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待ち合わせ場所
真っ白な髪に毛先がピンクのおばあちゃんが目の前でよろけている
その横をスマホを見て平気で通りすぎていく人
あっこれが東京か。そう思いながら駆け寄っていく。
「大丈夫ですか?」
「私は、足が悪くてね。すぐそこが待ち合わせ場所なんだけどね」
「一緒に行きますよ。私もそっちに進もうとしていたので」
左足を引きずるように歩いていたので、左側に行き右手を差し出す。
「ごめんなさいね。すぐそこの吉〇家の前に行けたらいいんだけどね」
「大丈夫ですよ。私も誰かと話したい気分だったので」
結構な力が右手にかかり筋肉痛を覚悟しながらも笑って歩く。
実際、東京に来たばっかりで競い合うようにガラス張りのビルが建っているだけの風景に飽き飽きしていた。
「そうですか。私は足が悪いもんでね」
ふと、なぜその待ち合わせの人は足が悪いことを知っているだろうにこんな道の真ん中でこのおばあちゃんを待たせるのだろう。
そう思ったときに
「ありがとう。ここが待ち合わせ場所です」
そういってお別れをした。
ちょっといいことをしたな。と思いながら反対側の道を見るとおいしそうなお弁当屋がある。
そこで、じっくりと悩んで豚汁とおにぎりを買った。
店を出て割りばしをとってくることを忘れたことを後悔した時には結構歩いてしまっていた。
おにぎりをちょうどもう一つ買いたかったので斜め前に見えるロー〇ンを目指して歩く。
すると、先ほど手をひいて歩いたおばあちゃんがまた柵につかまりながら歩いているのが見えた。ロー〇ンの横には吉〇家。あっ違ったのか。
そう判断し、会釈だけにとどめてロー〇ンに入っていく。
ちょっと高かったけどおいしそうなおにぎりを入手し、少し浮足立ってロー〇ンを出ると、目を疑った。
あのおばあちゃんが急な坂を柵伝えで歩いている。吉〇屋はもう通り過ぎている。
思わず声をかける。
「一緒に行きますよ」
「あっありがとう。すぐそこの角に行けたらいいんだけどね」
また手を引いて歩きだす。
「人と待ち合わせしているんです。私は足が悪くてね」
「失礼ですが、どなたと待ち合わせですか?」
「・・・兄弟です」
「そうですか…」
「ここで、大丈夫です」
「えっ…」
まだ角ではない。急な坂のまだ途中である。
ただ有無を言わせない空気を感じ取った。
「では」
そう言ってその場を後にする。
急な坂を下ってからどうしても気になって振り返る。
おばあちゃんはじっとこちらを見ている。
また、待ち合わせ場所ではないようだ。
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