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じっくり解説! 令和4年度共通テスト小説・最終回~大学受験生応援コラム10月

ここまでの総括


’** 0 はじめに ***

当コラムに目を留めてくださり、ありがとうございます。

本コラムは、高校生や大学受験生の役に立てればとの思いから書かれています。主に大学入学共通テストの国語を素材として、問題の解き方や勉強法のヒントになりそうなことを書いていきます。

今回は、今まで解いてきた令和4年度の共通テスト小説問題の総括を行います。具体的には、

1 用いてきた解法などの整理
2 外部識者の総括紹介
3 1と2を今後にどう活かすのか

を考えます。


’** 1 これまでの学びを整理する ***

問1:設問から得られる情報を重視することの大切さを学べる問いでした。傍線部そのもの、また問題文から分かることを踏まえて、どんな情報を探せばよいのか見当をつけてから本文から「宝探し」をするように必要な記述を拾い上げていきます。本問は選択肢自体に本文と矛盾する記述がないため、必要な情報が何かを見極めていないと正解が出せないことも特徴でした。

問2:登場人物の心情を問うたり、言動の理由を問うたりするのは、小説問題ではよくある設問です。この問いは、このような典型問題の解法を学べる問題でした。人物の置かれている状況を踏まえて、「出来事→認識→心情→言動」の順に情報を整理します。本文中に記述がない場合は、穴埋め問題の要領で、埋められた各要素から無理のない範囲で推測していきます。

問3:問2のやり方でも解ける問題ですが、ここでは小説のテーマについて説明しました。作中で最も大きな変化を遂げた人物に注目し、その変化を促したものに注目します。その「変化を促したもの」がテーマに関わっているのです。本文では主人公に反発する様子を見せる少年にテーマが宿っているのでしょうが、試験に使われた本文だけでは正確なテーマを導き出すことが難しいと判断されたのか、テーマそのものを明らかにする設問は見受けられなかったというのが私の印象です。

問4:表現効果を問う問題でした。何故そう書かれているのか、という表現への違和感がポイントになる設問です。時間に追われて設問を解くしかない受験生には酷な問いではありますが、今後も出題が予想される設問形式です。

問5:複合資料問題で、今後も出題されるパターンの設問です。今回は2問構成になっていて、1問目で情報を整理させられるので2問目は解きやすくなっていました。問4ともども、解答に時間を要する形式ですが、この形式も今後維持されるでしょう。手を付けるならそれなりの時間消費を覚悟で、落ち着いてやるしかありません。

’** 2 外部評価は? ***

毎度おなじみ、外部評価を確認します。

◆ 学校関係者

「案山子におびえる雀のように、隣家の看板に描かれた男の絵を気にしている『私』の心情 を描いた文章である。『私』の視点を中心に、その内面について丁寧に描写されており、心情の変化の把握を中心とした文学的な文章を的確に読み取る力を確認する上で適切な素材文であった」

→従来型の小説問題を作る素材文としては適切であったという評価ですね。

◆ 外部識者

「第2問は解答に手間のかかる問題であった。語彙の問題がないことが気になるが、小説の内容は面白い。注が少なく、比較的新しい文章であったことも特徴的であった」
「本文以外にも俳句や歳時記など様々な要素に思考を飛ばさなければならず、読み辛さを感じた。登場人物『私』は感情の起伏が激しいため、感情の変化を丁寧に読ませる文章であった」

→読解や情報整理や解答やと、忙しさを感じる大問だったという評価です。「感情の変化を丁寧に読ませる」という評価は学校関係者と同じ評価です。素材は良かったということで両者の評価が一致しています。

◆ 問題作成者

「黒井千次『庭の男』(『群像』1991年1月)は、子どもたちが独立し、妻と二人でセミリタイア生活を送る『私』の日常を描いた短編小説である。出題箇所は、定年後の初老の男性『私』 が、隣家の少年との間で生ずるトラブルに遭遇するという内容であり、少年の心情を斟酌しつつ、相手に対する批判と自らの内奥に萌す共感との間で逡巡する主人公の屈折した心理を密度の高い叙述から読み取ることを求める出題とした。各設問の正答率は、概ね成績層に対応したものとなっており、受験者の基礎的な読解力を適切に測ることのできる問題であった」

→やはり、心情変化を読み取らせるという、伝統的典型的な小説読解問題として位置づけられているようです。それなら俳句やら何やらはなくてもいいじゃないのよ、と一言言いたくはなりますが、共通テストの一つの方針として、必要な情報を素早く見つけ出して組み合わせる能力を測るというものがあるようですから、多少無理やりでも設定しなくてはならない設問だった、という言い分になるのでしょう。

’** 3 さて、次回は? ***

本問の評価は、

伝統的典型的な小説問題を作りつつも共通テストで測りたい能力測定のための設問もきっちり入れ込んだ。結果、時間制限の非常に厳しい問題になった。

とでもなるでしょうか。以上を踏まえて、次回からは令和5年度の小説問題(つまり、前回の問題)を検討していきます。

その際、典型的な問題作成をしているという観点から、

◆ 心情や言動の理由を問う「典型的問題」の攻略
◆ 小説のテーマ把握の手法がどの程度設問解答に活きるのかの検証
◆ 表現問題の解答(もしあれば)

以上3点に特に注目します。

また、共通テストならではの問題・・・複数の情報整理・・・についても、一回分記事をきちんと書きたいと思います。

随分ダラダラと連載している感じですが、このダラダラはもう少し続きます。少し気長にお付き合いいただければ幸いです。



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