胃瘻は必要か

コクランレビューは、世界中の多くの医学論文を集積して、
信頼できるエビデンスを提供する。
そのコクランレビューで
「重度の認知症の方に対する経管栄養」
という項目がある。
経管栄養とは、鼻からチューブを入れたり胃瘻を作ったりして
栄養剤を投与すること。
結論として、
「重度の認知症の方に経管栄養を行っても、余命は伸びないかもしれない」
「経管栄養を行うことで、褥瘡はおそらく起こりやすくなる」

とのこと。

経管栄養を行うことで、
栄養状態がよくなるから褥瘡が起きにくくなるのかと思っていた。
それよりも経管栄養を行うことで、
特定の部位に圧力がかかりやすくなることが
より褥瘡発生を助長するようだ。
余命が伸びないかもしれないというのも、驚きだ。
栄養を投与しても身体が吸収しないということだろうか。

認知症などで口からものが食べられなくなったときに、
経管栄養を行うかどうかは、議論があるところだ。
上記のエビデンスもあるので、
少なくとも重度の認知症の方には経管栄養は行わない方がよいであろう。
また、コミュニケーションがとれない状態で生きながらえることを
望まない人も多いだろう。
療養病棟に溢れているそのような高齢者のうち、
本当は望んでいなかった方は何割いるのだろう。
元気なうちに、
自分がそのような状態になったらどうして欲しいのかを
家族と話し合っておくことが非常に大切だ。
そして我々医療者も、患者さんの価値観を可能な限り探り、
価値観に合った最期を迎えることができるように努力すべきだと思う。

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