまず3年以上前から告訴状を受理し、国際手配まで掛けた。だが、国際手配を掛けたころには日本に帰って来たことも確認できたらしい。
追立刑事からすれば他の件で逮捕にこぎつけたい。あの刑事も日本でも大手のプロダクションからの告訴なので、それは必死だろう。
もしかしたら、あのプロダクションの黒い流れからナンシーをお縄にするように言われているのかもしれないし、もしあの刑事らがお縄に出来なかったら裏社会を使ってどうにか拉致出来たらプロダクションから懸賞金をもらえるかもしれない。
捕まえるだけじゃなくて、裏社会なら消すなんてことも出来るから、とにかく捕まえれば金になる。もし、俺を狙ったとしても俺の組織は無くなるわけではないので、俺をひとり狙うと言うことは考えずらい。
そうだ、どう考えてもナンシーだ。ヤスは、すぐさまスマホを取りアプリでナンシーを呼び出した。何回か呼び出すが出なかったので、またあとで掛けようとしたら、ナンシーから掛かって来た。ヤスが開口一番

「ナンシー、どうだ無事だったか?」

ナンシーは少し苦しそうな声で

「兄貴こそ、大丈夫ですか?俺よりひどかった。俺は左腕をガラスで何ヶ所かと、肋骨2〜3箇所折れて、息をする度に痛いですわ。ゴホゴホ。」

笑ったつもりが痛くて咳に変わったらしい。ってか、兄貴っていつの間になったんだ。上田もそうだったけど、そういえば上田は何をしてるんだ。あとで連絡してみようと思いだした。ヤスが

「今回のドローン攻撃は、俺じゃなくてナンシーお前狙いだよな?やっぱり。」

とヤスが確かめると

「いや〜、あのドローン捌きはネネの仕業に間違いないとしても、直接ドローンが突っ込んで来なかったのが不思議なんです。」

とナンシーが言うと、ヤスが

「あ〜、あれは俺がジャミング電波を出していたから手動でしかあそこまで近づけなかったんだよ。要は妨害電波が出てたので緯度と経度が感知できなくて手動で近づけるところは窓の外までだったんだ。だから、窓の外でホバリングしてた。2機目はそれを拳銃で落として起爆も出来ず墜落したってことだよ。俺が用心してなかったら2機とも中まで突っ込んで来て2人ともお陀仏だったわ。」

ナンシーが口笛を吹いた音がした。そして、

「流石は兄貴!命の恩人です。それ、配信していいっすか?」

ヤスはジャグリングのことは最近、映画館とか劇場とか他でもWi-Fi電波や携帯の電波をシャットアウトする機械と紹介されているし、そう言う護身にも使えるので別に配信で言っても構わないと思った。ついでにナンシーが良く配信で言っていることも加えた。

「別にジャミングの件は護身に使えるし、盗聴、盗撮にWi-Fiや携帯電波をシャットアウトするので、ナンシーが良く言う国会で居眠りしているジジイとか国会中にエロ動画をみている先生方が話題になったから国会議場にもジャミング設置するか検討してるみたいだから、いいんじゃない。宣伝になる。」

とヤスが言うと

「ナイス兄貴。良い事聞きました。」

と返して来た。ヤスが

「おい、ナンシー!?録音なしだからなぁ。俺とお前の会話」

するとナンシーが焦って

「いや、それはしたいけど兄貴を裏切ることしたくないんで無しで大丈夫です。約束します。」

するとヤスが続ける

「ナンシー、あいつ聞き取り来たぞ。あの2人って言えば分かるだろう?」
ふぅ〜っとため息付いてナンシーが

「あいつら、しつけぇ〜なぁ〜。」

と言ったところでヤスが

「あいつらが、ネネに俺らを狙わせたとは考えられないので、お前なんか北に喧嘩売ったか?それとも見ちゃいけないもの見た?あと、ヤクザのことはナンシー何も知らないしな?あっ、上田の野郎とはどんな仲だったんだ?最近会ったのいつ?」

と矢継ぎ早に聞いた。ナンシーは

「北には喧嘩は売ってない。日本まで色んなところトランジェットして日本に連れて来てもらった代わりに配信を今回した。見ちゃいけない物は色々見たが、それを見たからって殺される理由にはならないと思うし、ヤクザの方は、上田は、ゲートブリッジ迎撃事件あたりから会ってないね。ネネには2回ぐらい会ったけど、あのネネはクセ者だわな。何か言われるとやばい事ってあったっけなぁ〜?あっても、俺の方も言われるから・・そう考えれば殺しておいた方がいい輩なのかもね。」

と笑いながらナンシーは言う。
ヤスもネネは何を考えてるんだろう?多分、北がネネに頼んだのは間違いないのだが、ナンシーをあんな風に襲うと必ず配信するだろうから。
俺とナンシーが2人切りで何か相談してるところを襲撃されたと配信すると分かっていて、ネネにとって何か見返りというか、得というかがあったのか?あっ、そうか。
もしかすると・・ナンシーに聞く。

「もしかすると、奴ら俺ら2人切りで会ってるところを知って、何を密談してたのか勘繰るよな。俺がナンシーを裏で支援してたとか、俺も政府の特別部隊なんで政府が実は後ろ盾をしてたとか、配信見た人には勘繰るよなぁ〜。でも、俺からすれば・・・??だから何?だけどな・・・。」

とヤスがナンシーに言うと、

「だから何?はないでしょう兄貴・・。まぁ迎撃の件にしても俺の件にしろ邪魔なんでしょう。」

とナンシーが言ったので、ヤスは

「まぁ、いいや。考えるだけアホくさい。とにかく邪魔で狙ってるんだったら、俺こそあいつら邪魔だから足が良くなったら絶対首根っこ捕まえてやる。あのネネの野郎、いやあのアマは特に。ナンシー、また何かあったら、そっちからも情報くれや!俺は動けないから情報収集だけしとくよ!んじゃ、またの!」

とナンシーの真似して電話を切った。
上田に電話してみた。呼び出し音はするが、出る気配がない。何回か着信入れたから折り返しあるのだろう。
今日はアルは情報収集に外へ行っている。
ミミはCX(お台場)でバラエティ番組の収録で帰りはてっぺん(0時)を過ぎるとのことで、毎日心配なので、ミミが帰るまで寝ずに待ってる。
毎日毎日ミミは基地に帰って来て、ヤスを療養してくれる。
先日15日を経過したので、レントゲンを撮ったり傷の具合を隊の専門医に見てもらったところ、初動の応急処置が良かったせいか、骨と骨が離れているところが無く再生しているとのことで、ギブスはまだ念の為に付けておくがだいたい完治しているとのこと。
肋骨などすでにどこが折れていたのか分からない程、再生していて医師が特殊な再生機能でも持っているのか?と聞かれたぐらいだ。既に杖を使って移動したり、ギブスも足の裏の部分は外してもらっている。

〈第二十章〉

アルが中井の行確(行動確認)を3日ぐらい前から始めている。
自家用車はレクサスのセダンタイプに乗っていて、ボルボトレーラーは川崎の東扇島に借りてある車庫に置いてある。自宅も川崎駅の近くらしい。
3日間行確で分かったことが中井は3日間トレーラーで海コンの仕事をして1日休みといった風に、4日置きに休むパターンになっているのだと言う。基地でボルボのGPSで確かめていたら、そのルーティンが分かったらしく、今日はその休みの日だそうだ。恐らく、ネネが黄、宗あたりと接触するのではないかと追跡するために外に出たと言うわけだ。基地でアルからそれを聞いていたので、よっぽど俺も行くと志願したがアルに

「足手まといになる。」

と言われた。
それならとミーティングルームでパソコンと画面のにらめっこだ。
とりあえず、インカムも繋がるようにしてある。
アルが新しく取り付けたGPSの青い点が中井のレクサスの位置情報だ。
既に朝早くから、動き出し追尾している。どうやらボルボの方向の東扇島へ向かって海底トンネルを走っている模様だ。

京王プラザの事件より20日が経つ。あれから毎日上田に電話を掛けたが、2日目ぐらいから電池が切れたのか電波の届かないメッセージに変わった。
何かあったのではと端末の会社に移動記録を開示してもらったところ、東扇島でゲートブリッジ迎撃事件の日からなんで1ヶ月近くも東扇島に居たことになる。
そう思っていたら4〜5日前に湾岸警察の方から身元不明の水死体が羽田空港の滑走路下の岸壁ポールに引っ掛かっていたらしい。
水死体は、水を吸ってパンパンに膨らみ、死体を引き上げる時にお腹のガスを抜いたり、引き上げたらしばらく置いとかないと、男女区別も分からない状態らしい。
遺族に見せたって原型が分からないので何かDNAを持って来てもらわないと身元が判明出来ない。
上田ではないか?の憶測が飛び回り、マル暴データベースで、上田と同じ刺青で、花田の名前を入れた刺青が遺体にあったことから、上田と確認が出来たと言う。奇妙な話だ。
その話が出て、北の仕業だと断定し、羽田空港に近い東扇島にまたあいつらのアジトがあると アルフレットは睨んだわけだ。
レクサスのGPSのシグナルが中井のボルボの駐車場方向には行かず東扇島に入って来て、ドン突きを左折、コンビニエンスストアを右折し、さらに左折して行く。もうその辺に来ると地図上で見ても海沿いになる。
大きめの倉庫が2〜3棟建っていて、関係者以外は入れないエリアで東扇島の最先端と言っても良いところだ。アルからインカムで

「うわっ、この先左折すると丸見えになるので、手前に停めてGPSでどの倉庫に入ったか見ながら、1人で監視して何をしているのか。確認だけしてくる。一応、ボディカメラを繋げとく。」

と言うと同時に小道を走る画面が写る。
立ち入り禁止の鋼を昇って行く。固定式のボールカメラなので、こっちのジョイスティックでもある程度ズームパンが出来る。
アルは倉庫の特定をし、細いワイヤーの先が舵みたいになってる重りをガンで一番高いところに命中させ、さっさとウインチで昇って行く。これは俺も訓練で習った。一番上に人が入るぐらいの隙間から侵入。カメラで見るとパレットが積み上がった物を置かれた保税倉庫らしい。
10段ぐらいしか積めないのか、少し下がらないとバレてしまう。
アルのその行動の早いこと。良く見える。バレない距離を保ちながら。話は倉庫内なので轟くだろう。ベストポジションに待機できたようだ。
と、そこに古いワンボックスカーが来た。
ネネと黄、宗の3人だ。そう思ったが、ワンボックスカーの後部座席にナンシーが拘束されていた。
顔は相変わらず黒いが殴られたのか腫れている。
ヤスは上田殺害の件では相当驚いたが、ナンシーが捕まったと思った途端はあらら・・・と思ったていどだった。
喋りすぎて味方だったものも敵になってしまうのだろう。芸能界の暴露でもそうではないか、いつ手の平を返されるか分からないので、喋れないように口を縫ったら息が出来なくなるから、声帯でも切り取らないと駄目かもしれないと思っていた。
あっ、でも筆談があるか?まぁ考えても仕方ない。見てしまったものは助けなくては・・・。アルはインカムで喋れないので、タブレットで

「バカ、ナンシー生け捕らえてやがるわ。殺す気だろうな。」

とアプリで書いて来た。ヤスも

「多分、このシチュエーションでは上田と同じ羽目になる。」

ナンシーを見たので気になり始め、ヤスも出動準備を始めていた。
東扇島であれば、東関東道一本で西方面だから昼でも空いてる。
武器いっぱい積んで行くのなら、ベンツマイバッハか、晴海に寄ってボルボトレーラーヘッドで行くか?あの辺は、海コントレーラーばかりなんで晴海に寄ってボルボヘッド行こう。武器を沢山積んであるし安心。
そう決まり、『急いで行く』とアルと矢﨑社長に連絡。両方、心配していたが矢﨑社長が運転を買って出てくれたのでお願いした。
暖気運転をしてもらい、早く行ける車、マクラーレンを拝借して、マイハンドガンのコルトガバメント&シグを装備して、マクラーレンで晴海に向かった。
あっと言う間に着いた。車庫に突っ込んで路上でエンジン暖気運転していた社長が助手席にヤスが乗り込むと出発した。矢﨑が

「東扇島って言ったなぁ?インター降りたらどっち方向だ?」

と聞いて来た。ボルボの車内大画面にGPSを出して見せ、アルのボディーカメラを写す。矢﨑は

「あー、羽田空港寄りの隅の方だな。ナンシーはまだ大丈夫そうか?」

ヤスは

「そこなんですよ。ヤツら急に殺したりするじゃないですかぁ?話が聞こえないのでどうするのか全く分からないとアルは言ってます。」

と言っているうちに東扇島の出口に入った。どこかでUターンしたいといちいち右の橋を渡ってられない。無理やり左折左折で近くまで来た。アルのゲレンデも停まっている。
ひとまず、モニターを見る限り、3人で話をしているからナンシーのことは後回しみたいだ。ヤスが右足を出して

「社長、このギブス、ハンマーで割るか電ノコあったら切って外してもらえませんか?」

矢﨑は駄目だと言えず、

「外へ出ろ。」

ボルボの横の工具箱からエアーソーを出して、エアーホースをボルボのエアータンクのチェックに繋ぐ。
キューキュー!っと試動させ、さーっと切って行く。普通に肌の縫い目の上に透明のシールが出て来た。矢﨑はそれを見て

「おーっ、大丈夫とは思うが、あまり利き足を使うなよ。」

ヤスも見て

「本当だ。痛くねーし、とりあえずロキソニン沢山持って来た。」

と笑う。矢﨑が救急箱から出して

「やっぱ、包帯と解けないよう鋼はして行け。」

と足を引っ張って包帯をキツく巻く。

「イテッ。」

とヤス。矢﨑は、

「これでヨシッ!と俺も援護するから、今ならミニバンの後ろにそーっと言ってナンシー救える。その間銃で撃ちまくっとくから。」

アル、今の聞こえた?

「えっ、ちょっと待って。俺はこっちから準備するから。今日は手柄を俺のものにしようとM16 背負って来たんだから。」

とアルは泣きそうに言う。矢﨑が

「ミニバンの後ろに来たから、あいつらの足か腕か威嚇発射するから、その間にミニバンの鍵が付いてたら、ミニバンごとそうでなければ、ナンシーだけヤスが助ける。そっちに逃げて来たら、死なないように・・・。まぁ当たったら仕方ないが。」

続けて、

「5,4,3,2,1」

パーン、パーン、パーン!!

と3発連射した。宗の足にだけ当たり、逃げ足の方が早かった。アルが上から降りて来て単発でM16を発射しているが、見当たらなくなった?

「ナンシーを助けた。とりあえず、ボルボのベットに寝かせとく。痛み止めと言って睡眠薬飲ませとくわ。」

アルと矢﨑が

「了解!ってか、どこ行った奴ら。アル?」

「見つからない。また地下道とか逃げ道作ってあるんだろ?」

ヤスがミニバンのところへ来た。ミニバンの中を探る。ハングル文字で書いてあるので、カメラで写して翻訳させる。

「金正恩の軍事偵察衛星のなんちゃら・・。これ全部持って帰って解析させなきゃ。また日本狙ってるかも。あれ海図あるぞ。アル、今どこだ。海の方に船とか無いだろうな。」

アルから返事が来る。

「そう言えば船のディーゼルエンジンの音がするような・・。」

ハングルの文章を書いてあった矢﨑が急に

「エリーキャップ聞こえるか?」

すると、

「はい、聞いております。矢﨑社長。」

すると、矢﨑が

「政府に連絡して、羽田空港一時離着陸禁止にしてくれ。アル多分あいつら北まで船で逃げる気だ。今、逮捕出来なかったら、ランチャーで撃墜許可する!もうあいつら許せん!」

エリー様はいつもより畏まって

「了解しました。今すぐ連絡します!」

矢﨑が

「ヤス、ランチャー降ろせるか?」

ヤスは

「そのくらい、楽勝ですよ!ランチャー今日はアルやる?」

するとアルが

「船が出て来ました。45フィートぐらいあります。ツインシャフトで15〜20名は乗れる大きさです。」

パーン!パーン!

アルが

「くそーっ!あいつら治ったばっかりの俺の肩撃ちやがった!」

ヤスが

「今すぐ行く!肩撃たれたんだったら、俺またやらせてもらいます。今日はもうあいつら許さない。何人死んでんだあいつらの絡みで・・・と言うことでFGM-148のジャベリンお見舞いしてやります!」

アルが

「えっ、ジャベリン・・撃ちたかった。」

ヤスが

「今、タブレットと一緒に持っていくから設定やらせてあげます。半径80m何も無い地点まで逃がせて。今から準備したら余裕でしょ。」

ヤスと矢﨑が海沿いにランチャーとジャベリン弾持って来た。QRをコード読み込む。ジャベリンFGM−148を選択。アプリが作動し、軍事衛星からの影像が拡大して行くのが見える。
慌てて逃げている。45フィート程のクルーザーを発見し、ロックオンする。これでOKかと再度OKを求められる。アルがその画面をこの位置が見えるところまで縮小する。アルが言う

「どうぞ、いつでも。」

ヤスが、ジャベリンをランチャー砲に入れたので矢﨑に

「じゃー、行きます。アル半径80mは大丈夫?」

アルが

「もちろんです!」

ヤスが

「発射!」

ドシューン!!

と弧を描くように飛んでいく。
見事に命中!アルと3人で衛星影像を見ていたら命中手前で5人ぐらい海へ飛び込んだ。

「エリーキャップ、海上保安庁、湾岸署に3〜5名の生存確認お願いする!」

アルが

「ジャベリンだったら、半径80mの物は破壊されると言われています。近くの船とか建物も爆風が凄かったと思いますが、一応、調査したほうがいいかも・・・。」

ヤスが

「衛星影像見ても45フィートもあるクルーザーがあと形も残ってないよ。粉々とはこのことだわ。」

アルは

「これで生きてたらゾンビだわ。人の形も無いと思う。今頃、魚の餌になっているのかも・・・。」

アルは最後までジャベリンいいなぁ〜って言ってたと話したら、ランチャーを片付けしている横から

「あの〜、すみません!」

と中井が立っていた。皆んな銃を構えた。

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。私は何も関係・・・」

ヤスが

「なくねーだろ!お前もクルーザーで木っ端微塵と思っていたのに・・。」

アルが

「じゃー、何やってんだよ。ここへ誘導したのお前だろ?」

中井が

「そうなんですけど、この倉庫、私の会社の倉庫で、この下に船を係留できるところがあって、あの船も俺が売ったんですよ〜。それ以外関係無いです。」

ヤスが

「そうはいかねえよ。佐原じゃお前がドローン運んでたし、俺とアルを逮捕、監禁罪は成立する。とりあえず、緊急逮捕する。お前川崎だから神奈川県警だけど面倒くさいから警視庁本部で勾留する。」

アルが

「俺ら佐原でこいつに逮捕監禁されたら、千葉県警だろ?」

ヤスが

「あ〜、そうか?じゃー、千葉県警本部に来てもらおう。中井はコカインには関係なかったっけ?」

中井が

「とんでもないっすよ!あれは俺は絶対関係ないよ!」

アルが

「そうだったっけ・・?あれに関わってたら無期懲役は確実だからなぁ〜。」

中井が泣き顔で

「絶対関係ないからー。千葉県警本部でいいです。逮捕監禁罪で執行猶予で・・。」

羽田空港の上空見たら、着陸待ちの飛行機が、何十機もグルグル回って着陸許可待っていた。

(つづく)

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