Stranger things/ストレンジャー・シングス 未知の世界 洗練されたレトロ・ティーン・ホラー

 Netflixで大人気のアメリカのNetflixオリジナル・ドラマシリーズ。本作は現在シーズン3まで配信されており、今月5月の27日にシーズン4のvol.1が配信される予定である。このシリーズをまだ見ていない人もいると思うので、この作品の魅力について少し書いておこうと思う。あらすじというよりかは、この作品の持つ要素や質感について書く。

怖い?

 本作品のジャンルとしては「SFホラー」ではあるが、ホラーが苦手な方でも楽しめるのだろうか?という点だが、私自身はホラーが苦手でも問題なく楽しめると感じた。ただ、若干のホラー演出でビクリとする場面もあるが、劇中にずっと身構える必要があるわけではない(それでもやはり初見は怖い)。この作品は恐怖の部分を占めているのが主に未知の怪物であり、霊的なものは今のところ一切登場していない。そのため、心霊寄りのホラー映画が苦手な人でもあまりビクビクしないで楽しめるのではないかと思う。しかし、シリーズ毎にそのホラー度は幾分かは増しており、最新となるシーズン4のトレーラーを見る限りその要素はかなり増しているように感じる…

子ども達にフォーカスしたストーリー、ノスタルジックな舞台

 この作品では子ども達がメインとなって物語は進んでいく。子ども達を中心に置きその活躍を描く映画といえば、スティーヴン・キング原作の「IT」や「スタンド・バイ・三ー」などが挙げられ、私には本作品が「IT」の雰囲気が限りなく近いと感じ、キングの描く作品が好きな方なら間違いなく刺さると思った。本作品にもそれと似た雰囲気が感じられるのは、実際にキングの作品にも大きな影響を受けているからである。前述の作品同様に、この作品も子ども時代の小さな冒険を思い出させるような、共感性のあるストーリーとなっており、登場人物間の友情、恋愛関係などにも注目しながら追っていくのも面白さの要素の一つである。そして何といっても、未知の存在に対して子ども達が大人に見えないところで結束して、町で起こる怪事件の謎に挑む様は見ていて応援したくなり、こちらまでワクワクさせてくれる。
 舞台は80年代の設定でその時代のポップカルチャーが随所に見られ、レトロなゲームセンターやボードゲーム、バンド音楽、さらには他の映画作品のパロディ、オマージュなどもあるため、現在40代後半、50代の方が見ても当時の若い頃を思い起こすようなものがあるかもしれない。一方で、私のように20代でその時代を生きてこなかった若い年齢層でも、「当時のアメリカの町はこんなだったのか」と古い映画を見る時のような新鮮味を、きっと感じると思う。そして、携帯電話が普及した今ではありえない無線機を使った子ども同士のやりとりや、秘密基地、初めて知り合った友達をグループに加えるか否かでもめたり、しょうもないことで喧嘩するがすぐに仲直りするなど、子どもならではの共感性のある描写や憧れのシチュエーションが、現在ハイテクの海に浸かっている自分との対比で、ローテクあるいは子ども時代の味を生み出してくれるだろう。
 このように、今とは異なる時代ならではの遊びや建造物、文化などが、現代に比べてどのようなもののであったかを見るのも、本作品の楽しみの一つ。

まるで”レトロゲーム”の質感

 本作品の劇中のサウンドトラックは見事に80年代を基にした世界観とマッチしており、シンセサイザーの電子的サウンドは何か懐かしくも恋しい、若い時代を思い出させるような機能を果たし、その反面でどこか不気味で神秘的な要素を持っている。シンプルなサウンドで作られた音楽が耳に馴染みやすく、その世界観を崩さずに上手く共存していると思う。電子的なピコピコ音と共に展開するストーリは、まるでレトロゲームの実写を見ているようであるとも、捉えられた。(実際にnetflix加入者専用のスマホゲームで、ファミコン風のゲームも出ているよ。)
 そして本作品では、登場する「D&D ダンジョンズ&ドラゴンズ」というボードゲームから怪物の名前が付けられていたり、攻略のヒントになっていたりと、ゲームとストーリーを関連付けるという工夫が、そのレトロゲーム感を助長している。

鮮度は保たれたままに・・・

 「ストレンジャー・シングス」は王道的なストーリーでありながらも、シリーズ毎に途中で飽きたり退屈するようなことはなかった。むしろ、シーズンを重ねる度にその面白さは増していた。シーズンごとの大まかなストーリーを簡素に説明すると、「現実とは異なる裏側の世界から来る、未知の怪物に対してあらゆる対策をもって立ち向かい、それと関係する謎と陰謀を暴き、町に平穏を戻す」といったような流れである。それぞれのシーズンが「異変→謎解き→収束」という共通の構造を持つものの、その中身には毎回新しいキャラクターや新しいロケーションを用意してスケールアップをし、それらをストーリーにもしっかりと絡めてくれるため、毎度違った新鮮味を味わわせてくれている。言うなれば、行動範囲の狭かった小学生時代から中学、高校と少しずつ広くなり、徐々に遊びの幅が広がっていくような感じだ。そして、その新しく登場するキャラクターやロケーションは視聴者に強い印象を残すものばかりで、個人的にはシーズン3の「スターコート・モール」という巨大なショッピングモールは、特に80年代のアメリカ映画を見て抱いていたイメージと見事に一致していて、そのシーズンを象徴するようなデザインも素晴らしいと感じた。

超能力少女”イレブン”

 裏側の世界から未知の生命体がくる、では、彼らに人の力で抗うことはできるのだろうか?それはおそらく常人無理だろう、”常人”には。そう、未知の存在に立ち向かうためには人知を超えた力の助けが必要なのである。
 主人公達の前に突如姿を現した”11”と腕に書かれた名も無き少女。彼女はあまり言葉を話せないが、物を遠くから動かしたり、遠くから特定の人の様子を見ることができるという、不思議な能力を持っていた。その”イレブン”という少女はまさに常人を超えた力の持ち主であり、彼女だけが未知の生命体に対抗できる存在なのである。つまり、この「ストレンジャー・シングス」において最も重要で、未知の生命体と世界の謎を解き明かすためのキー・パーソンなのである。
 物語の中では断片的に、イレブンがいた研究所とそこで彼女に対して行われていた実験や陰謀が彼女の回想によって描かれ、何故現実の世界と裏側の世界が繋がっているのかが明かされるのも見どころ。
 キング作品に度々登場する超能力を持った人間達。「キャリー」「シャイニング」「炎の少女チャーリー(今年6月17日にリメイク版が公開)」などがあり、このイレブンのアイデアもキング作品から着想を得たのではないかと考えられる。

キャスト

 本作品では数多く登場する魅力的なキャラクターを、魅力的な俳優陣が演じてくれている。主要な人物を中心に、その一部を出演作品と共に紹介したいと思う。()内が俳優名。

マイク(フィン・ウルフハード)・・・「IT/イット ”それ”が見えたら終わり」「IT/イット THE END”それ”が見えたら終わり」「ストレンジャー・シングス1~」など

ダスティン(ゲイテン・マタラッツォ)・・・「ストレンジャー・シングス 1~3」「THE BLACKLISTブラックリスト」「ブランク・エンカウンターズ/恐怖のドッキリ」など

ウィル(ノア・シュナップ)・・・「ストレンジャー・シングス 1~」など

ルーカス(ケイレブ・マクラフリン)…「ストレンジャー・シングス 1~」「コンクリート・カウボーイ: 本当の僕は」など

イレブン(ミリー・ボビー・ブラウン)…「ストレンジャー・シングス 1~」「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」「エノーラ・ホームズの事件簿」「ゴジラvsコング」など

ウィルの母・ジョイス(ウィノナ・ライダー)・・・「シザーハンズ」「17歳のカルテ」「ブラック・スワン」「ストレンジャー・シングス 1~」など

ウィルの兄・ジョナサン(チャーリー・ヒートン)…「ストレンジャー・シングス 1~」「ニュー・ミュータント」など

マイクの姉・ナンシー(ナタリア・ダイアー)…「ストレンジャー・シングス 1~」「ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書」「闇はささやく」など

警察署長・ジム「ヘルボーイ」「ブラック・ウィドウ」「イコライザー」「ストレンジャー・シングス 1~」など

マックス(セイディー・シンク)…「ストレンジャー・シングス 2~」「ELI/イーライ」「フィアー・ストリート part2・3」など

スティーブ(ジョー・キューリー)…「ストレンジャー・シングス 1~」「スプリー」「フリー・ガイ」など

 どの方も個性的で愛されるキャラクターを素晴らしく演じてくれているので、本作品を見て気に入った俳優の方の他の出演作品を見てみるのもいいと思う。

この作品を一言で…
「驚きに満ちたストーリーとキングの遺伝子を受け継いだようなその世界観は、見終える度にあなたをノスタルジックな町、ホーキンスへの帰還を駆り立てるだろう。」


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