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スネークオペレーター 〜特別諜報捜査官〜#1

【あらすじ】

8年間も続いた暴力団〝極桜組〟の分裂抗争も徐々に切り崩され、3年前には神戸極桜組(組長木下雅也)の若頭だった矢﨑会会長矢﨑勉は、関東の他組織からの説得から堅気になり、次の若頭花田会会長花田誠は木下から気持ちが離れ、極桜組にケジメをつけて帰参した。帰参してすぐ花田会若頭黒沢明良は木下を暗殺して抗争を終結させる。暗殺時にボディガードにいた新若頭内藤靖(やすし)は、その日を機に堅気になる。堅気になって一年、先に堅気になっていた矢﨑勉が運送屋を経営していたので誘われて合流するが、矢﨑はただの運送屋ではなかった。

【登場人物】
◼️内藤 靖 通称 ヤス 
晴海運送のトレーラー運転手 (特別諜報捜査官)
・アルフレッド中渡瀬 通称 アル 
ボルボトレーラーカスタマイズショップ店長 (特別諜報捜査官)
◼️矢﨑 勉 晴海運送社長 (特別諜報捜査官)
◼️今井 みみ 内藤の内妻 芸能人(女優)
◼️エリーラインハート 特別諜報捜査隊キャップ
◼️木下雅也 神戸極桜組組長
◼️花田 誠 極桜組 桜生会 舎弟頭(元神戸極桜組若頭)
◼️橘 英雄 極桜組組長
◼️小峠 武 極桜組若頭
◼️大内 大斗(ひろと) 極桜組 若頭補佐 桜生会会長


〈プロローグ〉


首都高速道路、環状線外回り、銀座線、「富久町」出口を出るピカピカの黒のアルファードハイブリッドグランクラスは、信号を直進し、佃大橋の三車線の左側を走る。ちょうど朝日が前から照る9時頃だ。

「次の側道を出て、二つ目の信号を右へ、もんじゃ通り入れ。」

と後部座席から指示するのは、ヤクザ界を、いや日本を震撼させた日本最大の暴力団極桜組の分裂クーデターの首謀者、木下雅也である。木下雅也は極桜組内の同調者を引き連れ、新たに神戸極桜組を旗揚げし、抗争へと発展、押した引いたのどちらも引かない抗争を始めて既に8年が過ぎようとしている。

「もんじゃ通り入りました。」

と運転しているのは、木下の兄弟分だった舎弟頭で矢﨑創業組長矢﨑勉のところで若頭をしていた内藤靖(やすし)、通称ヤスである。
矢﨑は関東の最大組織の総長の説得もあって、首謀者の1人であったが、詫びを入れて引退組解散に追いやられ矢﨑本人以下の組員は堅気になる者、神戸に残る者、極桜組に帰参する者、様々だった。ヤスは木下に付いた。

「交番んとこ左折したら左側のコインパーキングに停めろ」

「押忍!分かりました」

「ところで、親分どこへ・・・?」

「床屋だよ。床屋!」

「えっ、床屋って抗争事件では絶対と言っていいほどの確率で暗殺者が襲ってくるパターンのヤツですけど・・・?!」

ヤスはとんでも無い!と言うように言い放つ。

「幼少時代に角刈りとかやってもらってた爺さんで、今、店も閉めてるとこだから大丈夫だよー!」

「えー、応援呼んでいいすか??!!」

とヤス。

「バカ野郎、私はここにいます!って言ってるもんじゃないか!もんじゃだけに・・・」

「冗談言ってる場合じゃないっすよー」

それでも無視して車を降りて歩き出す木下。

「ちょ、ちょ、親分!」

と早足でついて行くヤス。
スジ道を入ってらすぐ真新しい玄関を開けて入って行く木下。入り口の玄関は新装してあるが、中は床屋のままのところだった。営業はしていないようだ。知り合いだけにやってるような感じだった。

「ここなら安心だろ、ヤス」

大きな鏡とリクライニングする椅子を見せて木下が言う。

「かもしれませんねぇー親分。駄目ですって言ったってやるでしょ??」

とヤス。

「わっはっはっ!!おやっさんのツネさんだぁ!!挨拶しろ!」

「内藤靖ことヤスって言います。どうか、よろしくお願いします!!」

と呆れ気味に挨拶。

「ツネってんだぁ〜!!雅さん、良い若い衆いつも連れてくんなぁ〜」

とハサミやカミソリを準備しながら言い、水色の前掛けを木下にする。

「さてと・・・、いつものカットでいいか?」

とツネさんハサミをチョキチョキいわせながら言う。

「そんな切るほどじゃねーよ。」

と笑っていた時に、裏口の方から、ガタガターッと人が入って来る。

「誰だ、こらーーっ!!」

とヤス。同時に襲いかかる・・・。

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とシャンパンを抜いたような音が2個する。同時にヤスが床へバタッと倒れ、ツネさんは流し台に伏せるように倒れる。ツネさんの背中からは赤い点が丸へと広がっていた・・・。

「ツネさん!!」

木下が抱き抱える。口から血を吹きながら咳をして、息絶えた・・・。ヤスはというと、右太ももを一発サイレンサー付きの自動拳銃で撃たれて床を這うように木下に近づく。
木下が声を出す前にヒットマンが

「予想通りですか?親分?」

「お前が来ると思ったよ。」

と木下。

「もう誰が来てもおかしく無いでしょう!親分?」

と言うヒットマンは、神戸極桜組の元若頭だった花田会(会長、花田誠)の若頭の黒沢明良だった。花田会は3年前、矢﨑勉(矢﨑総業組長)が引退解散した時に極桜組に帰参し、二次団体の舎弟として預かりとなり、ここ最近、帰参すぐなのに、神戸側へ次々と攻撃して来る。成績を上げて本体直参に取り上げてもらおうとの画策は見え見えだ。

「動いてるのは、お前んとこしか聞かないけどなぁ〜。花田は早く直参になりたいんだろう・・・。はっはっはっ役付け好きだからなぁ〜」

と木下は馬鹿にしたように話す。

「う〜っ!」

木下の太ももに撃ち込んだ。同時に倒れ込む。

「なんとでも言いやがれ!そろそろ与太話は終わりにして、この8年間で15人の戦死者に詫びに行ってもらおうか・・・。」

「早くやれ!小僧!」

と木下。
その時、

「う〜っ!」

と黒沢。

「そうはさせるかぁ〜!!」

とヤスが床から拾ったハサミで黒沢の体を目がけて、床から力任せに振りかかった。
ところが、ヤスも右足を撃たれているので、思うようにいかず黒沢のでん部に刺さった。

ポンッポンッポンッ。

と黒沢はヤスを狙って撃ちまくったが、ヤスが体をくるくると横に回ってクルクルと移動して交わす。ヤスが遠かったところで、木下の方へ振り返り逃げようとしていた木下に目掛けて自動拳銃を連射した!!木下は何回も仰け反り、入口向けて倒れてしまった。
薬莢が何個も飛び散り、自動拳銃のスライドが豆切れ示すように開いていた。
木下は玄関方向に頭を向けて、うつ伏せになり、背中と足に何ヶ所か銃弾を浴びて微動だにしない。

「何、言ってんすか親分!ん、親分!親分ー!!」

腕時計をヤスの手のひらに入れ、両手でヤスの手を握り身動きしなくなっていた。小さな声で・・・

「親分!・・・ちくしょーー!!」
と大きな声で言って号泣した。

(つづく)

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