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忘備録

望みのほんの少し手前で
彼女の前脚は私を引き留める

その獣が持つ自己主張は
島一つを飲み込むほど

その大らかな振動は
幸せのみを讃えているようで

今の今まで疑う事なく黙々と
自分を責めたて怒り狂う
この世との共同作業と手を切った

そんなふうに罪悪感を刻む獣へ
目が眩むような愛情を抱いては

その前脚で蹴飛ばされ
宙に舞う私の心地は獣の玩具

儘ならぬ自我ならば
獣の玩具であってもいいのだ

そんなものは古い本の下で朽ちて仕舞えば良いのだ



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