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【書評】FACT FULNESS

書籍情報

著者  ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロランド
訳   上杉周作、関美和
発行年 2019年
出版社 日経BP社

概要

とても売れた本なので、少なくとも書名位はご存じの方が多いと思う。
ただ、チンパンジーテストやあまり知られていない事実を紹介した本として紹介されていることが多く、副題にある「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」という点をきちんと説明していないケースが多い。
本書で取り上げられるデータは、環境・貧困・人口・エネルギー・医療・教育なので、社会問題に関する本としても面白いが、本質的にはものの見方・データの扱い方をレベルアップしてくれる本だと思う。

評価軸は下記の3つ
1.提示された習慣は効果が高いか
2.提示された習慣は実行が容易か
3.具体例は面白い事実か

詳細

提示された視点は効果が高いか

本書では判断を誤りがちな誤りを10の習慣として提示している。この内容は、率直に言って新しいものではない。クリティカルシンキング、ロジカルシンキング等表現こそ違っても、繰り返し紹介されている。
しかし、内容に価値がないということではない。

提示された習慣は実行が容易か

実行の容易さは2つの観点から考える必要があると思う。
①    多くの人に理解できる知識かどうか。
②    特別な場合だけでなく普段継続して実行できるか。

本書は理解の容易さという点でかなり価値が高いと思う。中学校レベルの数学がわかれば、本書で説明されていることは理解できるし、実践において求められる知識は、グラフを書いたり比率を求めたりという程度。もっと言えば偏ったものの見方をしていないか自問してみること、実際のデータを見て偏った味方になっていないか確認すること、今は判断を誤りやすいタイミングではないかと考えることができれば良い。少なくとも「なぜそんなことをするのか。」「そうするとなぜ正しいものの見方になるのか。」がわからないということはないと思う。

次に普段から継続して実行できる方法か?という点、上記の通り決して難しいことをする必要はない。行ってしまえば当たり前のことをやりさえすればよい。
それが難しいのだが、行動変容をテーマにした本ではないので、本書の価値は実行可能な方法論を提示したという点にあると思う。
各章末にまとめが載せられているので、セルフチェックなどにも使いやすい。

具体例は面白いか

この点は、面白くなければこんなに売れていない。
チュニジアの建てかけの家、あなたビジョンがないわね、ドルストリート、スウェーデンの変化など、面白い事例には事欠かない。
私はきっとこの本の事例を元ネタにした話をこれから何度もすることになるだろう。

総評

万人向けにお勧めできる名著です。
少し背伸びすれば中学生でも読める難易度でありながら、エリートですら誤解している知識を得られ、その誤解を生んでいる思考の罠の回避法を学べます。
また、論理的思考やクリティカルシンキングには飽き飽きしているという人にとっても面白い事例の宝庫として十分に楽しむことができると思います。

併せて読むと面白い本

論理学・認知心理学の観点から正しいものの見方を体系立てて学べる本。

古い本ですがデータを正しく読み取るための本として有名。


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